『ポジティブじゃなくても大丈夫』
けいこさんは、リビングで手にしたコップをじっと見つめています。
コップの中には、水が半分入っています。
「そうかなぁ。私にはそう思えないわ…。」と独り言。
絵本を読んでいたふみおくん、顔を上げ、
「おねえさん、どうしたの?」
「あのね、ふみおちゃん、さっき、YouTubeを見ていたら、
自己啓発の先生が、ポジティブに生きよう。
という講義をしていたの。」
「ふ〜ん、そうなんだね。」
「その先生、コップに注がれた半分の水を指して、
『もう半分しかないと見るか、まだ半分もあると見るか』って
話をしていたの。
よくある例えだけど、私にはピンとこないの…。」
「なにが、ピンとこないの〜」
「要するに、まだ半分ある。そう思う方がポジティブだって言うの。
でも、それって、ちょっと子供だましの詭弁だわ。」
「ぼくは子供だけど、だまされないよ。
大人だましのキベンだね。」
「大人だましの詭弁!
キャハハハ、ふみおちゃん、うまいこというわね〜。」
「私は、ひとそれぞれだから、無理にポジティブにこだわる必要は、
ないと思うの。
それに、無理にポジティブになろうとすると、
かえって心が重くなったり、
自分を責めてしまうひともいるわ」
「あのね〜、ポジティブじゃなくても、
お水がいっぱいあるように、感じられる方法があるよ。」
「へ〜っ、ぜひ、お聞きしたわ。」
「おねえさん、コップを持っていない、左手をちょっと出してみて。」
「なんなの、なんなの?こ〜お」と、けいこさんは、
ふみおの顔の前に、手のひらを差し出しました。
「まみむめ魔法〜っ!」
まばゆい光が、その手の上にあふれました。
思わず、目を閉じてしまった、けいこさん。
そっと薄目を開けると、
手のひらの上に、
あるものがのっていました。
それは……!
子供用の、小さなコップでした。
「おねえさん、その小さなコップに、
右手のコップの水を、そそいでください。」
「えっ!こうかしら。」
けいこさんは、水を移し替えました。
するとどうでしょう。
「きゃ〜っ、すごい!」
けいこさんは驚きの声を上げました。
「無理に、まだ半分あるって、思わなくても、
たっぷり入っているわ!」
「ね、おねえさん。
コップの大きさを変えるだけで、気持ちも変わるの。」
「すごい!
これなら、『まだ半分ある』って、
ムリして、ポジティブに思う必要ないわ。」
「あのね、おねえさん、
小さなコップに変えるのは、たとえ話だよ。
この魔法は、いろんなことに使えるの」
「ええ、ふみおちゃん、
素晴らしい魔法を教えてくれて、ありがとう。」
けいこさんの、心のコップは、
しあわせな気持ちで満たされました。
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★今日のひとかけら
無理にポジティブにならなくても、
自分に合ったコップを選ぶだけでいいんです。
そうすると、自然と自分を満たせる方法が見えてきます。
たとえば、ダイエットをする人は、
子供用のお茶碗にご飯を盛ると、
脳が錯覚を起こして、満足感を得られることがあります。
こんな、使い方もあります。
ある主婦の経験談です。
「子育てで、思うようにならなくてイライラした時、
もう3歳なのに‥と思うのと、
まだ3歳でこの世の中に3年しか暮らしていないのだ、
と思うのと、気持ちの余裕が変わってきます。
すると対処の仕方も変わってきます。」
これらと同じで、
どんな状況でも、
ちょっとした発想の転換、
そして工夫で、
気持ちの幸せ度が大きく変ってきます。