『リンダはチキンがたべたい!』
2023年、フランス、キアラ・マルタ&クリスチャン・ローデンバック監督、作画、73分、
10/31(火)、東京国際映画祭、角川シネマ有楽町にて。
2023年アヌシーのクリスタル賞(グランプリ)受賞作。
『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(2016年)のローデンバックとパートナーのキアラ・マルタの共同監督作。
ローデンバック監督独自のクリプトキノグラフィー技法で描く。
これは通常のアニメ作品の作画とは全く異なり、1枚の絵に必要と思われる部分だけを描き、連続して動いた時に初めて何が描かれているかが視覚として認識されるもの。
動いた時に初めて成立するというアニメならではの手法とも言える。
本作ではこの技法を全面に使用。更にキャラクターそれぞれの線画に赤や黄といったパーソナルカラーの色面をあしらい、単純化された背景と合わせることでカラフルで自由な、躍動する世界を構築している。
百聞は一見に如かずの技法だ。
幼児の頃に父を突然死で喪ったリンダは母ポレットと共同住宅で暮らす活発な少女。
ある時、リンダは母の早とちりであらぬ罰を受け、その代償に父が得意だったチキンの煮込み料理を作ってもらう約束を取り付ける。
が、その日は街じゅうがストライキでチキンが手に入らない。
困り果てた母は養鶏家から一羽の鶏を盗んでしまうが、事態は思わぬ方向へ転がり始め、やがて街じゅうを巻き込む大騒動に。
チキン料理を核に出来事と人間関係が動き続ける軽妙なコメディ映画。
出だしが母子虐待かと思える事態から始まるのでちょっと身構えてしまうが、最後は皆ハッピーに終わる、アニメーションとしては珍しいタイプの映画。アニメーションというよりフランス映画の範疇で語られるべき作品かもしれない。
思い出のチキン料理を食べることがリンダにとって、亡き父との心理的別離の完遂という成長の通過儀礼になっている辺りが脚本の上手さだろう。
アスミック・エースの配給で日本公開が決定している。
私の斜め前席の社会人カップルの男性にはバカ受けしていたので、プレゼンを上手くやれば一般受けはする筈だ。