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市民対話×合意形成~モヤモヤしない対話の場はどうやったら作れる?

こんにちは!今回はHackCamp【合意形成ラボ】研究員、ゴウイケイコに代わって同僚である私・菊井が市民対話の視点から見た合意形成についてお届けします。(私たちHackCampが合意形成を研究する理由はこちらから)。

2021年春、森田健作前知事の任期満了に合わせて実施された千葉県知事選挙は、千葉市長として大きな支持を集めていた熊谷俊人氏が歴代最多得票数で次点に100万票以上の差をつけて圧勝したことで話題を呼びました。

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/56430.html

かねてから市民と直接対話をすることを重視している熊谷氏は、選挙戦に先駆けて千葉県の各地で市民との対話の場を積極的に展開。私はコロナ禍ということもありこの熊谷氏と市民とのオンライン交流会の設計をお手伝いする機会を頂きました。そこで日頃仕事上で常に心がけている、目指す成果を強く意識した参加者・ワーク・環境・ファシリテーションを含む「場」をデザインすることの重要さを再確認。

一口に意見交換、合意形成と言っても「このツールを使えば万能!」「このワークをやれば無敵!」ということは無く、あくまでその「場」を何のために持つのか(目的)にあわせてすべてをデザインする必要があります。

実施したイベントの背景や詳細は、既に別の記事で紹介しているので、今回はその時の経験から、限られた時間で効果的な意見交換や合意形成を行うための「場」のデザインに必要なことをお伝えしたいと思います。

自由闊達だけが脳じゃない。ルール化された『発言禁止の意見交換』でNo more 不完全燃焼!

皆さんにとって「良い意見交換」というと、参加者全員から自由闊達にとにかくたくさんの発言が出ているような場面が思い浮かぶでしょうか?

ところが、市民というのはこれ以上になく多様な背景をもった人々の集まり。なので例えある程度テーマを絞ったとしても、お互いの立場や意見が大きく異なる場合が多々あります。

タウンミーティングは昨今各地域で活発に行われている市民対話の場の代表例です。が、誰もが自由に発言して良い場所である特性上、どうしても決まった人ばかり発言したり、自分に関連性の低い話しを延々と聞かされたり、行政を批判するばかりの発言者にうんざりしたことはありませんか?自分で意見したときに、こちらの意見を投げっぱなしで終わり、自分の意見が承認されたのかどうかもよくわからない、モヤモヤした気分になったことは?随分長い時間をかけたのに、言えた意見はほんのちょっとで不完全燃焼だった経験は?

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・・・そうです、市民が集まってただフリーダムに発言だけすれば良いという訳ではないのです。熊谷氏のオンライン交流会では、こういったモヤモヤを解消するべく、できるだけたくさんの参加者にとって関連性の高い意見を発言してもらうことを目指しました。熊谷氏も「みなさんと一緒に創っていくという雰囲気をつくりたい」と「協働」の概念を当初からおっしゃっていました。

一緒に創っていく雰囲気を出すには、市民が苦情を投げて行政が弁解する/受け止める、という上下関係の構図では、サービスを提供する行政vsそれを享受する市民、という雰囲気から抜けられません。そこで、発言の内容や尺や頻度について最低限のルールを設け、参加者みんなが考えてアイデアを出し、それを受け止める側が確認し反応をする、という場が必要になってきます。

そのために必要となるのが「可視化」と「発言のためのルール」。そしてそれを実現できるのがオンラインワーク、言うなれば「発言禁止の意見交換」なのです。

オンラインワークの設計は、参加者全員が建設的な意見交換を楽しめるように目的、状況、参加者のレベルに合わせる

それでは、じゃあ実際にオンラインワークはどんな点に気を付けて設計したら良いのでしょうか?そのポイントを少しだけお伝えします。

<①設計のポイント~参加者全員が楽しめるように難易度を上げ過ぎない>
大前提である「場の目的」の他に、設計する際に考えるポイントは以下が挙げられます。

◆ワークに割ける時間
◆双方向のコミュニケーションを許容できる範囲
◆参加者はワークショップやツールにどの程度慣れているか
◆登壇者・参加者のオンライン環境
◆参加者の属性(どんなアイデアや意見が想定されるか)

例えば熊谷氏の市民対話の場合で言えば、事前に練習などが難しい参加者でも、当日初めてやっても誰でもできる仕組みでなくてはならなかったので、複雑な設計は難しいことが予想されてました。しかも熊谷氏は超多忙で、打ち合わせはもとより本番の時間も非常にタイトでしたので、進行もスムーズにしなくてはなりません。

そんな訳で、この時はオンラインホワイトボード(Mural)のツールを使い、議論のテーマについて市民が直接意見や感想や質問を自由に付箋を貼っていくという、とてもシンプルなワークを設計してみました。これならツールだけあれば、誰でも実施することができます。

また、こういったツールがはじめての参加者のために、事前に使い方や練習の場を案内し、さらに開始直前にも練習のセッションを設けました。

<②議論するテーマの選定~参加者が「建設的な発言ができる」テーマに
今回はシンプルに、議論のテーマを予め3つ決めて(千葉県の強み、これからの教育、感じている行政の無駄)、ホワイトボード上に付箋を貼るスペースを用意しました。参加者はテーマについて熊谷氏が話すのを聞きながら自分が感じたことやアイデア、意見を書いていきます。

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ご覧のとおり大量の、それも苦情ではないポジティブで建設的な意見がたくさん出ました。ただの偶然ではなく、こうなるようにテーマのピックアップ、提示の順番、テーマの文言ひとつにいたるまで、慎重に決めているのです。

<③進行・ファシリテーション・サポート~
出てきた発言をきちんと受け止める
また、熊谷氏が一方的にしゃべるだけではなく時々付箋に目をやり、熊谷氏自身が付箋をピックアップしてそれに受け答えしたり賛同したりします。これは、参加者が自分の意見が承認されたと感じられるとても重要な要素で、発言と参加のモチベーションを高めるものです。この反応に呼応してまた付箋が貼られ、みなさんの付箋がどんどん増えていきました。

また、熊谷氏は多忙で打ち合わせを重ねる余裕はないので、地方行政や市民の現状に精通したモデレーター(主催者であった近藤美保流山市議会議員)をたて、十分に打ち合わせをしたので、市民からの想定される発言や、出てきた発言のフォローなども先回りして対応して頂くことができ、短い時間の駆け足のイベントでしたが進行も非常にスムーズでした。

交流会の直後の振り返りで、熊谷氏からも「これは本当に良い!」と感激の言葉をいただき、その後熊谷氏の事務所でもこのホワイトボードツール(Mural)の使用を開始されたようです。

オンラインワークによる、市民対話の新しい形。これまでにない意見や、新しい市民の層が加わることにも一役買いそうです。

では最後に「市民対話の場のデザインと合意形成」の今回のポイントを振り返ります。
(1)その「場」を何のために持つのか(目的)にあわせてすべてをデザインする
(2)発言を『可視化』&『ルール化』して議論の偏りやまとまらなくなるのを防ぐ
(3)ツールやワークはあくまで手段。みんなが意見交換を楽しめる共創を目指した場づくりを!
(4)スムーズな進行と目的達成のために必要な要素(ファシリテーション、サポート)を準備

尚、オンラインの対話の場づくりについては以下のようなイベント(無料)もあるので、ご興味ある方は参加してみてください。
2021/6/9 13時~14時:オンラインイベント「対話の量と質の向上につながる企画・ツール選定のポイントとは?】オンラインにおける場づくりの可能性と価値」
https://hackcamp-onlineevent.peatix.com/

また、前回の”ありたい姿を描くための対話”で出てきたキーワード「バックキャスティング」についても開催しますので、ご興味ある方は是非。
2021/6/9 18時~19時半:成功事例から紐解くバックキャスティングをビジネスで活用するヒント
https://backcastinglab.peatix.com/view

<おまけ>
ホワイトボードツールにこのようにイベントの表紙をおいておくと全体としてまとまりがよく、参加者の視点もコントロールしやすくなります。
告知用イベントサイトや関連資料でも使えるタイトルイメージを作っておくといろいろ使えて便利ですよ!画像作成には、人気のウェブサービスCanvaが無料から使えておすすめです。

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