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【エッセー】回想暫し

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小説の合間に公開するエッセー集
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記事一覧

【エッセー】回想暫し 勢州桑名

一    大学卒業後、愛知県の印刷会社に勤めた。札幌、大阪、金沢に住んできた私にとって、愛…

芝豪(小説)
1か月前
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【エッセー】回想暫し 昭和の妖怪(3)下

七    国民は真底、憤った。五月十九日から二十日にかけて、岸政権の反動的体質を間近に見て…

芝豪(小説)
1か月前
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【エッセー】回想暫し 昭和の妖怪(3)中

四    一九五八年五月に行なわれた衆議院選挙の結果は、岸を喜ばせた。自民党は二十から三十…

芝豪(小説)
6か月前
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【エッセー】回想暫し 昭和の妖怪(3)上

一    一九五七年六月十六日、岸は羽田から訪米の途に就いた。日本の新首相は、できるだけ速…

芝豪(小説)
6か月前
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【エッセー】回想暫し 18 昭和の妖怪(2)

一  岸は、戦犯容疑者として収監された翌年早々、公職追放の処分を受け、獄窓を出ても、いま…

芝豪(小説)
6か月前
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【エッセー】回想暫し 17 昭和の妖怪(1)

一    歴史を振り返るとき、同時代人ならば、AならAという人物を評価するにあたって、点数…

芝豪(小説)
7か月前
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【エッセー】回想暫し 16 クラシック音楽

 中学校の音楽のI先生が、  ──一週に一回はクラシック音楽を聴きなさい。その都度、曲名とともに日付と指揮者と管弦楽団の名をノートに記すように。そのうち有名な旋律が頭に残り、クラシック音楽が何よりも好きになるでしょう。  と、言われた。  子どもというのは素直なものである。何が何だかわからないままに難しい音楽を聴くべくラジオの番組表を調べ、その時刻になるとラジオのスイッチを入れるようになった。当初は交響曲と協奏曲の違いも知らなかった。スッペの軽騎兵序曲、モーツァルトのトルコ行

【エッセー】回想暫し 15 輪扁(りんぺん)の物語

『荘子』第二冊天道篇第十三(金谷治訳注 岩波文庫)に出てくる話である。ある日のこと、堂の…

芝豪(小説)
7か月前
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【エッセー】回想暫し 14 金沢の坂

 六十余年前、城のなかに大学があるというので金沢にやって来た。大学の寮に住んで学生時代を…

芝豪(小説)
8か月前
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【エッセー】回想暫し 13 藤野厳九郎と魯迅

一  ずっと昔、JR芦原温泉駅に降り立ったとき、駅前に由緒ありげな古い木造家屋があるのに目…

芝豪(小説)
8か月前
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【エッセー】回想暫し12 北方星雲師

一 『常山紀談』巻之十八(森銑三校訂 岩波文庫)に次のごとき話がある。中院通茂公(江戸中…

芝豪(小説)
8か月前
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【エッセー】回想暫し11 ジラード事件

       一    事件は、一九五七年一月三十日に起きた。所は、群馬県の県庁所在地前橋市…

芝豪(小説)
9か月前
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【エッセー】回想暫し10 黄口小雀

黄口小雀  日々、文章を刻みながら庭に目を遣る。あるいは、庭に目を遣りながら文章を刻む。…

芝豪(小説)
11か月前
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【エッセー】回想暫し9 音を文章で表わす

 絵画を文章で描くことはよくあるが、いくら気張っても、当該絵画を一見することがあれば事足りるゆえ、虚しい努力をしているのかも知れない。しかし、ある部屋を全体的に描写するにおいて、正面の壁に一幅の絵画が掛かっていたならば、どんな絵なのかに触れないわけにはゆくまい。このとき、書き手にさほどの絵心がなくても、何とかなるものである。かりに肖像画とすれば、優雅な若い女性がいくつぐらいで、どんな容貌の人なのかを伝え得れば、一応の責めを果たせるからである。  ところが、音楽を文章で描写する