雪駄を履いた狐狸
もう抜き差しならぬとこまで
来たんじゃからな
社の隅にしゃがんだ少女
障子窓
風に吹き押し、がたしぴと
おお寒い
紫紺の護符をしかと握って
脚絆の隙に狐狸がのぞく
霜枯れ時の宵の果てに
細い笛の音
月は曇
少女はしくしく泣きながら
袖に火垂るのなみだを当てる
狐狸がぬっと顔を出して
勘繰りそうに少女を眺め
膝をぺろぺろ
ああ
あたしを分かってくれるのは
あなだけだわ
かっと、火の塗れて閃光
肌に霧を纏い
さむい、あたたかい
忽ち少女は毛むくじゃら
あれよあれよと狐狸が二匹になった
片方の狐狸は雪駄を履いて這い這い
とぼとぼと社の木立に入る
木立から
こぉん、こぉん
と鳴き声、笛の音と重なって
あないみじや