唯一売り手が命令できる場面
お客様は神様。
そんな言葉を生きているうちに聞き、いつの間にか知ることが出来る国日本。
現代ではデカくなりすぎた神様への対処として「カスハラ」という言葉ができ、従業員を守る方向にシフトしているが、それはそれとして丁寧な接客は美徳であり店の評価と直結するという考えは廃れていない。
丁寧な接客というのは綺麗な敬語を使い、笑顔を振りまき、お客様が困っていたら素早く対応することが一般的なのではないだろうか。
そんな売り手側が意識する丁寧さのひとつである敬語。
製品マニュアルにすら敬語が使われているが、唯一売り手側が敬語を使わなくても許されるシーンがある。
それは危険を周知する時。
例えば「混ぜるな危険」「さわるな!」「〇〇禁止」など。
敬語じゃないどころか結構きつい言い回しの時もあるが、筆者の経験上これに文句を言っている人を見たことがない。
一部の人間が騒ぎ立てるように、お客様に対して敬語を使わず強い語尾で指示しているのにだ。
これが人間だったらどうだろうか。
お客様が店にある熱い機械を触ろうとした時に従業員が「あつい!さわるな!」なんて言ったら、レビューには従業員の口が悪いと書かれかねない。
筆者はこのような指示語のものに苦情が来ない理由について、いくつか考察した。
1つ目の説は、クレームを入れるようなお客様はいちいち物に貼り付けてある注意書きなんて読まない説だ。
偏見だがこのようなお客様は、説明書や契約書をよく読まずにコールセンターなどに電話をかけてくるイメージがある。
従業員の一挙手一投足を見ることはできても、文字を読むのは面白くないのだろう。
だから製品に指示語シールが貼られていても、わざわざ読まないと言う説だ。
2つ目の説は、さすがに無機物に対してキレないというものだ。
まれに電子機器や出にくいボールペンなどにキレる人もいるが、無機物にキレたところでどうにもならないとわかっている人がほとんど。
それと同じでわざわざ指示語シールにキレたところで、敬語に治る訳では無いと把握しキレない。
または無機物がなんか言ってらぁという程度で、あまり気にしていないのではないのだろうか。
3つ目の説は、意外と敬語じゃなくてもいい派が大半という説。
正直敬語というのは長いし回りくどいしで、めんどくさいと感じている人も多いだろう。
試しに「あつい、さわるな」という文言を敬語にすると、「蛇口が大変熱くなります、お手を触れないようお願いいたします」というようになる。
正直こんなのが蛇口に書いてあっても絶対文字を小さく印刷しなければ収まらないし、読まない人も多くなる。
敬語を無くし簡潔にすることで、嫌でもパッと見で読んでしまう効力があるのが敬語では無い文章のメリットだ。
実際このレベルの敬語というのは日本独自の文化で、ほとんどの国はどんな関係性であろうと共通の言い回しをする。
それがネックなのだ。日本の文化として敬語が根付いている以上、別に敬語じゃなくても気にならない人が大多数でも世の中的には敬語を使わないのは失礼に当たるのだ。
よって内面では別に敬語を使わなくていいんだけどな…と思っている人が指示語シールを見ても、失礼だと感じないというわけだ。
ということで今回は売り手が敬語を使っていないけれど苦情が来ないケースと、その理由の考察を行った。
筆者的には敬語がない方が文章は読みやすいため、文面だけでも敬語文化が無くなって欲しい。
特にビジネスメール、回りくどすぎるので。