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創約とある魔術の禁書目録10 感想



※ネタバレを含みます。

う〜ん。どうなんでしょう。
他の人の感想は評判良さげ。(そもそもぼくの観測範囲では「禁書目録」の悪評をほとんど目に入れた事が無いのだけれど)

ぼくは「禁書目録」の中だと一段落ちるかな、とそんな印象だ。
「創約」の中だと、どうだろう。1巻、5巻に次いでぐらい。
設定には明るくないので他の人に任せるとして主に描写について書いてみる。

その前に、まず良かったところ。
アレイスターとキングスフォードの絡み。

ぼくは新約後半からアレイスターが好きで、「禁書目録」の主人公はアレイスターだと思って読んでいる。
というのも上条当麻くんは精神が人間を超えていて、旧約の1巻からネジは外れていたけれど新約9巻を経由してからは根拠までつけられて、「この人は何でもしてしまう」という印象を乗せて読んでしまうからだ。

アレイスターは既に物凄いことを成し遂げているにも関わらず、ナイーブで、失敗に怯えていて、その人間らしさがぼくは好きだ。
アレイスターの人間描写を見る度ほっこりする。

上条当麻くんは成功するまで走り続ける胆力がある。
悩み描写ですら、悩み仕草に見えてしまう。怖さが勝つ。

オティヌスも良かった。
スフィンクスに乗ったインデックス(ぼくのアイコン)のパロディで作られていた、
スフィンクスに乗ったオティヌスが遂に公式に!これはめでたい。かわいい。

この絵って公式じゃないよね?



人間を超えている上条当麻くんにバティとして成立する数少ないキャラ。戦闘シーンの良心的存在。かわいい。

鎌池和馬先生の「不思議の国のアリス」の解釈も面白かった。
アリスの飼い猫、ダイナを「不思議の国のアリス」の最高戦力、という捉え方は最強議論の拡大解釈みたいでふふっときた。

あとこれは良いところであり悪いところなんだけど、あとがきが面白い。実在の魔術師絡みの軽い解説に創約自体への解説が面白い。
悪いところはぼくはあとがきの方が面白いと思ってしまったこと。

描写について&悪かったところ。

「アリス」というキャラはとっても凄いことをしているんだろうけど、描写が追いついてないように見えるし、これは前から鎌池和馬センセイも苦戦しているように思える。

魔神がたくさん出てきたけど、オティヌスより強いの?アンナは?超絶者は?
彼は設定上もハイスペックで、世界なんて屁でもないヤツらだ。でも描写には落とし込まれてない。アリスも描写に苦戦している。

"「とびきりの僥倖です。頭で思っただけで敵は死ぬ、アリスが意識するまでもなく世界が勝手に動いて敵を殺す、などならなかった事に。アリスのあらゆる攻撃にはひとまず本人の物理的な承認が必要だ、という制約があると分かったのです。一般的に言ってこれは幸せだ」"

"『歩く』すなわち望む場所へ移動する事。
指先を特別な形に組むのでも決められた順に複雑なステップを踏むのでもない。
誰でもできる行為。
意識もしないで享受している恩恵。
ありふれた行動から抽出される意味の純度が高すぎる!!!?!!"

どうだろうか。
過去の雷神トール、フィアンマの右腕、オティヌスの弩、未元物質らのトンデモ設定のトンデモ描写に惹かれたぼくからするとスケールが物足りない。凄さが感じられない。

他にも「死」を特権的で、恐ろしい物として書こうと努力しているけれど「禁書目録」ではもう難しいんじゃないかな。特に上条さんは。
オティヌスとのイチャイチャでありえないぐらい死んでいるし、それ以前に旧約も死を覚悟しているし、上条さんがそもそも恐れずに突撃するような性格として扱ってきたのに、今更感がある。

たまたま今まで生きてた、生かせていた、
のが今回死んだだけ、ぐらいの乾いた読み方をしていた。

今回もなんとなく死ぬだろうな〜と購入前にツイートしたこの画像がネタバレっぽくなってておもしろい。


アリスの虚構空間もなんだかあまりインパクトがない。

新約18巻の学園都市自体が上条当麻のために作られてきた、という単発ネタなら分かるけれど、長期シリーズでそれをやるか!?となった
あの時の衝撃と浮遊感が創約10巻のインパクトを防いでいる。

総じて過去の「禁書目録」に立ち塞がれてしまった、というのがぼくの感想だ。

「創約」単体を切り取るなら多分結構面白いし、スタンディングオベーションしてる。
ぼくがひねくれてるだけなのかもしれない。
みんなも感想書いて欲しい。読みに行くから。


※追記
読み返してみると、ぼく全然良い読者じゃないなと思った。
キャラクターそれぞれの感情、心情には触れていないし、上条さんに至っては新約9巻を持ち出して切り捨てている。
絶対記憶能力を持つ、インデックスは上条さんの死を忘れられないとかトリスメギストスとステイルの対比とかそんな感想を見て、良い視点だな〜ほへ〜と感心しております。

こんな読み方する人もいるんだな〜ぐらいに思ってくれれば

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