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「移動」
「窓の外を見たり、なにかほかのものを見るとき、自分がなにを見てるかわかるかい? 自分自身を見てるんだ。ものごとが、美しいとか、ロマンチックだとか、印象的とかに見えるのは、自分自身の中に、美しさや、ロマンスや、感激があるときにかぎるのだ。」
フレドリック・ブラウン『シカゴ・ブルース』 (訳:青田 勝)
旅をしていて、楽しさを感じるのは一体どんな時だろう。
例えば街をぶらぶら散策したり、温泉でのんびりしたりするのはもちろん楽しい。一日中いろんなお店をまわり、お気に入りのものを探してみるのだってワクワクする時間だ。
どこかに着く。美味しいごはんを食べる。お店で買い物を楽しむ。そんな旅の「目的」自体も楽しいことだけど、そこに至るまでにいろいろと試行錯誤したり、ああでもないこうでもないと迷ったりすることも、後から振り返ればいい思い出になったりする。
僕が思うに、旅の楽しさとはその「過程」を味わうことにある。そして旅における「過程」とは「どこかからどこかへ移動すること」と言ってもいいのかもしれない。
移動する時間とは、必ずしも僕らが旅に求めるものではない。
しかし僕たちは、時にその旅の「過程」で予想外の出会いや思わぬ感動に巡り合ったりもする。
たまたま通った道でぱっと差し込んだ光の美しさに見とれてしまった。遠くまで続く海を見て、気になる人のことをつい思い出してしまった。去年も同じ場所にいたはずなのに、今まで気にも留めなかった空の青さを知った。
少し記憶をたどってみれば、誰にでもそんな体験があるんじゃないだろうか。
旅をしている時、僕らが不意に「発見者」になる瞬間がやってくる。
それは、Amazonで買ったガイドブックを見て「ここに行こう!」と決めた場所で起こるものではなく、そこへ向かう途中で予想もしなかった景色に遭遇し、新たな感動を味わうようなものだ。
だからこそ、今まで何度も訪れた場所に行く途中でも、旅は必ず違うものになる。僕たちが旅の「過程」で見た景色、そこで得られる驚きや感動というものはわずかでも常に新しい。もしかするとそんな「新しさ」こそが、旅の楽しさを引き立ててくれるスパイスなのかもしれない。
そう。移動することも旅の楽しさなのだ。たとえば車窓をふと眺めた時、目の前に広がる風景の小さな新しさを感じられる人間でありたい。
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「移動」というタイトルで、小さな写真展を開催することになりました。個展を開くのは人生でこれが初めてです。
会場は東京・高円寺のコーヒースタンド。JR高円寺駅北口から徒歩3分です。写真だけでなく、何より美味しいエスプレッソやカフェラテが楽しめるお店なので、そちら目当てでも大丈夫です。
そして、今回の展示に合わせてZINEを制作することにしました。A5版で32ページ。いろんな方に手伝っていただき、写真を選んだり、レイアウトを決めたり、文字を入れたり、、と少しずつ進めていきました。
上に掲載した文章は、そのZINEにあとがきとして収録したもの、および展示自体のステートメントに沿っています。なぜ自分がこういう展示をやりたいと思ったか、少しでも理解の助けになれば幸いです。
正直に言うと、はじめての展示で緊張しています。お近くのみなさま、ふらっと覗きに来ていただけるとうれしいです。土日祝日は基本的に会場にいる予定です。
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タイトル:「移動」
2022/10/24(月) - 11/6(日)
INCredible COFFEE 高円寺店(@inccoffee2020)
東京都杉並区高円寺北2-22-2(JR高円寺駅北口徒歩3分)