雨を聴くか、蚊に刺されるか

2月末に訪れたインドネシア、ロンボク島。

2泊の予約で向かったRinjani Beach Eco Resortという名のホテルはエコというだけあって、屋根は茅葺、シャワーは屋根なし、エアコンもないという風情だった。大通りからも歩くと20分はありそうな立地。大通りまでの道はもちろん舗装されているわけもなく、放牧されている牛や牛のフンがそこら中にある。雨季のおかげで植物はこれでもかと言わんばかりの緑で、それは美しかった。目の前はビーチで、聞こえるのは波の音と風にそよぐ葉っぱの音。静かに熟睡できる夜を期待していた。

が現実は違った。

隙間だらけのコテージには蚊が侵入し、一晩で両足20箇所は刺されたと思う。蚊帳の中で寝るなんてお姫様みたい、なんて思っていた自分が馬鹿みたい。

「こんなところは1泊だけでいい。うんざり。違うところに泊まりたい」
と彼に訴えてみたものの、次の予定を考えると別のホテルに移るのは最良の案とは言えなかった。

私たちはその時ホテル内の中心にあるレストランで昼食を食べていた。竹で作られたテーブルと椅子が並ぶ高床式の茅葺き屋根の建物。窓はなく壁もない。そんな時だった。急に風が吹き、空は暗くなり、雨が降り出したのだ。

スコールだった。バケツをひっくり返したように降る雨は、茅葺の屋根を叩きつけ、屋根を伝った雨が土を打ち付ける。葉っぱを打ち付ける。雷がゴロゴロとなる。

雨音のなかで眠りたいと思った。

私たちは結局2日目も同じところに泊まった。雨を聴くために。
蚊にも刺された。


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