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「標準語」と「共通語」の違い。日本語の標準語とは?中国語の普通話は標準語?

就職で上京したわたし。「先輩や同期に方言を笑われたことがきっかけで標準語にしました」と何も考えず言ってきました。この言葉に違和感を持つかたもいらっしゃると最近知りました。

「標準語」と「共通語」

日常的には「方言」の対義語として「標準語」を使っている人が多いと思いますが、「標準語」のほかに「共通語」という言葉があります。

実は、現在、日本語には「標準語」と言われるものはなく、「共通語」があるとされています。「共通語」とは、全国どこでも通じることばで、東京語に近いが必ずしも一致しないものです。
日常会話では「標準語」のほうがまだまだ浸透していますが、言語学者のかたやNHK放送文化研究所、文化庁の国語調査でも「共通語」が使われています。

「標準語」の歴史は浅く短い

日本には、もともと「標準語」という決まったものはなく、そのときどきとして、理想的な言葉は移り変わっていきました。
明治時代に、日本全国の言語の統一を図ろうと「標準語」が定められました。定義は下記の通り、「標準語は東京語を母体にして、理想的に磨き上げられた言語」というところです。そもそも、標準語=東京の言葉、ではなかったのですね。

標準語は「【意味】東京語を母胎にして作られ現実に全国で使われている共通語を、音韻・語彙・語法などあらゆる点についてさらに理想的に磨きあげた言語。(中略)」


①佐藤喜代治編『国語学研究事典』 明治書院,1982,27,1007p. 参照はp.389-391.

標準語が理想的な言葉として浸透していくと、理想的なもの以外は排除する動きが出てきます。それが、方言撲滅論、つまり方言の矯正です。
明治時代、鹿児島県で厳しい方言矯正が行われた、という記録が残っています(前田達郎、『日本語・日本学研究』第3号、2013年、東京外国語大学国際日本研究センター)。おそらく、方言矯正は鹿児島県に限ったことではなかったでしょうから、「方言は恥ずかしい」「直すべきもの」という考えが広まっていったことは容易にうかがえます。行き過ぎた方言矯正の結果なのかはわかりませんが、地域方言は消滅する方向に進んでいます。

戦後,教育の分野では、理想的とされた「標準語」に代わって日本全国で通じる「共通語」が目標とされるようになりました。現在、学習指導要領でも「共通語と方言の共生」が方向性として定められています。

中国語の普通話は「標準語」か「共通語」か

お隣の国、中国でも「普通話」という言葉が定められています。さて、この「普通話」。日本語の「標準語」と「共通語」どちらの概念に近いのでしょうか?
中国大陸は国土も広く、他民族国家であり、方言も多様性に富みます。このため、中国全国で共通の言葉を決める必要があり、発音、語い、文法の3つについて基準を定めました。

発音 北京語の発音を標準
語い 北方方言を基礎
文法 代表的な現代口語文を規範

つまりベースは北京語や北京方言ですが、北京語=普通話ではないのです。日本の「標準語」や「共通語」が東京方言ではないのと似ています。
中国語では、日本語の「基準」が「标准*(日本語の字で書くと標準)」となりますので、漢字に影響され、「普通話」は「標準語」となっている日本語の中国語関連サイトも多いです。
「普通話」の目的が中国全土で通じる共通の言葉だと考えると、中国語の「普通話」は「標準語」ではなく、「共通語」の概念に近いのかもしれません。

私が教える中国語発音は「北京語」ではなく「普通話」です

外国人学習者が「普通話」を勉強する必要があるのは、中国どこでも通じるから。「中国人は方言を話しているじゃないか!」「普通話はあまり話してない!」と言っても、中国語学習者としては中国全土で通じる「普通話」をマスターし、「通じる」発音を身につけるのが近道。方言を身につけるのは、それからでも遅くないと思っています。(※台湾の場合は「普通話」とは異なる「共通語」があります)

もし、台湾華語を習いたい!という方がいらっしゃたら、素敵な先生を紹介しますのでお気軽にコメントくださいね!

参考にしたサイト

https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h22_chosa_kekka.pdf


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