【LAA】ジオリトとロペス獲得のトレードを考える
こんにちは、エンゼルス担当のKengelsです。
ここ数日、目まぐるしく動きがありましたね!
大谷選手のトレードはなく、エンゼルスが買い手としてプレーオフを目指すという報道がなされ、エンゼルスが早速補強を敢行しました!
エドガー・クエロとカイ・ブッシュを放出し、ルーカス・ジオリトとレイノルド・ロペスを獲得しました。
このトレードや各選手に関して、トナカイさんがまとめてくださっているのでぜひこちらからご参照ください!
今回僕は、このトレードをすべきだったといえるのか、その是非について特にフォーカスを当ててじっくり考えてみようと思います。
オーバーペイ?
前提として、獲得した2人はいい投手だと思います。
ジオリトは、エース級だった以前からすると成績を落としており懸念も見えるものの、まだ安定した成績ですし、21先発121.0回(メジャー21位)とイニングを多く投げてくれるのも大きいです。後述の通り獲得可能な先発の選択肢に限りがあったなかで、十分な補強といえそうです。
ロペスは、今季の成績は昨季の好成績(防御率2.76など)からは見劣りしますが、与四球は増えたものの依然として投げている球は高水準で、春先は不調でしたが5月以降は防御率2点台です。最近打たれることが増えているブルペンで大きな戦力となりそうです。
一方で、対価のいるトレードとして見てみると、対価としてクエロとブッシュの2人を出したことに対して、オーバーペイ(対価が多すぎる、出しすぎ)との声も多く上がっています。
個人的にもオーバーペイかなと思います。
ジオリトもロペスもかなり好成績だったのは去年以前で、今年は飛び抜けて好成績というわけではないです。ジオリトらが今後思ったほど成績を残せない可能性はあります。一方のクエロとブッシュは、将来メジャーでの活躍も期待されるプロスペクトです(参考程度ながら、エンゼルスの傘下ではそれぞれ2位と3位の評価でした)。
では、やらないべきだった?
しかし、それではやるべきではなかったかと言われると、そうは思いません。「オーバーペイかなとは思う一方で、それでもすべきトレードだったのではないか」と思っています。
ここからはその理由を4つ挙げていきますので、順に見ていきましょう!
①前提となる今年の市場
昨年からのワイルドカード枠拡大や、今年は不調のチームにコンテンダーが多い(=不調でもまだ勝負を諦めていない)のも影響して、今季は売り手が少なく、また売り手なのか買い手なのかまだはっきりしていないチームも少なくありません。
それらもあって、トレードの俎上に乗っていて、かつ成績を残している先発が当時の時点で多くなかったといえそうです。
ジオリト以外の有力な候補というと、カージナルスのモンゴメリーあたりでしょうか。例えばホワイトソックスのリンはもっと成績が悪いですし、ストローマンの在籍するカブスは買い手ムードです。
メッツのバーランダーとシャーザーは複数年契約かつ年俸が高額なうえトレード拒否条項も付いています。
メッツとしては年俸を負担する代わりにプロスペクトの大きな上乗せを要求するかたちとなります。少し変化球と言いますか、敢行できるチームはそこまで多くありません(ちなみにエンゼルスには恐らく無理でしたし、そもそもメッツには元MLBプロスペクトランキング1位の捕手アルバレスがいます)。
パドレスのスネルらもトレードされる可能性がありそうですが、まだ売り手と確実に決まっていたわけではありません。
もちろん選択肢が少なければ需要と供給のバランスが取れにくいので、対価は高まりやすくなります。
②エンゼルスのチーム状況
これは大きいと思います。
エンゼルスは今季に賭けて勝負する方針を固めましたが、エンゼルスは当時プレーオフ進出枠から4ゲームも遠ざかっていました。その状況からライバルたちを上回るには大きな補強が必要で、なりふり構っていられない状況だったといえます。
そして、先発投手はエンゼルスの弱点でした。
大谷、デトマーズ、サンドバル、キャニングは程度の差はあれ成績を残しているものの、アンダーソンは今季防御率5.23と不安定で、シルセスは自信を持ってローテに据えるにはもう少し経験が必要そうです。そのため、追い上げを狙うには先発1枚の補強は必須でした。先発の確保に失敗する事態は避けなければならなかったわけです。
当然トレードは他球団との競合によるものですし、エンゼルスが確実にジオリトを確保するにはオーバーペイもやむを得なかったと思います。
③2日後に迫っていたブルージェイズ戦
デッドラインより数日も早いトレードとなりましたが、これでトレードの対価は釣り上がったと思います。ホワイトソックスからしたらもっと先まで待ってもいいなかで、すぐ出すという決断をしてもらう必要がありました。
そして、エンゼルスが対価を高めてでも早めに獲得したのには、日本時間7/29からのブルージェイズ戦に勝つためというのが大きいと思います。
ブルージェイズはプレーオフ進出の最後の枠であるワイルドカード3枠目におり、追うエンゼルスは4ゲーム差の位置にいました(執筆時点は3ゲーム差)。その直接対決は非常に重要になります。
8月のスケジュールが厳しいのもあり、この直接対決で1勝でも多く勝つことは非常に重要です。もしジオリトの補強がなければ、ブルージェイズ3連戦には不安のあるシルセスとアンダーソンの両方が先発することになっていたはずで、シルセスからのアップグレードという面でも意味があったといえそうです(→※1)。
④放出した対価
クエロとブッシュという対価は確かに多かったと思う一方で、両選手はエンゼルスの将来的な構想の核となるほどではないと思います。もちろんメジャーで活躍する可能性もある選手たちなので惜しいですが。
1人目のクエロはMLBのプロスペクトランキングTOP100に入る活躍をしていました。20歳で将来有望な捕手です。
ただし、エンゼルスには将来にわたり正捕手を担うことが期待されるオホッピーがいます。そのためエンゼルスが正捕手としてクエロを置ける確率は高くありません。
2人目のブッシュは魅力的な投手ですが、将来メジャーでは先発4-5番手候補だと評価する有識者が多いです。傘下3位というとかなり高そうに思えますが、早期昇格や過去の即戦力補強のためのトレードもあってエンゼルスの傘下自体が元々薄いので、3位という見た目ほどは痛い出血ではないと思っています。
まとめ
本noteのここまでをまとめると、
「エンゼルスは今季なんとしても勝負するために弱点である先発を確実に確保する必要があったので、オーバーペイでもなりふり構わず敢行するべきだった。
また、ブルージェイズ戦がとりわけ重要なので、早めに戦力を確保する必要もあった。
一方、今の市場を考えれば対価が高騰するのも仕方がなさそうだし、出した選手2人も致命的な痛手というわけではないので大丈夫」
となりそうです。
もちろん他の考え方もあるでしょう。もし今後の先発トレードの対価が思ったほど高くなければ、やはり出しすぎだったかということにはなりそうです。
傘下2位と3位という貴重なトレードチップを使ってしまったのは今後の補強にも影響しうるでしょう。
ただそれでもやはり、インパクトのある先発とリリーフを確保できたトレードとして意味があったといえそうです。
ジオリトらが成績を残せず結果的に失敗に終わる可能性もありますが、それは実際に起きてみないとわからないですね。
最後に
トレードに賛成する立場で、ここまでこのnoteを書いてきました。
とはいえ、それは「エンゼルスが今季なんとしても勝負するため買い手にまわる」という前提を肯定した場合のものですよね。②でも触れた通りです。
「そもそもエンゼルスは今季切り詰めながら勝負すべきでなかった」という場合には全てが崩れます。
そもそも今季エンゼルスが買い手になったのはどうなのか?大谷選手含めトレードして、プロスペクトを得て来季以降に勝負するべきだったのではないか?
このあたりについては、後日またnoteで検討していきたいと思います。
最後になりましたが、ジオリトとロペスが好成績を残す展開も十分あると思っているので、今はただ、彼らがエンゼルスをプレーオフへと押し上げてくれることを願います!
それではまた。