小さな思いやりにこそ運が味方する
ビジネスマナーとは相手を大切に思う気持ちをカタチに表したものです。
よりよい関係を作っていきたい自発的な相手への思いやり。
社会人になりたての頃、新人研修でやりましたよね。
挨拶や敬語、身だしなみとか。
大事と言われるとそうだとわかりながらも、最初はピンとこないものです。
そういう定番の基本的なビジネスマナーもあれば、どの教本にも載っていない自身の失敗や経験からしか学び得ることのできないようなマナーというものもあります。
ぼくにとってそのひとつが、「人を責めない」というマナーです。
たとえば、納期に遅れてしまうパートナーがいたとします。
とても困ります。
催促メールを送るとしましょう。
できればこの類のものは書きたくないもの、ですよね。
あなたなら、そんな時どんな文面にするでしょうか。
結構悩むかもしれません。
この前、授業で学生たちにも考えてもらいました。
当然、納期とかパートナーはピンと来ないので、約束や友達に置き換えたりバイトやサークルの場面に置き換えたりとイメージしやすくして、です。
まず、「困る」というメッセージを伝えます。
そして、
①なぜ遅れたのか?
②いつ届けられるのか?
③今後どうするつもりなのか?
こんなことを書くかな〜、という学生たちの意見。
私も昨晩まで同じような意見でした。
当初、参考にして欲しいメール文面もそんな感じで書いていました。
*
結局「◯◯してください。」という文面になります。
かつてそういうメールを実際に書いて送ったこともあるし、部下に直接問うたことも多々ありました。
でも、授業前日にこの準備をしながら何か胸の奥でモヤっとした感覚が残っていました。なんだろう、このスッキリしない感は…
そのモヤモヤの答えがわかったのは、授業に向かう途中、松屋で牛焼肉定食を食べている最中でした。
あ、ぼくはこのメールで「人を責めている」。
モヤモヤの原因はこれだ。
「なぜですか?」
「◯◯してください。」
こういう文面をメールで受け取って読むときの胸の痛み。
言葉がキツいですよね。
なにか詰問され、命令されているニュアンスです。
催促するのは、決して相手を責めることが目的ではないのです。
責められると大人でも子供でも人は必ず守りに入ります。
自分を正当化したり、逆に反撃を始めたりする。
ビジネスにおいて、人を責めることは百害あって一利なし。
納期を遅れた相手に伝えるべきは、文句やぶつける様なメッセージではなく、
「では、明日の13時までに納品するのは可能でしょうか?」
という提案であり、柔らかな問いかけなのです。
加えて、再度その回答の期日、時間をキチッと切ること。
期日を守ることを何よりわたしたちは大切にしているのだ、というビジネスへの基準を強い姿勢を示すことです。
あらゆる仕事というのは、どこまでも人と人との関係で成り立っています。
いかにその関係性を良好なものにし、維持発展させていくかが大事なこと。
その過程でミスやトラブルは起きるものです。
そんな時にこそ、マナーは役立ちます。
ひとつのミスをゴリゴリ責めない。
責めるのではなく、提案する。
これはまさに経験から得たぼくなりのビジネスマナーなのです。
*
思い出したのです。
過去、ぼくは人を責めて物事うまくいった試しがなかったことに。
そうだそうだ、と松屋でスライドの文面を修正しました。
そして、学生には松屋で気づいた過程についてそのまま話しました。
人を責めないというのは、ぼくの中で大事なビジネスマナーだったのです。
もちろんマナーはルールと違ってやらなかったからといって何か罰則があるわけではありません。
ただの思いやり、に過ぎません。
でも、そんな小さな思いやりにこそ運が味方することも多々あります。
長いビジネス経験からそんなことがあることも知っています。
誰か人を責めたくなったら、思い出してみてほしい。
ガガガッーと責めるのではなく、そこでこそ提案してみることを。
マナーは相手も自分も助けます。
それでは、また。