どシードの医療スタートアップが1.2億調達するまでの失敗遍歴 ~②医療関係者パートナーの見つけ方編~
こんにちは。株式会社Genonという医療系スタートアップでCOOを務めております、高砂です。
22年の1月に設立し、昨年末に累計1.2億円の資金調達を完了しました。
そういった節目で一度今までの失敗遍歴と得られた学びをまとめてみようと思い、
①医療業界でスタートアップをするのってほんとにムズイ、という話
②医療者のパートナーを見つけるにあたっての失敗と成功エピソード
の2つのテーマに絞りました。
今回はその第2弾、医療者パートナーの見つけ方についてです。
よければ①にご興味のある方はこちらから…👇
医療者の事業パートナーを見つける
「医療」という業界は、
堅くて、保守的
新しいものを好まない、導入が遅い
社会的地位が高く、なかなか相手にしてもらえない
というのが一般的なイメージかなと思いますし、やっぱり実際そういう部分が多いと思います。
医療系の事業を立ち上げる時にどこもまず苦労するのが、協力してくれる医療関係者を見つけることだと思います。
加えて、私達の場合、医療バックグラウンドゼロ。
元パティシエのCEOと、ど文系COOコンビです。笑
そんなどう見ても詰んでるチーム編成で、私達がどのように協力してくださる医療関係者に出会って行ったのかを発信することは一つ意味があるんじゃないかなと思いました。
ただ本当に色々例外が多いと思いますし、事業形態によっても色々違うと思うので、あくまで一例という形で読んでいただければ幸いです。
今回は、失敗2つ・成功2つの構成でお伝えします
失敗①人からのご紹介
真逆じゃないの!?と思う人も多いかもしれません。
まずもちろん「人脈も信用も何もない立ち上げ期は、まずご紹介とご縁」というのは基礎中の基礎で、繋がりからいただけるご縁は本当に有難く貴重なものだと思います。
私達もご紹介で大変有難いご縁に恵まれることも多くありました。(関わってくださった多くの皆様本当にありがとうございます)
ですが、特に初期という意味では、私は意外とうまく行かないことも多いなと感じました。
まず第一に、課題も解決策も定まってない状態で、基本的に私達から提供できるものが何もありませんでした。その状態で、信頼できる方から素晴らしいご縁をいただくのはもったいないことになることが多いなと思います。
ある程度方向性が見えてからなら良いご縁になったかもしれない方とも、大抵うまく行きません。
そしてもう一つ、相手が紹介してくださった方との関係性があるからこそ、それが弊害になってしまうのが、「検証」への難しさです。
なぜなら、相手も「○○さんの紹介だから…」があるので、自分達の思いや活動に共感していなくても、気を遣って関わってくださることがあります。
そうなると、ニーズやターゲット層を見誤ることに繋がります。
個人的には
・自分からご紹介を求めに行くのは、まず少なくともProblem Solution Fit までは作ってから
・ご紹介を断る必要はないけれど、そこだけに頼っていると目の前のことは進みにくい
というのが今振り返って思うことです。
また、ご紹介いただく場合は、
直近の事業に直接繋げるより、長期的に見る
ヒアリングから事業に繋がる学びを得る
共感してくださっているのかを見て、引き際を見定める
その時直接的に実を結ばなくても一喜一憂せず長くお付き合いするが大切
かなと思いました。
逆に、事業パートナーというより出資いただく(株主になっていただく)という場合なら、ご紹介から繋がるケースも多かったので、共感いただけた時の1つの選択肢として大きいと思いました。
初期の何もない時から見守ってくださっている方が株主になってくれるというのは本当に嬉しいことで、事業成長が恩返しに繋がるのがとても有難いです。
失敗② 学会
医療といえば大学。大学といえば学会。
これも定番の発想だと思いますが、学会もどシードには不向きだと学びました。
大学研究に対しての事業なら別かもしれませんが、臨床現場で活用するサービスなら、基本的に学会で会える先生は「お客さん」というより「協力者」。何の強みもないどシードスタートアップと、最先端の技術をもって手を組みたいと思う先生ってまあ当然おらずで…。
また、「最先端の技術を直近の事業に活かす」ことはとても難しく、学会で発表されるような最先端の技術は、将来的に実装を目指して行く、というようなものがほとんどです。
そんな技術と長期的に提携して行けるのは、何かしらの基盤がある会社が、それを活かして次のステップへ共に行く、という形が現実的かなと思います。
学会ではご挨拶に行っても名刺をもらえないことが多くて、私の場合名刺を受け取ってすらもらえないこともありました笑
学会は、何か事業を通した発見についての学会発表ができて初めて良い繋がりが得られる場所なのかな、というのが現状の私の認識です。
(大学シーズの方や、実際に学会発表された方がいらっしゃればぜひそちらのケースのお話も教えてください)
では、そんな八方ふさがりのスタートアップはどうやって協力医師を見つけて行くのか。
私達の場合での成功例を2つご紹介します。
成功①クリニック飛び込み営業
「病院なんて製薬会社の飛び込み営業だらけで、相手にしてもらえないだろう」という意見もあるかと思います。
もちろん相手にしてもらえないことが大多数です。
でもそれも含めて、まず市場調査として学びが多かった。
何度も色々なクリニックに足を運ぶ中で、どんなクリニックが話を聞いてくれて、どんな理由で断られるのか、が見えて来ました。
そして繰り返して行くと、段々ターゲット像が絞られて来ました。
うちの場合はこんな感じ:
HPがあり、予約システムやweb問診を導入している →ITに親和性がある
SNSを運用している →マーケティングの目線がある
保険診療と自由診療を両方行っている →医療に従事しながら、きちんと「稼ぐ」ことにも力を割いている
分院展開している →「事業拡大」に興味がある、権限委譲ができている
こうして自分達の会社と相性の良いクリニックの傾向が見えてくると、話を聞いてもらえる率が上がって来るだけではなく、サービスのターゲットの解像度も上がって行きました。
ただ、どこへ行っても門前払いにされてしまっては、上記のような学びも得られません。
話を聞いてもらうためにはどうすれば良いのか?
私達の場合実践したのが以下です。
● 電話営業はしない。足を運ぶ。
電話で先生に繋いでもらえたことはほぼなく、基本受付でシャットアウトでした。
訪問でも同様ではあるのですが、「わざわざ足を運んで来ている」ことで、先生に一応「こんな人が来てますが…」と相談までは通してもらえることがあります。
そして目の前で待つ。
午前診療/午後診療が終わりがけの時間に足を運んで、最後の患者さんが終わるまで待っていれば、少しだけ時間をもらえることがありました。
会うことさえできれば、あとは思いを伝えるのみでした。
● 数打つより、しっかり調べて絞り込む。
とにかく数を当たりまくって100件に1件を掴む、というのも1つの手だとは思いますが、私は1件1件丁寧に関わる方が、確率は高いし学びも多いと感じました。
また、先生側も、「なぜうちなのか」をちゃんと見ていると感じました。
今一番お世話になっているクリニックの先生も、「事前に調べてなぜうちか、がちゃんとあったから話を聞いてみようと思った」と後から話してくださいました。
HPや取材記事、Googleの口コミなど、得られる情報から「なぜあなたと一緒にやりたいのか」「話したいのか」をラブレターにして受付の方に渡しました笑
そんな風にやっても、当然相手にされないことも多々あります。
でもだからこそ、「話を聞いてくれる先生」との出会いは本当に貴重なものになりました。
上述の「紹介」のケースと対照的なのが、私達と話す外的理由が何もないことです。
その先生が「わざわざご自身の意思で」自分達の話を聞いてもらう時間には、共感が前提にありました。
少女漫画で例えるなら「おもしれー女だな…」みたいな状態です。笑
見知らぬスタートアップなんて奇妙な存在に興味を持ってくれる先生とは、途中で関係性が薄れることなく、一緒に作って行くことができる最高のパートナーになれる可能性が高いと私は思います。
成功②SNSのDMを使い倒す
「お医者さんってSNSやるの?」最初はそんな感覚でした。
やってない人はやってない。やる人はやってる。だから良い。
SNSで探す時点で、自分で何か動こうとしている人を勝手にフィルタリングしてくれるのが大きいと思います。
私達は初期から有難いことにたくさん(20~30名くらい?)の医師の方にヒアリングをさせていただきましたが、その大多数がX(Twitter)のDMでした。
そして何より、飛び込み営業の時に書いた「相手を知る」ための情報が盛りだくさんです。
その方がどんなことを考えて、どんなことをやりたい方なのか、知った上で話ができるのがとても有難いです。
まとめてみると、共通点としてありそうなのは、
自分達と関わる強制力が相手に働かない環境で、自分から出会いに行くこと
スタートアップという特殊な存在に興味を持ちそう、自分の思いに共感してくれそうな人を、しっかりフィルターにかけて見つけ出すこと
が初期は重要なのかもしれません。
最後に
今回は「医師」について書きましたが、他の業種のパートナー探しでも近いことが言えそうかなと思ったのもあって記事にしてみました。
最後になりましたが、そんな色々な壁を、模索しながら自分達の意思で切り拓いて行く、創業期のメンバーを募集しています。
少しでも興味を持ってくれた方は、ぜひこちらからお問合せいただければと思います。
また、普段スタートアップ・医療業界でのお仕事での気付きや日々思ったことを X(Twitter)の方で呟いているので、よければフォローなどもいただけると大変嬉しいです。
長い文章をお読みいただき、ありがとうございました!
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