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君何処にか去る

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小説「君何処にか去る」
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記事一覧

君何処にか去る 第四章(2)

四    道友は、新聞に出たS教授の顔写真をとくと見た。白髪、額の広い聡明そうな顔つきであ…

芝豪(小説)
3週間前
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君何処にか去る 第四章(1)

第四章 歳月は流水の如く 一  一週のうち、金曜日と土曜日が喜多川道友の指定した稽古日で…

芝豪(小説)
3週間前
4

君何処にか去る 第三章(2)

四    柏木幾三によると、水道屋の親父は出水の因を突きとめかねて、  ──無徳君を呼んで…

芝豪(小説)
1か月前
5

君何処にか去る 第三章(1)

  第三章 出会い         一    喜多川道友は古稀を迎えた。道友の父母は、七男…

芝豪(小説)
1か月前
5

君何処にか去る 第二章(2)

四    沈黙の時がしばらく流れた。俊雄は会うことのなかった喜多川道朋を想い、無明は一度だ…

芝豪(小説)
2か月前
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君何処にか去る 第二章(1)

  第二章 瞋恚 一  俊雄は、万化無明が二つのコップに酒を注ぐのを酔眼で見た。 (一升…

芝豪(小説)
2か月前
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君何処にか去る 第一章(2)

四    ありがたいことに、無明は酒が入っても乱れなかった。口の利き方は相変わらずであった。 「六〇年安保のときには、どこにいた」 「名古屋だ。生まれてから小中高に大学、勤め先、みな名古屋だ。この齢になるまで、住まいはあれこれ移ったが、名古屋から出たことはない」 「儂とは正反対だな。儂はいろんなところへ流れた。おたくからすれば、儂の一所不住が不可思議だろう。儂からすれば、おたくの定住が不可思議だ」  無明は、こちらのコップに酒を注ぎたした。俊雄は反論も問いも控えた。目の前の男

君何処にか去る 第一章(1)

第一章 函館の古刹         一    唄口の形状からして、琴古流の尺八であることは…

芝豪(小説)
3か月前
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