彼はうつろう季節の中で
彼はひどく咳き込んで
正体なんてものを火に焼べちまって
黒々とした 灰となった骨を拾い集める
彼はひどい薄情もんで
舐めた飴を手のひらに出しちまって
それから僕をちらとみてまた口に含む
彼はうらぶれた廃屋を見ては
住処だすみかとひとりごちて
朽ちてしまった板戸を軽く蹴り飛ばす
彼は胡乱な叫びをあげる
酒瓶で僕を殴って
破片がとてもきれいだと震える
彼は木の葉の敷き道を歩きながら
しきりに緑の葉を探していやがる
あたりには黄や赤しかないから
緑なんてものはもう移ろっちまったんだなと
きせつの節々が傷む暗室の中で
その年もまた同じ事をつぶやいた
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