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0624の記憶:美空ひばり命日篇

昨日食べたご飯のことは覚えていないけれど、過去のことは割と記憶が鮮明だったりする。

高校生二年生の夏。
Readerの先生が、目の前に座っている生徒(この席のことをロイヤルボックスとみんな呼んでいた)に向けて発した虚無のセリフ。

小学6年生の秋。
中学受験の願書に担任のコメントが必要とのことで、母が朝から職員室に電話したことを知らず、お昼休みにいきなり担任から声を掛けられ、「受験のことは誰にも言ってないのに、なんで先生知っとるん?」と驚愕した際の脇汗。

そんな細かなことを覚えている後藤の脳内で、去る6月24日はどうにも死ぬまで忘れられない、美空ひばりの命日だ。

小学校3年生の梅雨時季。
校区でも一番端っこに住んでいたため、低学年の足だと40分ほどかかる登下校を繰り返していた後藤は、この時季になると、あるお店の軒下に燕の巣ができるのを毎年楽しみにしていた。

この年も、悪天候の風をBGMにしながら、負けじとピーピーぎゃあぎゃあ鳴きはじめる燕の雛が孵る時季になっていた。
お店のおじさんが「今年も卵を産みにきたばい」と教えてくれた。
毎日、朝と夕方、誰にも頼まれていないが、定点観測として友達と一緒に燕の夫婦の活動を立ち止まってウォッチする。
「あ、たぶんあれがお父さんやない?」
「でもなんか、飛びよる高さが低いね」
そして家に帰り、父に質問する。
「燕がうちらとぶつかるくらい低く飛びよったんやけど、なんで?目が悪いんかね」
「ばかたれ。台風がきよるときは低く飛ぶのが燕の習性たい」
頭の「ばかたれ」は日常茶飯事なのでスルーしつつ、娘・後藤はまだインターネットなき日常において、
「そうなん。じゃあ明日図書室で本探してみる」
と、翌日燕が載っている図鑑を図書室で借りたのであった。
(後藤家には様々な掟があるのだが、その筆頭にくるのが「人に聞いたことは忘れる。自分で調べろ」というものである)

翌日、燕が低く飛ぶと台風が近いというナレッジを友達に共有しつつ、朝の天気予報で「台風が近づいている」という情報でその整合性を確認し、卵が孵化するのを楽しみにしていた。

そして。
1989年、6月24日。
その日はまさに、台風が九州へ直撃せんとばかりのタイミングだった。
「明日学校休みになるやろか」
などと話しながら下校していた我々の目に、定点観測の燕スポットが近づいてきた。

そのときである。

先を歩いていた別の学年の子たちが、ぎゃあぎゃあ騒いでいる様子が見える。
「なんがあったーん?」
かけよった我々の目に飛び込んできたのは、お店の軒先から落下した、燕の巣。
おそらくであるが、強風で巣が煽られて落ちてしまったのだと思われた。

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Podcast「チノアソビ」では語れなかったことをつらつらと。リベラル・アーツを中心に置くことを意識しつつも、政治・経済・その他時事ニュー…

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