小康

生存している。

珍しく長い連勤で、職場の宿舎に四泊して作業していた。実はそこに宿泊するのも初めてで、上司にも周りにも、しきりに疲労の有無を訊かれたけれど、非常に寝つきは良かった。あまりにも音の少ない場所だったからかもしれないし、ユニットバスの作りが学生時代に住んでいた横浜の狭い狭い部屋に似ていて、妙に馴染む感じがあったからかもしれない。洗面台の横に物を広げながら、なんだかずっと前からこんな風に生活していた気がした。

そこはいつも詰めている職場から70 kmも離れたさらに僻地で、「山」という言葉が相応しい。雨上がりの朝には山間から白い霧が昇っていたし、タヌキを3回見た。夜、車のライトの前に飛び出してきたその丸々とした獣は、必死にけれど鈍臭く走り続け、脇の藪に逸れるでもなく、車を振り切るでもなく、二車線の間をうろちょろしては最後に息切れしていた。タヌキって本当に鈍臭いんだなと、有頂天家族の中に描かれる一種の愛らしさを実感したような気がした。
夜、自分の車に荷物を載せながら星を見上げると、思ったよりも明るくないんだなと少し意外だった。星の数が多いってわけでもない。けれどオリオン座の下のシリウスは、これまで見たことのないくらい瞬いていて、白、赤、青と明滅しているのが見えた。ここから遥か遠くで燃えている星の光が、こんなにも明るく届いている。シリウスはやっぱり元気だった。

久しぶりにアジカンを聴いている。振替休日、電車に乗りながら。今日は少し暖かい気がする、電車の中だと上着が要らないくらいだ。なんの引っ掛かりもなく流れてゆく曲たち。いつ聴いても、それほどに自分の中に馴染んでいる。ライブに行くのは1年ぶりで、アジカンを見るのは5年ぶり。それっぽいワイシャツを羽織りながら、実は中には10年前の横浜スタジアムで買ったTシャツを着込んでいる。あれから10年も経った。長かったのか短かったのか、今はちょっとよく分からない。
そういえばアジカンのライブに最初に行った日を記憶していて、それはちょうどPS3の発売日だったから、2006/11/11のはずだ。今日は11/13だからちょっと惜しいね。

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