苦戦する総合スーパー(GMS):「2階以上が儲からない」問題をどうすれば解決できる?(在庫マネジメントの革新に復活の鍵)
こんにちは。ウィンドウショッピング好きの若林です。
ここ数年、総合スーパー(GMS)の苦戦が色々なメディアで伝えられています。
直近ではイトーヨーカドーの親会社であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)が、4月10日の2024年2月期の決算で、不振のイトーヨーカドーなどのリストラ費用などによる特別損失を2459億円計上し、スーパー事業の株式を2026年以降に、一部売却する検討に入ると発表しています。
同社は、これまでにもイトーヨーカドーについて正社員8600人を半分にしたり(2012年)、店舗数を継続的に削減するなどの改革を行ってきており、その集大成として2025年度にはGMS(スーパーストア事業)のROIC(投下資本利益率)において4%達成を目指すと発表しています。
「2階問題」の原因とは
それにしても、なぜこれほどまでに、総合スーパーが苦境に陥っているのでしょうか?もう少し詳しく見てみると「儲かっていないカテゴリー」が足を引っ張っているのが分かります。
Business Insiderによれば、イトーヨーカドーの衣料の売上高は2006年2月期には3000億円あり、(2019年2月期を最後に衣料単体の売上高を開示していないものの)過去の傾向から毎年5~10%ずつ減少しているとすると、現在は1000億円程度とのこと。
約20年かけて3分の1まで落ち込んでいるのは、かなり深刻ですが、その主要因となっているのは、2階以上の商品の代表格であるアパレルの売上低迷です。
さて、私の家の近所にあるショッピングモールには、1階に総合スーパー、2階以上には、ユニクロやワークマン、無印良品などが店舗を構えていていますが、これらの店は結構賑わっており、明らかに儲かっています。したがって
「立地が悪い」
「ビジネスモデルが古い」
という単純な話ではありません。1階は食料品で集客できているのですから、エスカレーターで上がるだけで、”ついで買い”できる2階は、むしろ最高の立地とも言えます。
またイトーヨーカドーを傘下に抱えるセブン&アイ・ホールディングス(HD)と言えば、日本でも最もコンビニ事業を成功させ、間違いなく世界最高峰のサプライチェーンマネジメント(SCM)のノウハウを持っている会社です。
同じ会社が総合スーパーの2階以上をマネジメントしているのに、苦戦するのは少し不思議な感じがしないでしょうか?
2階以上の在庫マネジメントは違うゲーム
さてここで面白い知見があります。
詳しくは番組をご覧いただければと思いますが、実は苦戦の原因は「在庫マネジメントのロジック」の違いなのかも知れません。
例えて言えば、1階と2階以上は「サッカー」と「野球」のように違うゲームをプレイしているのに、サッカーのルールで野球をやっている可能性が高いのです。
一般的に総合スーパーの2階以上が苦戦している場合は、下記のような悪循環に陥っていることが推測されます。
1)売れ残り在庫が売り場の多くを占める
↓
2)売れる商品を置くスペースがない
↓
3)売り場に魅力がなくなる
↓
4)お客様が来なくなる
↓
5)利益率を下げてまで安売りするが、それでも売れないものは残る
↓
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もしこの因果関係が正しいなら、その解決法はシンプルです。センターピンである「大量の売れ残り在庫が売り場の多くを占める」を解決すればよいのですから。
個人的にユニクロ推しの私ですが、たまにスーパーの衣料品コーナーに行くと、結構センスの良いハイクオリティな掘り出し物が置いてあるので、なぜそんなに苦戦するのかちょっと不思議に思っていました。
さて、この週末は、ぜひ近所の総合スーパーの2階以上を訪れて、何が原因か、自分ならどう改革するかを、自分の眼でみて考えて見ませんか?