M. Kawabata

自治体保健師→看護系大学の教育研究職→海外留学(PhD)→国際機関→大学の教育研究職→定年退職→独立。今は大学で非常勤講師をしたり、臨床で働く看護師さんたちや、若手の研究者の方の研究のコンサルやサポートをしています。

M. Kawabata

自治体保健師→看護系大学の教育研究職→海外留学(PhD)→国際機関→大学の教育研究職→定年退職→独立。今は大学で非常勤講師をしたり、臨床で働く看護師さんたちや、若手の研究者の方の研究のコンサルやサポートをしています。

マガジン

  • 働く女性の介護体験記

    働きながら母を介護した3年間の記録です。

  • カナダ留学記

    わたしが20年前に留学した時の体験をまとめました。

最近の記事

イギリスのNP(診療看護師)とGP(医師)の比較研究の結果から学ぶこと

こんにちは。久しぶりにブログを更新します。 今日は、イギリスで行われた重要な研究についてお話しします。 この研究は、内視鏡検査後の消化不良(ディスペプシア)患者さんに対するケアに関するもので、消化器系の診療看護師(GNP)が行うケアが、従来のかかりつけ医(GP)によるケアと比較してどれだけ効果的かを調べたものです。 背景 消化不良は多くの人が経験する一般的な問題です。内視鏡検査は、原因を突き止めるための重要な手段ですが、検査後の適切なフォローアップがなければ、症状の改

    • AIと大学教育

      前回は、AIを研究に活用する際の注意点についてお話ししました。今回は、教育にAIを強力に活用する際の注意点について述べたいと思います。 参考にした論文は、以下のURLに記載されています。 https://chat.openai.com/chat 最近のニュースを見ると、ChatGPTなどのLLMの進歩が早く、教育現場でもこのようなAIツールがどんどん活用されていくことが予想されます。 また、デジタルネィティブと言われる今の大学生たちは、AIの活用には関心が高く、

      • ChatGPTを研究に活用する時の注意点

        以前の記事で、ChatGPTが研究に有用であることと、研究者が適切に利用するための方法について話しました。   一方で、ChatGPTを研究に活用する上での倫理的課題について気になりました。ChatGPTを利用して作成したものを論文にすることが可能なのでしょうか。また、その論文が正当に評価されるのでしょうか。   最近、Web上で、Natureと言うイギリスの権威のある雑誌に、研究過程にChatGPTのようなLLMs(a large language models)を活用した

        • ChatGPTを研究にどう使う

          今日は自動生成AIとして今話題になっているChat GPTを研究に使ってみて私の感想と意見を書きたいと思います。 質的データの分析に活用してみた 私の研究はインタビューで対象となった人が語る、その会話の内容を分析する、「質的研究」とよく研究者の間で分類されるものです。 インタビューの内容を量的に分析することもできます。これは、例えば、会話の中にどんなワードがどの程度の頻度で出現するかを明らかにする場合には、数字で現れます。 私の研究の分析ではそうではなく、その人が語っ

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        • 働く女性の介護体験記
          11本
        • カナダ留学記
          9本

        記事

          介護体験記をKindle本として出版しました

          このブログの記事「働く女性の介護体験記」を改編してKindle本として出版しました。3月19日(2023年)まで無料キャンペーンをしています。読んでいただければ嬉しいです。

          介護体験記をKindle本として出版しました

          英語がうまく話せるようになるために

          留学あるいは仕事で海外へ出ていく若者が増えつつあると言うニュースを聞くようになりました。また、ビジネスでの英語のコミュニケーションの重要性が注目されていますよね。 私は留学経験があり、ペラペラではありませんが英語を話すことができます。しかし、留学前は読み書きはある程度できましたが、聞いたり話したりすることは、ほぼ全くできませんでした。 そんな私が話せるまでになる経緯の中で学んだことをお話します。それが、英語のリスニングとスピーキングのスキルの向上や改善に悩んでいる人の参考

          英語がうまく話せるようになるために

          日本の大学研究者が世界で戦えない理由

          記事の更新がしばらく途絶えていました。前回に続き大学研究者として働いてきた経験から見えてきた日本の大学研究者の抱える課題についてもう少し書いてみたいと思います。 今回は研究についてです。文科省は研究成果の国際比較のために、科学技術指標と言うものを毎年公表しています。 この指標では、研究者の書いた論文がどれだけ他の研究者から参考にされ、つまり「引用」されているかを調べて、その引用された論文数を世界各国の間で比較しています。 引用が多いと言うことは、それだけその論文の価値が

          日本の大学研究者が世界で戦えない理由

          最低賃金を下回る大学非常勤講師の給与

          今回は、わたしが大学教員として働いた経験を通してのお話です。 大学には非常勤講師という仕事があります。これは、その大学の常勤の教員では賄いきれない科目や専門知識の領域の授業を行なってもらうことを目的に、大学が独自に雇用するものです。 この大学非常勤講師の給与体制には問題があると思います。それについて、少し今日は書いてみたいと思います。 非常勤講師の給与とは 非常勤講師の給与は大学によっても、そして教員本人の経験や業績によっても異なります。しかし、おおよそどの大学でも教

          最低賃金を下回る大学非常勤講師の給与

          「完全看護」の功罪

          今日は、日本における「完全看護」つまり、付き添いを必要とせずに看護師が全て必要な看護を提供する制度ということです。これが日本で完成したのが1997年と言われています。 今では想像もできないかもしれませんが、以前は病棟に家族が付き添っていないと、十分な看護ができない時代があったんです。 でも、看護師不足の続くタイやスペインを訪問した際に、家族のかたが看護師と一緒になってケアを行なっている様子を見ました。 このことから私が考えたことを今日はお話ししたいと思います。 日本の

          「完全看護」の功罪

          専門家による共感は諸刃の剣

          今日は、看護師などの医療・福祉の専門家が自分のサービスの対象である人たちに示す共感の功罪についてお話しします。 保健医療従事者が共感をすると言うこと 看護師は大学や専門学校で、患者に共感することが大切だと教えてもらいます。 ここで言う、共感とは相手の意見や考えを理解しその通りだと自分も思うことです。よく、看護の領域では「患者の気持ちに寄り添って」と言う表現を使います。 医療従事者が対面する相手は、入院している患者さんや体の状態に何らかの問題を抱えた人、あるいは精神的に

          専門家による共感は諸刃の剣

          看護師という職業の宿命と可能性

          今日は看護師という職業の持つ宿命と可能性についてお話しします 看護師の仕事は二種類ある 病院で働く看護師に役割とは、入院した患者の治療がスムーズにいくようにサポートすることです。そのために看護師には2つの仕事が任されています。 一つは、生活の援助と呼ばれる仕事です。入院中には、病状やまた治療のために、患者は自分の身の回りのことが、いつものようには行えなくなります。その時に、自分でできない部分を看護師がサポートして通常の生活になるべく近づけるようにします。 もう一つは、

          看護師という職業の宿命と可能性

          お金があっても幸せになれない高齢者

          今日は、老後のQOLはお金で決まるというよりも、身体機能が低下した生活を「自律的」に立て直す能力が大事という話です。 老後はお金が全てでない 近年わが国では所得の格差が問題になっています。ニートや非正規の労働者が増えていることがニュースになります。若い人たちの格差がクローズアップされていますね。 でも、実は年代別に見ると、75歳以上の高齢者がどの年代の人たちよりもいちばん所得の格差が大きいのです。 老後資金が2000万円必要と政府が発表し、一時国全体が騒然とした感があ

          お金があっても幸せになれない高齢者

          専門性の落とし穴:看護職の場合

          今日は、専門性を高めることが、必ずしもその専門職のサービスの質の向上につながるとは限らないというお話です。 皆さんは「専門性」という言葉を聞いて、どのようなことをイメージしますか。 多分多くの人は、「責任ある仕事」をイメージするのではないでしょうか。 看護職も医療専門職の一つですから、当然「専門性」を追求すべき仕事です。 でも、専門性を協調するために、看護職にとって大切なことが忘れ去られてしまうことがあります。 この話は、看護職に限らず、どの分野の専門職にも、あるい

          専門性の落とし穴:看護職の場合

          63歳の挑戦:コミュニティ・ビジネスで地域とつながる

          わたしが約40年間勤めた教育・研究職を2022年の3月の末で退職し、10か月が過ぎました。62歳でしたから、ほぼ定年退職です。 さて、人生100年の時代、人生の次の章をどう生きるのか。 わたしの出した結論は、自分の住む地域の「コミュニティ・ビジネス」の起業へ挑戦することです。 簡単に決めたように聞こえるかもしれません。 しかし、ここへ至るまでに、わたしには越えないといけない、いくつかの高いハードルがありました。 わたしと同じように60歳過ぎで『ライフ・シフト』を目指

          63歳の挑戦:コミュニティ・ビジネスで地域とつながる

          「老後2000万円問題」が忘れていること

          ちょっと前に「老後資金には2000万円必要」とメディアで流れ、国民が不安に煽られたような時期がありました。 今日は、この発言の背後にある考えと、この不安を解決する考え方についてお話ししたいと思います。 老後2000万円問題とは これは、定年後年金だけでは生活ができないので、老後資金として年金以外に2000万円貯めておかないといけないよ、と言うことが、金融庁の報告書に書いてあったと言うことを、マスコミが取り上げたものだったと思います。 これで、慌てた人もたくさんいたと思

          「老後2000万円問題」が忘れていること

          意外と知られていないカナダの医療崩壊の事実(3)

          カナダの医療の問題点の3番目、「不十分かつ古すぎる医療整備」について説明しますね。 3-① 医療設備の更新がなされていない ちょっと古いデータですので、現実を反映していないと思いますが、でも参考になるので、紹介します。2000年に発表された放射線科医協会が発表した報告書の記事です。 国内にある画像診断機器の半数以上が古いものであり、至急買い換える必要があると言われている。 500以上の病院を調査した結果、63%の病院がX線撮影装置が時代遅れになっている。 53%の超

          意外と知られていないカナダの医療崩壊の事実(3)