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『エッセイ編・3 幸福と不幸の逆転』


レディース・コミックは、

予想外の大ブームを引き起こしました。

バブル時代に、

マッチしていたのだと思います。


出せば、間違いなく売れるので、

中小の出版社までが、続々と参入してきました。

中には、漫画を出したこともない出版社もありました。


最盛期にはなんと50誌が、

人気を競い合っていました。


私は、大手の、レディース・コミック、2誌で、

連載していたので、

再び収入は安定しました。


精神的には、とても、穏やかな日々が続きました。


今、その頃の写真を見てみると、

なんの危機感もないので、
なんとも腑抜けた顔をしています。


神様が、いるのなら、

やっぱり、全く同じように感じたようです。


神様は、そんな私の未来を案じ、

その生き方を正すようにと、

親切にサインを出してくれたのです。


そのサインとは……。


連載の打ち切りです。


それも、メジャーな、講談社と光文社、

2本の連載打ち切りです。


「が〜ん!」


と、なりそうな、ところですが、


『週刊少女フレンド』をクビになったときのような、

ショックはまるで、感じませんでした。


何しろ、レディース・コミックが、50誌も出ているのです。


さっそく、中小の出版社に持ち込みを始めました。


講談社は超一流、壮大な建物です。



ところが、中小の出版社は、

マンションのワンフロアだけ、

というところが、ほとんどでした。


古いマンションの、狭い階段を上がる時、

その、出版社の方には、申し訳ないのですが、

なんだか、おちぶれたような気持ちがしました。


ドアを開けると、

受付もなく、雑然とした、部屋の中では、5〜6人の編集者が、

机に伏せ黙々と仕事をしていました。


「すいません。持ち込みに来たのですが、

原稿を見ていただけないでしょうか?」と、

近くの人に声をかけました。

目をしょぼつかせた編集者が、めんどくさそうに顔をあげました。

「……。じゃ、拝見します。ここに座ってください」と、

そこらへんにあった椅子を、座ったまま、
ズルズルと引きずり、すすめてくれました。


講談社の広々とした応接室で、

打ち合わせをしていたころの自分と比べると、

何とも言えない寂しさを覚えました


気を取り直して、


その編集者に、名刺を差し出しました。

彼は、人差し指と親指で名刺をつまみ、
気だるそうに、
ちらっと、ながめました。

1秒後、ちょっと、目が大きくなり、

「おかのきんやさん!存じております。

フレンドで連載されていましたよね。

ウチのような小さなところで、描いていただけるんですか!」と、

満面の笑顔になり、言葉遣いも丁寧になりました。

その場で採用してもらえました。


『少女フレンド』にいたころは、全く感じませんでしたが、

外の世界に出てみると、少しはネームバリューがあるとわかりました。


実は、中小の出版社に書いている漫画家には、

週刊誌で連載経験のある漫画家は、

ほとんどいませんでした。

だからとても優遇されたのです。


とはいえ、小さな会社なので、

原稿料は、1ページ10,000円でした。

講談社は、1ページ20,000円でした。

さすがに、大手の出版社とは違います。


それでも、中小の出版社を、

あちこち回ると、結果的に、

5誌から仕事が取れました。


忙しさで、体には負担がかかりましたが、

経済的には、さらに安定していきました。


だから、せっかくの、

神様のサインを無視していたのです。



それでも、神様はとても親切なのです。

だから、そんな私でも見放しませんでした。

神様、またまた、次のサインを出してきました。

それも、予想外の、とても強烈なサインでした。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


★今日のひとかけら。

『幸福と不幸の逆転』


その瞬間の、幸福や不幸が、

実は、その先の人生で、逆の結果につながることがあります。

幸せだと思った出来事が、後に不幸の原因となることもあります。


逆に、不幸だと思った出来事が、

後から振り返ると、素晴らしい幸せの種だったと、

気づくこともあります。


そんな、幸・不幸について、

ニーチェのこのような言葉があります


「何かを成し遂げた後でしか、

人生での、痛みや、困難が、

必要だったとわかることはない。」


     つづく




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