回れ右
弟子「私の話では、全然理解してくれないんですよ」
師匠「突然なに???」
弟子「僕がいくら大丈夫ですよって言ったところで、そうはいうけどさって言われちゃうんです」
師匠「そうだね」
弟子「まだ弟子だからですかね?体験はするしかないからですか?納得させられない…体験は伝えられないんですか?」
師匠「なにかを変えようとしてる?」
弟子「え?」
師匠「イタチごっこだよねw」
弟子「イタチごっこ……」
師匠「イタチごっこが悪いとかじゃないけど」
弟子「……やりたいことがあるのか…」
師匠「すでにやってんだから、止められないよね」
別の日…
弟子「苦しんでいる人を救いたいんです!」
師匠「どうして?」
弟子「え?自分がそうだったんで」
師匠「真に苦しんでいる人はいないよ」
弟子「いや、苦しんでますよ!薄情ですね!また例の、みんなすでに救われているってヤツですか?」
師匠「いろいろあるけどさぁ、どれを言っても聞こえない時は聞こえないよね」
弟子「どちら側の問題ですか?」
師匠「苦しみを止める方法を教えても、苦しみたい時は苦しむから」
弟子「???なんか、バカにしてます?」
師匠「全然、バカにしてないよ」
弟子「苦しんでいる最中にそれ聞くと、無性に腹が立ちます!」
師匠「そうでしょうね。それでこそ、じゃない?」
ある日…
弟子「新庄くんところのお師匠さんが、世界中の人が輝ける場にしたいって言ってました。すばらしいですよね」
師匠「素晴らしいね」
弟子「新庄くん、いいお師匠さんに付けて幸せだって言ってました。立派なお師匠さんですよね」
師匠「そうだね(くるぞ、くるぞ…)」
弟子「ところで、マスターはどんな世界を目指すんですか?」
師匠「(キターーー)このままでいいけど…」
弟子「はぁ?何言ってんだ、コラ!このままで良いわけないだろっ」
師匠「世界中の人が輝けるって、それみたことあるの?」
弟子「ん?」
師匠「世界中の人が輝いているのを見たことがあって、またはこれこそが、世界中の人が輝いているを表す図?なのか絵?があって、それを知ってるってこと?」
弟子「は?そんな小難しいこと言わなくて良いんですよ。みんなが笑っていれば良いんです。みんなが個性発揮できて、抑圧されることなく、自分らしく生きていれば、それが輝きで、世界平和です」
師匠「今は違うと?」
弟子「どう考えても、違うでしょうに」
師匠「知ってんだ」
弟子「違うっぽいことだけはわかります」
師匠「じゃあ、どこから直していくの?」
弟子「大変ですよね、だから新庄くんところのお師匠さんは偉大だって言ってんですよ」
師匠「偉大ねぇ…傲慢だと思うけど」
弟子「おいっ!あんたよりマシだろ」
師匠「それ!それだよ」
弟子「は?」
師匠「輝いてない?」
あの日…
弟子「より良くなりたいって、幸せになりたいって思っちゃダメなんですか?」
師匠「ダメって言われたくて言ってんの?
弟子「いえ、いいよって言ってほしいです」
師匠「ですよね〜。いいよ」
弟子「苦しみから逃れたいってダメなんですか?」
師匠「いいよ」
弟子「でも、逃れられないんです!」
師匠「もうさ、自分の許可待ちじゃない?w」
弟子「許可出せないんです!」
師匠「なんかさぁ、苦しむことをバカにしてない?」
弟子「仰る意味がわかりませーん」
師匠「まだ苦しんじゃう自分って情けないとか、苦しまない人になりたい、とか苦しむのはダサいとか、苦しみながらも苦しまない方法があるとか思ってない?」
弟子「思います!」
師匠「苦しむ時は、誰でもガッツリ苦しんでも大丈夫って話なんだけど、それを受け入れないよね」
弟子「と、いいますと?」
師匠「苦しみたくないってのは、苦しみ拒否だよね?苦しんでも、苦しんでも、また与えられるから大丈夫だよ」
弟子「えーーー!また苦しみを与えられるんですか?!いやです!」
師匠「ほらね」
いつもの日
弟子「船越さんところの師匠は、話がわかりやすい!たとえ話もうまいし」
師匠「例え話ってハマると気持ちいいよね」
弟子「そうなんですよ!納得できて、思わずそうそう!とか言っちゃって」
師匠「楽しいよね」
弟子「そうなんです。でも、わかっちゃいるけど、なところもあるんですよね」
師匠「わかっちゃいるけど、ねぇ」
弟子「例え話は聞くと納得もできるし、面白いんですけど、例えでしかないから、僕の場合はどう?って思わずききたくなっちゃうんですよね」
師匠「なんだそれ」
弟子「その例えはわかった、ではこの場合はどう?僕の場合はどう?こうなった場合はどう?って」
師匠「すでに例えでもなんでもないじゃんw」
弟子「そうなんですよ。納得したはずなんですけどね…」
師匠「例え話のお題提供して、なんになるの?w」
弟子「例えってなんですかね?」
師匠「ひとつ聞いたら、それで十分なものじゃない?」
弟子「は?なんで?」
師匠「だって、それではないから」
弟子「意味わかんなすぎて、ムカつきます。例えて言ってもらっていいですか?」
師匠「幸せってなんですか?って聞かれて、ふわぁ〜って体が軽いような感じのものって言ったら、例えばなんですか?って聞かれて、例えば美味しいご飯を食べたときのようなって言うと、あーってなる。でも、それは例えでしかないから、その以外の時でも感じるかもしれないし、それを感じない時でも幸せはあるから、あくまでも例えであって、それ自体ではないよね。では、こういう言う時は幸せに該当しますか?この場合は?この例えだとどうですか?はいはい、それなら納得ですけど、この場合は?なんて…どこまで例えを聞くの?誰の正解探し?例えだからさ、あくまで。数揃えても意味ないじゃん。そして、それは例えだから、それではないってことじゃん」
弟子「それは例えだから、それではない、ってところがわかんない」
師匠「例えが正解だったら、実物はなんなの?」
弟子「は?軽くパニック!何言ってんの??」
師匠「言葉を当てはめること自体が、すでに例えなんだよ?」
弟子「感覚のこと言ってます?」
師匠「まぁ、それでもいいけど」
弟子「幸せは、あくまで感覚だから、言葉を尽くしても例えを尽くしても、それにはならないと?」
師匠「定義はないよね?」
弟子「定義…」
師匠「これ以外は幸せとはしません!なんて、ないよね?」
弟子「ない…ですけど…共通したものはると思ってるんですけど…」
師匠「それを探す前に、信頼したら?」
最後の日
弟子「いつ、この苦しみは終わりますか?」
師匠「そんなに苦しんでたの?!」
弟子「もっとシンプルに生きられると思ってんですよ」
師匠「複雑そうだね…」
弟子「いつになったら幸せになれるのか…」
師匠「なぜ、今ならないの?」
弟子「今なれたら苦労はしないですよ」
師匠「理想の幸せは今にはないからね」
弟子「そうなんですよ…よくご存知で」
師匠「今の幸せなら今ありますけどね」
弟子「今の幸せは大したことないので、ぜひ理想の幸せに近づきたいです!」
師匠「どうやって近づけるの?」
弟子「いや、こっちが聞きたい!」
師匠「どうして、今ある幸せは大したことないって思うの?」
弟子「こんなもんじゃないんですよ、もっとこう…お金があって、モテて、頭も良くて…スタイルも良くて、理想があるんです」
師匠「それは、今ないよね」
弟子「ハッキリ言いますね!だから苦しんでるんじゃないですか」
師匠「今ないものを探して、苦しんで、幸せになりたいって、忙しいね」
弟子「ちなみに、今ある幸せってのはなんですか?」
師匠「理想の幸せを捨てたもの」