おてもとに見守られて
初めて建物の上の方の階にあって夜景が見える系のレストランに連れていってもらった。
サプライズで連れていかれたため、終始ビビり散らかしていた。
筆者は普段こういう場所に行く機会がない。
プライベートはもちろん、仕事などで誰かお偉いさんを接待するために連れていく機会などもない。
テーブルマナーも最低限しかわからないし、とにかく音を立ててマナーの悪いやつだと思われないようにしていた。
そんな分不相応な場所にも、庶民の心を助けるいくつかの光があった。
おてもととおしぼり、そして窓の下に見えるセブンイレブンとワインだ。
おてもとは日本人なら誰でも慣れ親しんだ割り箸であり、今までで親の顔よりも見ている。
使ってもいいですよくらいのスタンスで置いてあり実際に使うことは無かったが、カトラリーケースの中から覗いているおてもとには心をかなり救われた。
おしぼりも言わずもがな、どこの飲食店でも目にする慣れ親しんだ味方だ。
そしてセブンイレブン。今の時代どんな街にでもコンビニエンスストアは存在し、夜景の1部として溶け込んでいる。
目をこらせばそこに出入りする人達が見える。料理が運ばれてくるまでの間はセブンイレブンを眺めて人の出入りを観察するだけで、店内をキョロキョロ見渡して慣れてないことを晒す時間を減らせたと思う。
最後にワインは筆者が個人的に慣れ親しんでいるものだ。
個人的にコスパ良く酔えるなおかつ美味しいお酒というのはワインであり、度々家でも飲んでいる。
安いワインから数千円程度のちょっといいワインを飲むことで、特定の銘柄ではなくワインそのものに日常性を見いだせるようになっていた。
緊張が高まった際にワインを口にすると少しそれが緩和される気がした。単にアルコールの効果もあると思うが。
とりあえず筆者は多少挙動不審になりながらもこの4つのものに縋った。
交際者には余裕がなさそうだのなんだの言われたが、いい場所に行けば上品な人間になれるという訳ではなく庶民はどこまで行っても庶民的思考で感想を抱くのだと痛感した。
ちなみに料理はかなり美味しかった。作業をしながら片手で適当にご飯を食べることが多かったが、久しぶりにちゃんと味を感じようとゆっくり食べた。
せめてパスタを取り分けてかっこつけようとしたところ下手くそすぎて落としたりと、ほぼ身内相手だから許されるようなことも起こった。
交際者が少し余裕そうだったの相まって少し悔しい気持ちもあった。
次はテーブルマナーを完璧にして逆に交際者をこういう場所に連れて行って、様子を観察してやろうと思う。
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