心はねる時
息子(小6)が去年から剣道を始めた。
体育館で息子が号令をかけている。
「黙想ーーー」
大きな声を出しているのを聞いた。
みなが目を閉じる。
「やめぃ」
先生が言う。
深々と頭を下げる。
礼儀をひしひしと感じる。
基礎をみっちり。
みっちり、みっちりやる。
来る日も来る日も基礎をやる。
そうやって、ようやく防具をつける。
☆
はじめての試合がやってきた。
私ははじめての係員として会場に入った。
トーナメントの上に書かれている子が赤、
下の子が白になると教わる。
審判の旗を見ていないと、
どっちが勝ったのか
私には全然わからない。
なんとか役割を全うしたら、
息子の試合は終わっていた。
どうだった?と聞いたら
「完敗だった」
と笑いながら言った。
それでも、息子の横顔が
たまらなくかっこよく見えた。
打ち合う音、声、
見るものすべてが
知らなかった世界。
あせくささでさえも、
輝かしい。
「剣道」という名前を聞いて、
知っていると思っていたけれど、
何も分かっちゃいなかった。
そんなことだらけなんだろう。
そう思うと、
この世の中って、
とてもおもしろいと思う。
私の世界が広がる。
ご縁で広がっていく世界がある。
見させてもらえる世界がある。
世界が広がったと感じると、
心ってはねるんだね。
生きていてよかったなあ。