孤燈一穂
月をばらばらにした破片が
突きささる月刺さり
尽き笹る
小暗い森林には孤燈一穂の破片が
苔むした岩に差し込まれて
橙黒く
傍らでねむるこぎつね
小さな灯りは穂波のように末広がり
葉末を揺らしてしまう
小さな灯りはどこまでも内に向かって
灯りは明かりに逆らうように
どこまでも小暗く光るのである
傍らでねむるこぎつねは
うずくまり小刻みに震えて
黒く落とした陰影の中で
明かりを恐れている
こぎつねは灯りの下で
混色した微熱の吐息をもらしながら
夢という夢に追いすがられ
葉陰からのぞく群青の空を甘んじるように
抱きすくめてねむる
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