12_春の夜湯 -永石温泉(別府)-
うららかな春の日、ひと足早く大学の友人たちが卒業した。久々に会う顔ぶれはたくましくてかっこよかった。えんじ色のガウンと角帽がよく似合う。
食事を楽しみ、夜もふけ、ひとりの時間になった。今日は帰り道にどこかの温泉に行こうと決めていた。海岸沿いの10号線から永石通りに入る。すぐ左手に湯屋が見えた。半分ほど開いた窓から湯気がこぼれる。今日の気分はここではない。次の機会に–、と声を漏らして素通りした。この辺りは街灯も少なく、夜に一人で歩くにはちょっぴり怖い。音楽を聞いて気分を