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水野学氏に学ぶ、日本スポーツのブランディング戦略

あなたはこの問いに、何と答えますか?

Q. ブランディングについて説明してください。

A. 




僕は、このように答えます。

Q. ブランディングについて説明してください。

A. ブランディングとは、見え方のコントロールである。


ブランディングとは見え方のコントロール。


この回答は、「くまもん」を創ったことでも有名なクリエイティブディレクターの水野学さんの著書『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)から頂戴しています。

ブランディングに興味ある人は必読です。
超勉強になります。


物理的に存在しない何かを理解する上で、言葉の定義を明確にしておくことは重要です。広告業界で働いていて、これまで有象無象のブランディング論に触れてきましたが、その中で一番スッと腹落ちした定義が「ブランディングとは見え方のコントロール。」でした。

ブランディングという行為を例えると「世の中を驚かすような奇をてらったことをするのではなく、河原で石を積み上げていくような感じ」と水野さんは言います。

石のひとつひとつはなにかというと、商品そのものであったり、パッケージデザインであったり、広告であったり、その店舗の空間デザインであったりといった、その企業のアウトプットです。企業が発信するアウトプットが、ブランドをかたちづくっているんです。

例えば、アップルというブランドは、見え方すべてがカッコいいと例に挙げられています。商品がカッコいいのはもちろん、ニューヨークや銀座にあるアップルストアやウェブサイト、広告から商品の梱包に至るまで、すべての見え方がコントロールされていて、そのおかげで「美意識の高さ」や「クリエイティブへのこだわり」が顧客にちゃんと伝わっているのです。

ブランディングが上手く行っている企業や個人は、どこを切り取っても見え方にブレがない。イメージしやすいところだと、スターバックスやIKEAは、店舗/商品/パッケージ/ロゴ/制服/店員/食器/照明/トイレ等、どこを切り取ってもビジュアルがブレません。


そもそも、

企業やサービスにとって何故ブランディングが重要なのかというと、情報の氾濫とコモディティ化が進んだ現代においては、そのサービスや商品が持つ世界観が差別化要因になるからです。

最所さんが投稿されていたnoteはまさに「世界観の重要性」に関する内容で、非常に勉強になりました。

そうやってあらゆるものの垣根がなくなり、すべてが横並びに比較される世界では、思想と哲学、そしてそこから導き出された世界観こそが最大の差別化要因になる。
これまで大きな価値だった『早くて便利』はテクノロジーの進化によってその実現コストが大幅に下がり、もはや過当競争に陥りつつある。



日本スポーツのブランディング戦略


日本スポーツでブランディング上手な競技団体を思い浮かべると、BリーグやTリーグ、フェンシング、プロ野球だと横浜ベイスターズ等の名前が上がります。これらの競技団体は見え方のコントロールが高い精度で出来ていると感じます。

ブランディングはロゴやユニフォームを変えたからといってすぐに確立できる訳ではありません。水野さんの例えにもあるように、積み上げていく過程で見え方の異なる石が混じっていると、それはブランドに対する違和感へと繋がります。

つまり、全ての見え方が適切にコントロールされていることはブランディングを進めるにあたってのファーストステップでしかなく、時間をかけてブランドを世の中へ浸透させていく作業こそが重要になります。

スポーツクラブが見え方をコントロールしなければならない対象は多岐に渡り、

- チームコンセプト
- ロゴ
- ユニフォーム
- 選手
- プレー内容
- スタッフ
- スタジアム
- 演出
- グッズ
- フード
- チケット
-パンフレット
- HP
- ポスター
- etc....

.....挙げ始めるとキリがありません。

どの角度から見ても同じ見え方をしていなければブランドは育っていかず、その基準を統一する為に要する労力は、正直相当なものです。

そんな中でも、創立50周年でクラブのリブランディングに踏み出した東京ヴェルディには大注目しています。クラブのSNSやHPを見るに、以前から掲載されているコンテンツはまだ以前のトンマナで表現されているモノも多いのですが、最近UPされている画像等は新しいブランドガイドに沿ったビジュアルに統一されていて、非常に良いなと思いました。

スポーツクラブを構成するビジュアルはそれこそ無数にあり、その全てを誰か1人が監修することは不可能に近いです。故に、上記のようなブランドガイドやコンセプトを中の人達がブレなく共有しておくことが非常に重要になります。(広報宣伝部以外のスタッフや選手も、です。)


また、JリーグやFリーグを観に行って特に気になるのは、スタジアムです。澤山さんのツイートに激しく同意で、僕は何よりハード面の統一感の無さに厳しさを感じます。

スタジアム最寄りの駅、スタジアムへの道のり、入場ゲート、スタジアムMAP、運営看板、コンコース、座席、張り散らかされた広告、、、これらのビジュアルには統一感が感じられません。

「そんなところ、誰も気にしてないよ」と仰る方もいると思いますが、それではクラブのブランドが育っていきません。石が積み上がらないからです。

僕の頭の中に常にあるのは、大学生の時に訪れたエミレーツスタジアムなのでハードル高杉ではあるのですが、ここまでやり切って初めて「ブランド=世界観」と言えるのだと思います。

芋っぽさ、、、。


結論

僕が考える日本スポーツのブランディング戦略は、

[クリエイティブディレクターを起用すること]

[辛抱強く見た目をコントロールし続けること]

これだけです。


クリエイティブディレクターをインハウスで雇うのは、相当にお金がかかります。資金捻出が難しいクラブは組織の外から監修してもらうのが良いと思います。今回のヴェルディ方式です。

決して資金面が潤沢ではないヴェルディが、有名クリエイティブディレクターに投資をした点は非常に興味深く、素晴らしい経営判断だと思います。

クリエイティブディレクターが全ての見え方の基礎となるブランドガイドを作成することで、ビジュアルのブレが無くなります。そして、クラブの全ビジュアルを継続的に監修していくことでブランドが積み重なっていきます。

また、優秀なクリエイティブディレクターを起用すれば、その下で働きたいアートディレクターやデザイナーが現れるはずです。そういったアートディレクターやデザイナーをラボ的にクラブで囲い込めたら良いのになぁなんて、妄想しています。


クリエイティブディレクターがいれば、間違いなく先に挙げた統一感の無さをコントロールしようとするはずです。もちろん、管理の問題で出来ること/出来ないことはあります。専用スタジアム、やっぱり魅力的。。。


ブランディングに近道はなくて、時間をかけて石を積み上げていくしかありません。そうして中・長期的な視点でクラブのブランド・世界観を醸成していく競技団体が日本スポーツ界に増えることを願います。

(僕もどこかで貢献していきます!)



-fin-

五勝出拳一[ごかつでけんいち]
スポーツとアスリートの価値を見える化する広告屋|NO MORE セカンドキャリア|東京学芸大学蹴球部&全日本大学サッカー選抜 主務 ➡︎ 現職は広告屋|サッカー選手育成アカデミー神村学園淡路島キャリアアドバイザー|COYG|Nikon Z6|気軽にDMください📩発言は個人の見解📢日本に40人の苗字の持ち主、ゴカツデです。


いつも読んでいただきありがとうござます:)