学校給食と食育
「今時、嫌いな食べ物まで食べさせる給食なんて流行りじゃない。」
と、学校現場で働いているときによく言われた。掃除の時間になっても、食べ終わるまで食べさせることはよくない。
私も小学校の時は、パンが苦手で、食べきれずに家に持ち帰っていた。今では持ち帰りは禁止されているので、子どもたちはこっそり机の中に隠したり、口に入れてトイレへ行ったりと、苦手な食べ物が給食に出た時は、色々と苦戦している。だからこちらも、給食の時にトイレに行く場合は、口の中に何も入っていないか確認する。
何なんだ?この今も昔も変わらない、子どもと先生との間で繰り広げられる、給食の戦いのようなものは。
「給食が嫌だった。苦痛だった。」
と、大人になってから何人もに話を聞いたことがある。そりゃそうだ。子どもvs先生のこんな戦いの中で、給食がトラウマになっても仕方がない。
フィンランドの給食
時間帯は学校によって少し異なるそうだが、10時半〜12時半の間がランチタイム。食堂があり、各学年ごとに時間をずらして食べに来る。ビュッフェスタイル。私は6年生の子どもたちと一緒に来た。子どもたちは慣れたもの。パンを取って、野菜を取って、マッシュポテト、牛乳。
自分の食べたいものを、食べたい分だけ。
席も決まっておらず、友達と座ったり、一人だったりと、自由に食べていた。聞いたところ、食べ残す子どもはいないそう。食べ終わった後に、おかわりをする子どももいた。それでも、給食が苦手な子どももいるそう。
でも、日本もこんなスタイルだったら、子どもと先生の戦いのような給食も、「給食が嫌いだった。」と言う大人も、減るのではないか。
初めてパンを全部食べられるようになった子。
去年、1年生の担任をしていた私は、給食指導に四苦八苦だった。毎日泣きながら給食を食べる子や、「もぐもぐ、もぐもぐ」と目の前で言わないと口を動かさない子がいた。
毎日泣きながら食べる子の一人で、パンを半分しか食べられない子がいた。その半分ですら、泣いて食べていた。無理をさせるつもりはなかったが、がんばり屋の彼は、いつも諦めずに最後まで食べていた。
その彼がついに、2月の終わり頃、パンを1本完食したのだ。
クラスのみんなが喜んだ。
彼の自信にも繋がった。
それからは時間内に食べ終えることができている。
他にも、トマトを食べられるようになった子も入れば、苦手だったけど好きになったという子もたくさんいる。
学校給食と食育について考える
子どもたちは、食べることや食べ物に興味をもったり、給食の中で季節を味わったり、食べる楽しさを知っていく。栄養についても考え、作ってくれた調理員さんや、生産者さんにも感謝をもつ。
栄養の偏りやバランスまで考えることは難しいし、アレルギーの問題も最近では重要。
日本のスタイルが悪くて、フィンランドのスタイルが良いとは私は思わない。その逆も然り。
「いただきます。」「ごちそうさま。」
みんなで揃って、手を合わせる。箸を使って、丁寧に食べる。「行儀よく」と言ってしまえば、堅苦しくて嫌だが、これは日本の文化として美しいと私は感じる。
食べることは、楽しいこと。
食べることは、嬉しいこと。
食べることは、素晴らしいこと。
食べたもので、自分の体はできているんだから。