小売業のアフターコロナ|在庫過剰の課題
過去、在庫は悪か?否か?と言う論争をよく見かけましたが、2020年コロナ禍において、平時では感じなかった課題を肌で感じている方も多いと思います。
そこで何が良くて?何が悪かったか?のポイントを3点に絞ってまとめて見ました。
今後のビジネスのあり方などの参考になればと思います。
1:在庫は悪か?否か?
結論:在庫は悪です(笑)。
これは前提や誰目線なのか?などで異なる持論が拡張して、拡大解釈が広まってるだけのように感じます。
そもそもこの論調の主となる業態は小売業での経営理論であり、言うなれば不動産みたいな業態まで拡大解釈すると要点がずれてきます。
また、小売業態を想定しての主張も発信者の出自や立場によって異なり、主に生産やマーケティング、MDの方などが、売上を上げていくためやロットの兼ね合いや欠品リスクなどを考慮して、在庫は悪ではないと説いてる傾向があるのかと思います。
2:論点がずれてしまった理由
小売業の創業オーナーレベルの経営者や社長に、同じ質問をすると間違いなく、在庫は悪とお答えすると思いますし、これは原理原則に則った答えだと思います。
それでは、なぜ同じ業態内でも立場が異なるだけでこんなにも意見が異なるのだろう?と考えました。
恐らくこの議論で言っている「在庫」と言うキーワード自体にも認識の違いがあるのだと感じました。
長年、経営者に近い位置でお仕事させて頂いてましたが、経営者が捉えてる在庫と言う意味は誤解がないレベルで言い換えると「不要在庫」であり、これから売れるものや確実に売れるものを指して在庫呼ばわりはせず「商品」と捉えていると思います。
3:小売業におけるポイント
例えばMDの立場で、欠品を防いで売上を最大化させるために必要な商品(=在庫)は大量にあっても悪ではありませんし、生産担当の方が、品質の担保やコストダウンのために、商品(=在庫)や生地を抱えること自体は悪ではないと言う事です。
商品(これから売る/今売るべきもの)と在庫(余ってしまった商品)をキレイに分けて言葉に発すると違和感がなくなると思います。
ただし
・色やサイズバランスが決められず「とりあえず」SKUを広げて余った
・商品の需要予測が付けられず、お試しの位置付けで品番が広がった
などが要因で余った「在庫」が悪だと言っているのです。
「そんなキレイ事言ってもさぁ、、」と言うため息も理解できます。
100品番中100品番を予測通り当てる事は難しいですし、ロットを多くしないと原価も下がらない。
在庫が悪になるか正義になるかは結果が全てで、「勝てば官軍、負ければ賊軍」みたいな厳しい世界の中に身を置く方の気持ちも、理解しなければなりません。
では、在庫が悪ではない派が間違ってるのか言うと一概にそうとも言えません。
売上の結果は一つですが、プロセスには多くの人やチーム、組織が関わります。
先述の通り商品の企画は全て当たるわけでは無いし、もし当たったとしても店舗の広さやECサイトのデザインなどによって、必ず商品の販売成績には序列がついてしまいます。
結論とまとめ
・売れなかった商品を売る努力や、アイディアを出しあいましょう
・チャンレンジをした結果である事も、ポジティブに受け止めましょう
・損切りも大事!少しでも現金化をして次に繋げましょう
要は売れない商品を売る努力やスキルは非常に大事で、売れる商品にしか目を向けない習慣や体制は、商品の課題以上に販売力に課題があると言う事です。
このような体制では思い切った商品施策や調達も出来ず、時間の経過とともに緩やかに「企業の収束」に向かって行きます。
ぜひ経営層の方々も単純に「在庫は悪」だけではなく、そうさせてる背景も改善できるようにサプライチェーンの点検を実施頂けたらと思います。