シネスイッチ銀座で見た「かもめ食堂」
私の一番好きな映画。
それはずっとかわらない。
かもめ食堂。
小林聡美さん演じるサチエさんが好きだ。背筋を伸ばしたくなるような、さあ前を向いていきますか、というオーラ。「ハラゴシラエして歩くのだ」!と力がみなぎってくる。
時は2006年。
「ねえ、この映画知ってる?」
職場の先輩が かもめ食堂 のチラシをくれた。
「オールフィンランドロケなんだって」
私は当時フィンランドが好き過ぎて、好きであることをまわりのひとに伝えまくっていた。
「絶対、見に行きます!!」
家に持ち帰り、壁に貼り付ける。
時は同じく。
当時付き合っていた人にふられた。ふられるとはこんなにも心にダメージがあるのかとびっくりした。湯船につかりしくしく泣いた。でもそれは1日だけ。泣いているのもばかばかしくて、心は くそっ!って気持ちが満ち満ちていた。相手におこっているのか、いやそれよりも自分自身になのか。もうよく分からない。けれどマグマのように、くっそー!となぞのパワーがわいてくる。でも、気をはっていないとへなへなになりそうなアンバランス。壁に貼ったチラシが目に入る。
そうだ、銀座に行こう!
かもめ食堂、見に行こう!!
颯爽と銀座の街を歩く。ゆっくりなんて歩いていられない。風を切って歩かないと、何かに負けてしまう。そう思いながらシネスイッチ銀座に入った。
たくさんの観客と一緒に席に座った。映画が始まると、おかしくておかしくてみんなで笑った。ひとり、笑いをこらえきれない女性の観客がいて。その方の笑い声がまた良くて。笑いのリーダーみたいで、よけいに楽しい気持ちになった。
私が失恋した人であることは、誰にも分からないだろう。けれど、たくさんの人と一緒に見たことで、とってもあったかい気持ちになった。誰も何も言わないけれど、同じ映画を見て笑って「あなた大丈夫よ」と言われているかのような。励まされたかのような。
こんな気持ちもこの映画を見ると、
まるごと思い出すから。
私はこの映画が大好きだ。