缶コーヒーコミュニティ
今日も暑い。
用事があって、房太郎さんを訪ねた。
夏休み中の双子の孫は、バナナアイスを頬張ってセミを追っかけていた。
自宅の軒先に、陶器のテーブルとイスが置いてあって、いつもそこがコミュニティの場となっている。
そして、きまって缶コーヒーを出してくれる。
いつも同じ銘柄だったのに、今日は違う缶コーヒーを出してくれた。
銘柄は違っても、微糖や無糖ではない、ミルクたっぷりな甘いコーヒーに変わりはなかった。
MUTSUZAWA JOURNAL 創刊号のテーマだった、軽トラについての取材が、房太郎さんとの出会いだった。
取材のお願いで電話をした時、概要を説明していたら、、、
「俺、何もしてねーよー」と。
どうも軽トラ云々の話から、警察からお小言の電話だと思ったらしい。
取材当日、そんな話から二人で大笑いした。
軒先に座ると、缶コーヒーを出してくれた。
缶コーヒーが大好きらしい。実に美味そうに飲む。
軽トラの話だけでは尽きず、町の話、昔の話、家族の話、人生の話、趣味の話、ちょっとエッチな話もしたかもしれない。
その取材がきっかけで、何かとお世話になっている。
ある農家さんを紹介してもらおうと、房太郎さんを訪ねた時のことだ。
田んぼで作業中だろうと、その田んぼの場所を教えてくれた。
見渡す限り田んぼが広がる。どの田んぼだろうと迷っていると、軽トラがやって来た。
房太郎さんだった。
迷っちゃいないかと、追っかけて来てくれた。
無事に農家さんを紹介してもらい挨拶していると、房太郎さんは缶コーヒーを3本持って来た。見ると、軽トラの荷台に箱ごと積んであるじゃないか。
畦道に腰掛けて、田植え真っ最中の田んぼを眺めながら、3人で話をした。
畦道には缶コーヒーがよく似合う。
今日は、ゴーヤとキュウリとナスをいただいた。
飲み干した缶を持って帰ろうとすると、
「缶は置いて行きな。そんなお客さんに迷惑かけらんねぇよ。」
きまってそう言う。
おもてなしの缶コーヒーから、房太郎さんのやさしさが垣間見える。
帰り際、その言葉がいつもほっとした気持ちにさせてくれる。