もしかして、それって他の原因でも起きるんじゃない?(別の原因のロジックチェック)CLR連載⑦
こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。言葉で意思疎通するための「7つのCLR(※)」の、考え方と使い方についての連載7回目です。このシリーズは、TOC(制約理論)の知識の有無に関係なく、お仕事や日頃のコミュニケーションに役立つ内容なので、多くの方にお読みいただけたら嬉しいです。
はじめに
今回もレベル3のCLR=表現をより良くするためのCLRです。今回は「追加的な原因のCLR」を詳しく見ていきます。(CLRのレベルについて詳しく知りたい方は連載4回目をご覧ください)
※CLR(シーエルアール)とは…「Categories of Legitimate Reservations」という英語の略称で「言っていることが妥当で、筋が通っているかどうか」を検証するための7種類のチェックポイントのことです。
詳しくは連載1回目をご覧ください。
▼これまでの連載は、但田のマガジンからまとめてご覧いただけます。
CLR⑤追加的な原因についての懸念
( additional cause reservation )
その結果を引き起こす別の原因がないか?を確認する
CLRの5つめは「追加的な原因(additional cause)についての懸念」です。(※この記事では「追加的な原因のCLR」と略します)。
「追加的な原因のCLR」は、2つの要素の因果関係が語られた時に「その結果を引き起こす原因が、他にも無いか?」を確認するCLRです。
って、言葉だけで説明するとわかりにくいですよね…。ということで、図解します。
下図の例の左側では、タカシは1学期に20回も欠席をしたので、語学の単位を落とした、という因果関係が示されています。この、「欠席が多いと単位を落とす」という因果関係は成り立っていますが、その他にも「宿題を提出しない」ことによっても、「語学の単位を落とす」という結果が起こる、という2つの因果関係が、下図の右側で示されています。
このように、他の原因の見落としがないかをチェックするのが「追加的な原因のCLR」です。
なお、前回の「原因不十分のCLR」でご紹介した因果関係図では、「可燃物があり、かつ、酸素があり、かつ、熱源がある」という3つの原因が揃ってはじめて「火がつく」という関係でした。上の図は、そのように複数原因が揃ってはじめて成り立つ因果関係とは異なります。「欠席が多いこと」と「宿題を提出しない」ことの、どちらかひとつだけで、「単位を落とす」という結果が起きる、つまり、結果を引き起こすための、独立した原因が複数あるという因果関係を示しています。
(これが分かると一体何の役に立つのか?というところは後述します)
「追加的な原因のCLR」の質問の例:他の原因もある?
「追加的な原因のCLR」について相手に質問をする時の基本形は「その結果を引き起こす、他の原因もありますか?」や、「この原因がなくても結果は起きますか?」です。
(毎回くりかえしますが)この質問そのものを他人に使うのは、作成したロジックの記述をチェックする時ぐらいだと思いますが、「追加的な原因のCLR」の観点は、セルフチェックにとても役立ちます。
「追加的な原因のCLR」は何のために使うのか?
実務で「追加的な原因のCLR」が有用なのは、複数の原因があるときには、原因をひとつだけ排除しても、結果を防ぐことができない、ということを把握できるからです。
先ほどの図解を再掲しますが、下図の論理関係であれば、タカシは出席日数が足りなくても単位を落とすし、宿題を提出しなかった場合も単位を落としてしまいます。
つまり、「追加的な原因のCLR」のチェックに引っかかる状況であれば、そこで挙げられた原因をすべてブロックしないと、結果を防止することはできないのです。
一方、ポジティブな結果を引き起こしたい時の論理関係のなかで「追加的な原因」を見付けることも有用です。この論理関係であるならば、結果を引き起こすためのルートが複数あるということがわかるからです。
たとえば、下図の論理関係であれば、お店の売上を増やすためには、客数を増やす方策もあるし、客単価をあげる方策もある。どちらを選んでも売上を伸ばせるので、原因の両方を揃えなくてもよいということがわかります。
「追加的な原因のCLR」でチェックする項目:「原因不十分」と「追加的な原因」を区別する
ここまで「追加的な原因のCLR」についてお話してきましたが、「追加的な原因のCLR」は、前回とりあげた「原因不十分のCLR」とセットで押さえておくことが、とても大切です。
たとえば、下図のように、ある企画をスタートしたい時に、いくつかの条件をすべて揃えないといけないのか、それとも、複数の選択肢のどれかをクリアすれば良いのかを読み間違えると、途中で企画がとん挫してしまいます。
「追加的な原因のCLR」の、ビジネスでの活用:不具合の原因が、他にもないかを考える
私はこの夏、去年まではいなかったダニに何回も噛まれてしまいました。そこで、マットレスにダニがいると考えて、布団乾燥機をかけたりダニ捕獲グッズを仕掛けましたが、それだけではダニ問題を解決できませんでした。「追加的な原因」の存在を見落としていたのです。
そこで、「追加的な原因のCLR」の観点で再検討し、マットレスの他にも、肌掛け布団と部屋着をすべて洗濯・乾燥して、それらを絨毯の上に直置きすることを一切やらないようにしたところ、ダニに噛まれなくなりました。
ま、ダニぐらいは感覚的に対処していけば良さそうですが、仕事になると、自分が気にしている原因にばかり目が行ってしまい、他の重要な原因を見落とすということはよくあります。
たとえば、気難しい上司からYesを引き出したいと思って、プレゼン資料を一生懸命作り込んだのに、相手から見た「わかりやすさ」が抜けてしまったために、「何が言いたいのかさっぱりわからない」と言われてあえなく終了…などということも、「追加的な原因のCLR」でセルフチェックできるでしょう。
(ちなみに、私の昔の職場では、「Aさんは午前中はだいたい機嫌が悪いので、午前中に承認を得ようとすると大体NOと言われる」という因果関係にも配慮が必要でした。)
あるいは、クレーム件数を減らそうという時に、製品そのものの機能改善をしたのに、製品説明への配慮が抜け落ちていたせいで、せっかくの製品の良さが伝わらない、なんて失敗もよくあることでしょう。
「この結果を引き起こす、別の原因もないかな?」という観点を持っていることは、これらの失敗を減らすことに役立ちます。
おそらく実際は、その観点を意識していても、まだヌケモレが出てくることもあるでしょう。しかし、「追加的な原因のCLR」の観点を持っていれば、失敗した時にも「他の原因への配慮が抜けていたんだな」と認知できるので、着実に次の成長につながっていくはずです。
CLRは筋トレのように、使い込むなかでより役立つようになっていくツールです。ぜひ、「他の原因は無いかな?」という事前の検討と、「あ、この原因を見落としていたんだな」という事後のふりかえりを繰り返しながら、仕事で使ってみてください!(そういう私もまだまだ修行中ですが…)
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ここまでご覧いただきありがとうございました!7つのCLRも、残り2つになりました。次回は「原因と結果の逆転のCLR」を取り上げます。
引き続きよろしくお願いいたします。
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