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読書ノート2024 (その13)
タイトル:闇の盾
著者:寺尾文孝
皆さんは記憶力が良い方ですか。
私は、それなりに良い方かなあとも思ったりもしているのですが、妻と話をしていると、人は自分の興味関心のあることをよく覚えている一方で、そうでないものに対してはまったくと言っていいほどカケラも覚えていないことがよくわかります。
複数の人間が同じ場所で同じ経験をしていても、人によって捉え方はさまざまで、記憶の残り方もさまざまなのだなあと実感する今日この頃です。
さて、今回の本は、著者が過ごしてきた半生について描いた、いわゆる自伝のようなものですが、著者の描いている場面に登場する人物は、この本を読んで、うんうんと頷くのでしょうか、それとも「それはないで」と首を傾げるのでしょうか。
高校卒業後、警視庁に入庁し、機動隊勤務5年の後に警視庁を退職し、その後参議院議員秦野章の知己を得て危機管理の会社を経営するに至った著者の半生を描いたものです。
1941年(昭和16年)生まれの著者が経験してきた、安保闘争やバブル経済の崩壊など、戦後日本が進んできたその折々の時代に暗躍した様々な人が著者の周りに現れてきます。
その様々な人との関わりを重ねる中で、著者が気づいてきた考え方や人間関係などの描写は、まさにその時代の空気感そのものと言ってもいいものかもしれません。
しかしながら、かつて私が読んだことのある別の著者がこの本の著者のエピソードを、自分のエピソードであるかの如く描いていたように、この本に描かれた内容がどこまで事実なのかは確かめようがありません。
とは言え、この著者にとっては、すべてが真実であることは間違いありません。
同じ時代を過ごしながらも、自分が知らないことが世の中でたくさん行われているのだなあと実感しました。
闇の盾