小松崎茂の世界、未知なる世界…
#想像していなかった未来 …
クソガキだった私は、父や母の許しを得て、深夜にも関わらず、ブラウン管のテレビを食い入るように見ていた。何を見ていたかって?アポロ11号の月面着陸である。モノクロでミリ単位で“横筋ノイズ”が走っている画像。アームストロング船長が、着陸船から降りてくる。まるで、ダンスのステップをスローモーションで踏むかのように…。やがて月面に降り立つ。足元にフワッと粉塵が舞う。アームストロング船長をはじめとする三人の宇宙飛行士、ひとりはアメリカ国旗を持ち、全員がまるで“万歳”をしているような格好で、ダンスを繰り広げていた…。
翌日クソガキ四人が集まれば、あれが宇宙か?あんなにピョコタン、ピョコタンするのか?あれが無重力だよ。バーカ!果ては、あれ全部、作り物なんじゃね?なんぞと会話が繰り広げられたのだが、実際、後に製作されたアメリカ映画『カプリコン1』なんぞは作り物説を題材にしている。そして、クソガキ四人組が、美術の先生が出す課題より手本にしていた絵があった。
当時の私たちは名前を知らなかったが、『サンダーバード』を描いて見せたり、空想の乗り物をさもありなん形で描いてくる。何処か当時っぽく、今見ると現実にはあり得ないけどレトロ感漂う絵の虜に、当時の私たちはなっていたのだ。その絵を描いたのが、小松崎茂(1915-2001)。私たちが漫画にハマる前に、この画家の絵にのめりこんでいった。
その上、プラモデルの箱絵、そして、初の劇画『地球SOS』も描いている。もちろん、私たちの知る大人たちは、なんらかの戦争の影響を受けていた。小松崎茂も然りで、戦場劇画も描いている。ただ楽観的な未来だけではなく、“歴史は繰り返す”ことも描いている。空想科学から劇画、そして戦争の絵まで描き切った。私たちの世代が、再評価するべき画家ではないだろうか?
あの頃の想像していなかった未来は、戦争の記憶を頭の中に残しつつ、明日を創造したのが小松崎茂アートだったのではないのだろうか?
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