[日刊]無風のCPIを受けて日銀物価見通しは2.6%前後へ上方修正と予想、ドル円はロングのチャンス
Bloombergの伊藤純夫記者、藤岡徹記者が「事情に詳しい複数の関係者への取材で」日銀は現時点でYCCの副作用に緊急に対応する必要性は貧しいとみていると報じた。
この報道でYCC修正観測がさらに後退し、円売り圧力が高まった。記事執筆時点でドル円は141.75円となっている。
ちょうど昨日の日刊レポートで下記のように日銀の動きについて予想していた。
同じような内容の報道が出てきたわけだが、日銀のこれまでの資料と植田総裁、内田副総裁の発言の原文や元動画をしっかりと見ていれば、このような予想になるのは自然だ。
なぜか数週間前から日経新聞の内田副総裁へのインタビュー内容が「YCC修正の可能性を否定しなかった」という理由でYCC修正観測が強まったという報道が各社から多く配信されていたが、どう読んでもそのような発言とは捉えられないインタビュー内容だったため、困惑されていた方も多いと思う。
そうした報道が増え、YCC修正観測が変に強まったこともあり、植田総裁がG20後に緩和政策の維持をチラつかせる発言をしたとも思える。
さて、報道では事情に詳しい複数の関係者が私と同じくYCCを急いで修正する必要性が薄れていると感じているわけだが、記事を鵜呑みにするのは危険だ。
この一文を再掲しよう。
6月の全国消費者物価指数は予想通り
7月にYCCを修正する必要が生じるのであれば、残される可能性はこの指標、21日に発表された全国消費者物価指数(CPI)の大幅な上昇だった。
しかし結果は市場予想通りとなった。
生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比+3.3%、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは+4.2%だった。物価目標の2%は越えているが、帰属家賃を除いたサービスが+2.3%となっており、全体的には先行きが読めない点が多い。
市場予想通りという点では無風といえる結果だった。
気になるのはこのCPIを受けて日銀が来週発表する物価の見通しがどうなるかだろう。CPI発表前に内閣府が公表した年央試算を参考に、昨日時点では下記のように予想した。
・2023年度 生鮮食品除く消費者物価指数:2.4%~2.8%
・2024年度 生鮮食品除く消費者物価指数:1.7%~2.1%
そして、本日発表された6月のCPIを受けても特に違和感のない数字となっているかと思う。年初に想定していたような物価の落ち着きは見られないが、このまま3%台で年末まで推移するとも思えない。
やはり内閣府の見通しとそれほど乖離せず、上記の範囲内に上方修正する形となると予想を据え置いておく。
ドル円の短期的な目論見
少し話がそれてしまうし、普段為替取引についてはあまり言及しないのだが、今日は私の知見が貯まっているYCC修正動向によってドル円が乱高下している状況なので少し意見を書いておきたい。
結論から言うと、短期的にはドル円をロングしたいところだ。
なぜかというと、仮に私の予想が全てドンピシャで当たり、7月の日銀会合でYCC修正がないことを前提にした上で、もうひとつのドル高円安要因を検討しよう。米国の動向だ。
7月のFOMC会合後はおそらくかなりのタカ派
来週開催の7月FOMC会合での0.25ポイントの利上げは織り込まれており、これが変わることはまずないだろう。
問題は次の会合以降でもう一回利上げされるかどうかだ。今は16%程度しか9月のFOMC会合での利上げを織り込んでいないのだが、正直これは低すぎる。私の予想では、今の市況の雰囲気では、ほぼ確実に7月の会合でパウエルFRB議長はかなりタカ派寄り発言をして牽制することになる。
そして、それを受けて一時的にまた米国債の利回りが上昇し、ドル高も進む。
YCC修正の見送り、7月FOMC会合でパウエル議長のタカ派発言、この2つのイベントを考えるとドル高、円安にかけるポジションが妥当だろう。
いずれにせよ、来週は今後の株式市場、為替相場を占う上でも重要なイベントが控えているので週末に各イベントの参考資料となるものに目を通しておくと良いだろう。
私はハリーポッタースタジオ・ツアーへ行くため、土曜日は全く作業ができない。日曜日に猛烈に頑張るつもりだ。
ニュースメモ
各見出しに記事へのリンク有。見出しの下の文章は全てリンク先記事からの引用です。
日銀、日本CPI関連
日銀YCC政策、今月修正なら「かなりのサプライズ」-古沢元財務官
元財務官の古沢満宏氏(三井住友銀行国際金融研究所理事長)は、金融政策でハト派姿勢を印象づけた日本銀行の植田和男総裁の最近の発言を踏まえ、今月の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の修正はないとみている。
調査は11〜14日に実施した。
日銀7月会合「長短金利操作の修正」予想は3割 市場調査
金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」26人を対象に日経QUICKニュースがアンケート調査を実施したところ、7月会合で政策の修正が決まるとの予想は全体の3割となった。
ドルは140円回復、労働市場堅調で米金利高-日銀会合控えCPI注目
米国で新規失業保険申請件数が予想外に減少し、底堅い労働市場を背景とした利上げ継続観測から金利が上昇したため、ドル買いが進んだ。
日本銀行の金融政策決定会合を来週に控え、政策修正観測の後退が円の押し下げに働く中、この日発表される6月の消費者物価指数(CPI)も注目される。
6月の全国消費者物価は3.3%上昇に伸び拡大、市場予想通り
6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比3.3%上昇と、前月の3.2%上昇から伸びが拡大した。
生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは市場予想と同じ4.2%上昇と伸びが縮小した。伸び率が前月を下回るのは2022年1月以来。
消費者物価指数、6月3.3%上昇 2ヵ月ぶり伸び率拡大
6月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105.0となり、前年同月比で3.3%上昇した。伸び率は2カ月ぶりに拡大した。電気代の値上げが押し上げ、食品高も続いている。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の3.3%と同じだった。プラスは22カ月連続。日銀の物価目標である2%を上回る状況が続く。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は4.2%上がった。伸び率は5月から0.1ポイント縮小した。指数の伸びが前月を下回ったのは22年1月以来17カ月ぶりとなる。
総務省は政府の電気・ガス料金の抑制策と観光支援策「全国旅行支援」がともになければ、生鮮食品を除く総合が4.4%上昇だったと試算した。
物価上昇率、米逆転も賃金伸び鈍く 日本6月3.3%に拡大
日本の6月の消費者物価をモノとサービスに分けると、生鮮食品を除くモノは4.9%プラスで2カ月ぶりに上昇幅が拡大した。生鮮食品を除く食料は9.2%のプラスで上昇率は横ばいで、全体のプラス幅の6割を占める。
サービスは持ち家を借家と見なして計算する「帰属家賃」を除くと2.3%プラスだった。7カ月ぶりに上昇率が鈍化した。
日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識-関係者
この記事の記事が話題になっている。
日本銀行は現時点でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の副作用に緊急に対応する必要性は乏しいとみている。今月に開く金融政決定会合では見直しの是非が議論の対象になり得るという。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
円が対ドルで141円台に下落、YCC修正の必要性乏しいとの報道で
上の報道を受けて円売り圧力が高まっている。
円急落「緊張感持って注視」 財務官、一時141円台
財務省の神田真人財務官は21日、円が急落したことについて「緊張感を持って注視をしている。過度な変動は望ましくないという観点からあらゆる手段を排除せずに検討する」と述べた。
午後6時20分ごろに財務省で記者団の取材に答えた。
米国
米中古住宅販売、6月は3.3%減の年換算416万戸-市場予想を下回る
6月の中古住宅販売件数は、季節調整済みで年換算416万戸に減少した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は420万戸だった。
中古住宅販売在庫は前月と変わらず108万戸で、6月としては過去最少となった。住宅ローン金利が2021年末時点と比べて2倍余りに上昇しているため、持ち家を売って買い換えるという選択肢を敬遠する人が多い。
中古住宅価格(季節調整前、中央値)は前年同月比で若干下落し、41万200ドル(約5700万円)と、1999年までさかのぼるデータで2番目の高さ
販売に対する在庫比率は3.1カ月。同比率は5カ月を下回ると在庫がタイトと見なされる。
6月に売れた住宅の76%は、市場に出てから1カ月未満で買い手が決まった。物件が市場に出ている平均期間は前月と変わらず18日。
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