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心はねる時

息子(小6)が去年から剣道を始めた。
体育館で息子が号令をかけている。

「黙想ーーー」

大きな声を出しているのを聞いた。
みなが目を閉じる。

「やめぃ」

先生が言う。
深々と頭を下げる。
礼儀をひしひしと感じる。

基礎をみっちり。
みっちり、みっちりやる。
来る日も来る日も基礎をやる。

そうやって、ようやく防具をつける。

はじめての試合がやってきた。

私ははじめての係員として会場に入った。
トーナメントの上に書かれている子が赤、
下の子が白になると教わる。
審判の旗を見ていないと、
どっちが勝ったのか
私には全然わからない。

なんとか役割を全うしたら、
息子の試合は終わっていた。
どうだった?と聞いたら
「完敗だった」
と笑いながら言った。

それでも、息子の横顔が
たまらなくかっこよく見えた。

打ち合う音、声、
見るものすべてが
知らなかった世界。
あせくささでさえも、
輝かしい。

「剣道」という名前を聞いて、
知っていると思っていたけれど、
何も分かっちゃいなかった。

そんなことだらけなんだろう。

そう思うと、
この世の中って、
とてもおもしろいと思う。

私の世界が広がる。

ご縁で広がっていく世界がある。

見させてもらえる世界がある。

世界が広がったと感じると、

心ってはねるんだね。

生きていてよかったなあ。