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イナーワールド

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上空からラッパの音が3回鳴ると、世界は歪みだし、終焉へと向かった。 パニック状態の群衆に紛れて逃げ惑う内島辰と三日月楓は、謎めいた少女ステラに導かれて町はずれにある外界から閉ざさ…
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イナーワールド 最終話「濫觴の海」

イナーワールド 最終話「濫觴の海」

最終話 濫觴の海
 スピーカーからはバッハが流れていた。
 バッハは母が好きだった。
 父は音楽が好きではなかったので、父が働きに行っている平日のお昼の時だけ、家の中に音楽があった。もちろん、そのほとんどがバッハだった。
 父はDIYと節約が趣味だった。値札の張られた商品をいつも嬉しそうに買ってきていた。応募券やカードのポイントを集めることも好きだった。
 二人の間には喧嘩が絶えなかったが、客観的

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イナーワールド 第3話「豊穣の雨」

イナーワールド 第3話「豊穣の雨」

第3話 豊穣の雨
 夢から覚めてから最初に目にしたのは、窓の外を歩く巨大なデ・キリコのマネキンだった。俺の好きな絵画「ヘクトルとアンドロマケ」がまさか具現化した状態で見られる時が来るとは……。
 すっかり異常な光景にも慣れていってしまった。
 黒板、教卓、机、椅子、ここはどこかの教室なのだろう。
「ちょっといつまで寝てるのー?」
 いたずらっ子のような声色で話しかけてきた佐伯エリは、数ミリほどの距

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イナーワールド 第2話「蓋世の波」

イナーワールド 第2話「蓋世の波」

第2話 蓋世の波
「みんな見て。エリ、悪魔になっちゃった」
 佐伯エリが背負う黒いミニリュックから、小悪魔っぽいコウモリの翼が飛び出る。
 濡羽色にピンクのメッシュが入った髪を高めのツインテールで結ぶ彼女は、ミニリュックから生える翼とそのツインテールを連動させるように、その場で飛び跳ね、上下に動かした。
「ねえ、これ可愛くない?」
 何の前触れもなく、佐伯エリは俺に視線を移し、蠱惑的な表情を見せる

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イナーワールド 第1話「終焉の月」

イナーワールド 第1話「終焉の月」

《あらすじ》

第1話      終焉の月
 人生に無駄なことは、ひとつもない。と、亡き父は繰り返し言っていた。
  元々はべつの誰かの名言だろうか。そこらへんによく転がってそうな文句ではある。
 人生に無駄なことは、ひとつもない。
  それは誰にとって無駄ではないのだろう。父にとってだろうか。神にとってだろうか。自分にとってだろうか。
 少なくとも寿命のある生き物にとって、この世は無駄なもの

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