ポスト"情報砂の一粒時代"に、スポーツの映像メディアを立ち上げた話。ICEBERG、始動します。
「情報砂の一粒時代」という言葉をご存知でしょうか?
一言で表すと「情報"砂の一粒"時代」は、想像しにくいほどの情報洪水のことです。
2015年頃から佐藤 尚之さんのインタビュー記事や書籍などでこの言葉を拝見し、当時は広告業界に身を置く若手社員として「情報とメディア」「コンテンツ」の在り方が急激に変わっていくことを感じました。
アメリカのIDC社の調査によると、2010年の1年間に世界には約1ゼタバイトの情報が流れたと言います。
(1ゼタバイトは、世界中の砂浜の砂の数。無限…。)
この調査では2020年には35ゼタバイトの情報が流れると予測されていました。つまり、地球上に35倍の面積の砂浜があって、その中の一粒があなたの伝えたい情報だということ。2023年現在、言うまでもなくその情報量は増え続けてます。
生活者やファン/サポーターに伝えたい・届けたいと考えて心血を注いで作ったコンテンツは、いまや世界中の砂浜の中の『たった一粒』にすぎず、大量に流れては増え続ける情報の中から見つけてもらうのは至難の業。広告・コミュニケーションの仕事をしていた自分としては、他人事ではありません。
ポスト"情報砂の一粒"時代において「情報とメディア」「コンテンツ」の在り方は大きく変わりました。このメディア環境・情報爆発を前提に、日本のスポーツコンテンツに目を移した時、僕は強い危機感を覚えます。
日本のスポーツコンテンツの現状
放映権料の高騰により、地上波のスポーツ中継は減少。やべっちFCやSUPER SOCCERなど、人気のスポーツ番組が終了。スポーツ中継の多くはDAZNやWOWOW、U-NEXTなど有料のOTT・ネット配信に移行。コロナ禍で一時的に盛り上がりを見せたアスリート個人の情報発信も、競技活動とリアルな場での試合観戦が再開されて以降は下火に。試合映像含めたコンテンツの権利はリーグ・協会・OTTが一括管理しており、スポーツ領域で活動している情報発信者・インフルエンサー・メディアの多くは試合にかかる映像を活用することができない。(ルール度外視で勝手に使っている発信者もいますが)
世界的にスポーツコンテンツの放映権料はインフレを続ける傾向にあり、一方で日本は企業の広告予算と個人消費が減っていくダウントレンドの中で、徐々に「スポーツが放映されない世界」が近づいてきています。
FIFAが昨年12月の男子カタール大会で日本のTV局側に提示した放映権料は約350億円。今回の女子W杯ではこの3分の1となる116億円がFIFA側の提示額とみられており、増額された放映権料は参加チームに分配される賞金を中心に活用されるとのこと。(優勝チームは約154億円で前回大会より4倍増)
今回の女子サッカーW杯は開幕直前でNHKが日本戦の放映権を獲得し、テレビで国民が広く視聴できる状況は担保されましたが、あまりに直前に放映が決定したこともあり、特に事前の告知・宣伝が全く足りておらず、女子W杯への注目度は大会期間中にも関わらずなかなか高まっていかない状況です。
そもそも試合の放映権を買ったテレビ局やOTTがその権利を最大活用するためには、放映権以外に「試合映像の制作費」「機運を醸成する大会期間前〜期間中に放送する番組の制作」「広告宣伝費」など制作費・広告宣伝費を拠出する必要があり、放映権を購入することがギリギリの状態だと、それ以上の広がりを作ることは難しい。事実、今回の女子サッカーW杯はNHKよりも、FIFA+のネット配信で試合を見ているサッカーファンの方が多い印象です。
またスポーツコンテンツが足踏みをしている間に、可処分時間奪い合い競走のライバルである「エンタメ」「音楽」「アニメ」などの他ジャンルはメディア環境に適応しながらビジネスモデルそのものを変容させており、特にK-POPのコンテンツやメディア活用、ファンダムは凄まじいものがあります。(僕もBTSやTWICEにハマり、LE SSERAFIMにハマり、MISAMOに、、、と沼りに沼っています。)
スマホでコンテンツを消費している人たちにとって、そのジャンルがスポーツでなければいけない理由はどこにもありません。スポーツコンテンツの競合はもはやエンタメ全域であり、対象はローカルからグローバルまで広がっています。
スポーツコンテンツは「面白いか・面白くないか」「最後まで見るか・数秒でスクロールされてしまうか」の世界で、他の数多エンタメコンテンツに打ち勝っていかなければなりません。
スポーツの映像メディアICEBERGをローンチしました。
2023年7月29日に「ICEBERG - 勝ち負け以外のスポーツの話 -」という自社のスポーツ映像メディアをローンチしました。セイカダイとしては、初の自社事業となります。
メディアコンセプトは「ICEBERG=氷山」で、僕たちが着目しているのは氷山の一角ではなく、水面下で目に見えていない9/10の方です。
「目に見える結果以外には価値がない。」
「勝負の世界では、勝者は1チームだけ。1人だけ。」
本当にそうでしょうか。
SUCCESS IS LIKE AN ICEBERG.
習慣、努力、挫折、環境、決断、継続、忍耐、落胆、運、自己犠牲、挑戦、周囲のサポート、ブレイクスルー etc…
成功は、目に見えない礎の上に成り立っています。
ピッチ上でアスリートが魅せるパフォーマンスは、言語を超えて世界中に勇気と感動を届ける。僕自身、1人の観客としてカタールW杯を現地で観戦し、そのことを改めて実感しました。
一方、実社会に目を移すと、晴れ舞台に立ち続けられる人ばかりではありません。そのことを思うにつれ、ピッチ上のパフォーマンスや勝利以外の部分にこそスポーツの価値の源泉があるのではないかと、僕は考えるようになりました。
SPORTS IS LIKE AN ICEBERG.
頂上を目指すその過程に、社会を明るく照らす無数のコンテンツが眠っている。
「目に見えない部分に、スポーツの価値がある。」
スポーツを再発見するメディアがICEBERGです。
「〇〇選手が大活躍!」「〇〇が勝利!金メダル!」「〇〇が移籍!」など視聴率や視聴者数を稼がなければいけないメディアが、分かりやすくキャッチーな話題をこぞって扱う理由はよく分かります。視聴者がいなければ広告収入も課金も発生しません。
一方で、成功や栄光・勝利のような目に見える分かりやすい部分よりもむしろ、ピッチ上では表出することのないプロセスやストーリーの方が、スポーツが社会へ還元できる価値を秘めていると僕は考えています。
大谷翔平選手のようにMLBでホームランを打てる人は世界中を探してもいませんが、大谷選手の思考法や習慣の中で一般の方が取り入れられるものはあるはずです。「今日だけはアメリカに憧れるのをやめましょう。」の思考法もそうですし、高校時代に作成した目標達成シートの取り組みもそうです。
大谷選手程のスター選手であれば、その成功やスーパープレーの裏にどんな努力や工夫、ストーリーやプロセスが秘められているのか誰しもが気になるものです。しかし、日本で数人のトップオブトップのスター選手以外であってもスポーツを追求している人であれば、様々なストーリーやプロセスを携えています。
カタールW杯を現地観戦して、日本代表の躍進を眺めながら感じたことがあります。
ICEBERGの副題は「Sports Movie Magazine For ALL.」。スポーツを多角的に捉え、人生を豊かにするようなストーリーやプロセスを映像に収めてお届けしていきます。
なぜ今、スポーツの映像メディアを立ち上げるのか
株式会社セイカダイは「社会に、セイカを灯そう。」という理念のもと、「Light up XXX with sports.」というミッションを掲げて活動しています。つまり、セイカダイはスポーツとともに社会を明るくする会社です。
現在の事業の柱はスポーツ団体をはじめ企業の皆様のコミュニケーションの支援で、事業戦略やブランディングから関わることもあれば、Webサイトやロゴ、映像やグラフィックを制作することもあります。
私たちにとってクライアントの皆様との共創は「Light up XXX with sports.」に直結する活動と捉えています。既に多くのファン・サポーターや顧客を持ち、様々なチャレンジを続けてこられた皆様の魅力やコンテンツがより多くの人に、より効果的な形で伝わることはとても意味があることです。
加えて、創業2年目となる2023年は自社でも「スポーツとともに社会を明るくする」チャレンジができないかと、構想と計画を進めてまいりました。
2023年内にローンチする自社事業は大きく3つあるのですが、その内のひとつが今回ローンチしたスポーツの映像メディア「ICEBERG」です。
魅力的なスポーツコンテンツの多くが有料のOTTに独占されている昨今、わざわざお金を払って積極視聴してくれる熱心なスポーツファン以外の層に届いているスポーツコンテンツは、どんどんライトで即時性の高い(=賞味期限の短い)ものになっているように感じています。しかし、それだけではスポーツの表層部分しか伝わらない。
日本スポーツの未来を想う時、無料で誰でも見られるプラットフォームに、スポーツのリッチコンテンツが配信されている必要があると考えています。
一方でコンテンツをリッチにすればする程、本数を多く配信すればする程、労力はかかりますしコストも膨れ上がっていきます。この部分に関して、セイカダイはビジネスモデルで解決していきます。(事業戦略は別の機会で書きたいと思います)
現在、ICEBERGでは「勝ち負け以外のスポーツの話、聞かせてもらってもいいですか?」の企画を配信しており、輝かしい部分だけではなく、挫折やターニングポイント、プロセスに光を当てるディープインタビューをお届けしています。
加えて、新しく出ていくメディアの戦い方として、ICEBERGは縦型動画で配信することを前提に映像コンテンツを企画・制作しています。ゼロから立ち上げるメディアが視聴者と支持を獲得していくためには、まず人の目に触れる機会を増やさないといけません。長尺x横型のディープインタビュー映像を見てもらうために、映像を視聴してもらうための導線+興味関心のトリガーを作る必要があり、そのための縦型動画です。
そもそも、若者に長尺の映像を見せるハードルはとても高いです。若者を中心としたスマホユーザーの視聴習慣の変化に合わせて、短尺x縦型で見てもらえるスポーツコンテンツのバリエーションが増えていくことはとても重要だと考えています。
今後、配信する企画の種類を増やしながら新しい形の映像スポーツメディアを作っていきます。是非楽しみにしていてください!
最後に
長文となりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました!最後にお願いです。宜しければ是非以下のURLからチャンネル登録をお願いいたします!笑
また、各種SNSはこちらです。
■Instagram:https://www.instagram.com/iceberg.studio_/
■TikTok:https://www.tiktok.com/@iceberg.studio_
■Twitter:https://twitter.com/ICEBERG_studio_
ICEBERGの事業戦略や狙い、年内ローンチの2つの事業については改めてnoteに書きたいと思います。
fin.
五勝出拳一(ごかつで けんいち)
SEIKADAI inc.代表取締役|広義のスポーツ領域で、クリエイティブとプロモーションやってます|東京学芸大学蹴球部 学連 →電通テック/ライブ→スタートアップ→独立|著書『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』/マイナビ出版
いつも読んでいただきありがとうござます:)