【トヨタ生産方式/TOC編3; JUST IN TIME】
*前回までの投稿は上のマガジンに入れています。
大卒で大手素材メーカーの工場に配属された若手の紫耀(ショウ)と同じ工場に転勤してきた別部署の中堅社員の管理者の健(タケル)との会話です。(もちろんフィクション?)
先輩に指導を受けながら、トヨタ生産方式について学び、自部署の課題を解決に挑戦するようです。前回の投稿ではトヨタ生産方式の概略を解説しました。その中で、2本柱についても簡単に書きましたが、今回はその一つのジャストインタイムについて対話を通して解説します。
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👱🏼;よし、前回、簡単に説明したジャストインタイムについて、細かく学んでいこう。
前提としての平準化
👱🏼;ジャストインタイムは、必要なものを、必要な時に、必要なだけ作るという考え方だっていのうは話したね。ただ、使い方を間違えるととんでもないことになる。例えば、客先からの要望が、ある日、10個で別の日が100個、JITが大事だから納品しろということが起こってしまったらサプライヤーはもう大変だよね。そうなるとサプライヤーは在庫を貯めることを考える、これでは元々の目的であった、原価低減にならない。(標準在庫をサプライチェーン内で決め管理すれば、これがすべての限りではないが)お互いが利益を上げていくための手段であるため押し付けがあってはならない。双方が納得した仕組みを作らなければならない。そのため、前提条件として、平準化の考え方が必要になってくる。JITといってもバランス・関係性は必要なんだ。
🧒;平準化ですか。標準化となんかイメージかぶってしまいます。
👱🏼;ははは。標準化とはちょっと違うな。平準化とは、何日の先の何%まで変更が可能か事前で明確にしておくことと考えていい。内示数ともいっているんだけど、要するに見込み数量のことだ。そして、その見込みに対して、どの程度の変化であれば対応するということを客先と明確にしておかなければならないんだ。客先が多かったとしても、この取り決めはしておかないといけない。もちろん、常にその見込みが合うわけではなく、特別対応するということはあるんだど、それはあくまでも原価がアップするということを両社が認識する必要がある。
🧒;なるほど、、ここの部分認識していませんでした。なんでもかんでも必要な時に必要なものをというわけではないのですね。
👱🏼;そうなんだよ。これが結構問題だったりする。ポイントは別の投稿でまた説明するよ。
JITの三原則
👱🏼;さて、次だけどJITには三原則と呼ばれるものがある。
後工程引き取り
1つ目は「後工程引取り」だ。後工程は、必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ、前工程から引き取り、前工程は、引き取られた分だけ造ることを指す。後工程引取りは、お客さんからスタートするんだ。後工程引取りの流れをイメージしてみよう。
お客さまから商品の注文を受けて、組立工程では組立を始める。組立で部品が使用されたら、その前の加工工程から部品が引き取られると共にかんばんが外れ、加工工程は加工を始める。さらに、加工で素材が使用されたら、今度は倉庫から素材が引き取られると共にかんばんが外れ、部品を手配し、入荷されたモノに、かんばんが付けられる、というイメージだ。こんな感じで後工程引き取りは、客先のニーズに対して、すべての工程をかんばんを使いながら連動させていくことを言うんだ。
🧒;すごい。でもそんなにうまくいくもんですか?
👱🏼:いや簡単にはいかないよ。そこで、水すましっていうすごいやつが登場するんだ。
🧒;水すまし?
👱🏼;そう。段取りマンの進化版と言ったらいいかな。水すましは生産計画、次の工程に何を運べばいいかを把握して、かんばんも必要な時に着け、不要になれば外す。そして運搬もコントロールする。そのおかげで各工程の作業員の前には常に必要な部品が揃い、計画通り製造できる。結果自然に後工程引き取りになっていくんだ。この存在が実際の現場では肝になる。
🧒;恐るべし、水すまし。
工程の流れ化
👱🏼;さて、2つ目は、「工程の流れ化」だ。工程内・工程間にモノを停滞させないこと、余分な在庫・バッファは造らないことを指すんだ。工程の流れ化においては、細く早い流れでモノをつくることを目指す。つまり、小ロット生産が必要になる。各工程で大ロット生産を行い、仕掛品の滞留が至る所で発生している状態ではだめだ。
細く早い流れをつくるんだ。理想は、1個流し生産だよね。まあ、これは、極限だけど。モノの流れの滞留や淀みを無くしていくことが重要なんだ。ただ、これを目指すと間違いなくジョブチェンジ自体は増え個々の設備では効率が悪いように見える。でも、全体で見ればスループットが上がる。これが工程を流すために必要不可欠な考え方になるんだ。そこで、いかにジョブチェンジを短い時間でこなすかということが課題になってくる。それと1個流し生産を行なうときには、全体工程の同期化が必要なんだ。前工程がモノが作れてなかったら、いくら引き取りたくてもモノがないんじゃだめだよね。そこで、手待ちが発生したり、必要な部品がないので、ほかの部品で不必要なものを作ってしまって在庫になったり、いくつかのムダが発生してしまうんだ。それと、改善された作業は、しっかりと標準へ落とし込み、継続的に改善を行ないながら、標準作業をつくり込んでいかなければいけない。これは5Sの躾のところで学んだね。
🧒;個々の設備で効率が下がっても、全体で流れ化のために不可欠・・・。なるほど。次の工程に必要ないものを造っても意味がないし、むしろ造らないほうが、場所も取らないし、ムダはでないですね。でもこれ、なかなかわかってもらえなさそうです。。
👱🏼;そうなんだ。このあたりはTOC理論でも深堀りされているから、その時に話そう。
必要数をタクトで決める
次は、3つ目。「必要数でタクトを決める」だ。生産必要数に応じて、生産性を落とさずに、柔軟に人員を変動できる、少人化ラインをつくることだ。出荷状況(売り上げ)に追随できる柔軟性を持つことなんだ。
🧒;追随できる柔軟性?
👱🏼;まずタクトタイムから理解しよう。タクトタイムは顧客から要求された品物を1つ造るのに必要となる時間もしくはピッチであり、稼働時間/生産必要数で計算されるんだ。タクトタイムでモノを造るというのは、一つの製品を生産する時間・ピッチを安定させるということになる。
🧒;それは大事ですね。
👱🏼:タクトタイムを稼働時間/生産必要数とすると、必要数が少なければ、少ないなりの造り方を、必要数が多ければ、多いなりの造り方をしないといけないよね?
🧒;ですね。柔軟性何となくわかってきました。
👱🏼;それに、もし、いつでも固定人員でモノを造っていたらどうなるか。必要数が少ない時は、つくりすぎのムダが発生し、生産必要数が多い時は、欠品のリスクが発生してしまう。タクトタイムが一定ではないから、そりゃばらつくよ。そのような造りすぎのムダや欠品が発生したらJITはできないね。だから、柔軟性を持たなければいけない。柔軟性を持たすには、多能工化が必要なんだ。
🧒:多能工化は分かります。各工程サポートできますもんね。でも、全体が忙しかったら結局、人員が足りなくなってしまうのではないでしょうか?
👱🏼;俺の十数年の経験では、すべての工程が同時に忙しいということはない。もしそれが起きたとしたら完璧に同期化された工程になっているということなんだ。だって、どこも同じだけ忙しいということは工程の流れ化が完璧にできているし、ボトルネックが無いということだよね。そういうことは、非常に起こりにくい。し、すべての工程が忙しいと思ってもそれは思い込みだ。つまり、どこかの工程が忙しければ、どこかの工程に余力ができることになるんだ。余力が残った工程のメンバーが他工程に応援に行くには、その工程で作業できる能力が必要だよね。そこで、多能工化が必要になってくるんだ。これができることで、最少人数を各工程に配置して、必要なときにそこに一気に力をかける。そして、タクトタイムを安定させる。つまり、ムダを発生させないということにつながるんだ。
🧒;なるほど、多能工化、多能工化といわれて何となく必要と思っていたけど、タクトタイムに、そしてJITにつながってくるとは知りませんでした・・。
ジャストインタイムを成立させるには
👱🏼;これまで話してきた3原則のほかに、ジャストインタイムを成立させるために次の5つがポイントであるとカイゼンベースHPでは述べている。
・5S
・人の定着と多能工化
・部品供給の安定化
・設備停止の撲滅
・自働化レベルの向上・品質の安定化
それぞれ、概要だけ確認していこう。
5Sの徹底
1つ目は、5S。組立をする際に、治工具や部品をイチイチ探していたのでは、必要な時に必要なモノを供給できない。整理整頓をはじめとした、5Sの仕組み・定着が必要不可欠となる。まさに5SはJITの前提条件でもある。だから、前のマガジンでまず5Sを解説したんだ。
部品供給の安定化
2つ目は、部品供給の安定。当然のことながら、たとえボルトが1本無くても、遅れても製品は完成しないよね。製品を製造するために必要な全ての部品が、計画に沿って納入されることが必要不可欠。だからトヨタはサプライヤーに対してトヨタ生産方式の教育をしていて、協力体制の構築を実施しているんだ。でもこれは非常に大変な作業なんだと思う。
設備停止の撲滅
3つ目は、設備停止の撲滅。設備が突発停止してしまい、製造が出来ない状態が時折発生していたのでは、止まった時の為に、在庫や時間の余裕を持たなくてはいけなくなり、ジャストインタイムが成立しない。その状態から脱皮するためにも、予防保全を中心とした設備稼働の安定化が重要となってくる。
人の定着と多能工
4つ目は、人の定着だ。正社員・パート・派遣社員・請負等に関わらず、人の定着率が95%以下になると、生産性・品質は不安定になるといわれている。請負を使っている職場もあるんだけど、定着リスクを理解した上で活用していかないといけないよね。特に労働市場の流動性が高い海外現場だと、死活問題になる。少なくとも定着率を毎月チェックする仕組みは作っておかなければいけない。それと、突発休暇が出た場合でも、それをカバーして安定生産出来るように、多能工化はここでも重要になってくるよ。
自働化レベルの向上・品質の安定化
5つ目は、自働化レベルの向上・品質の安定化だ。不良が時折多発するような状態では、必要な時に必要な分だけ後工程に渡すことが出来なくなるよね。異常が出たら止まる仕組みを導入し、品質をつくり込む取組みは常に必要にある。
🧒;そうなのですね。幅広い。。
👱🏼;そうなんだ、だからいきなり手広くしようとしてもだめだよね。でもJITを構築しようとすると様々な問題がでてくる。めげずに一つずつ解決していくなかで、この5つの前提もカイゼンされていくんだ。まずはJITを理解してどこに進むのか明確にすることが大事だよ。
🧒;わかりました。
👱🏼;では、簡単だけどJITの説明は終わりだ。次回は”ニンベンのついた”自働化について解説しよう。
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今回は、ジャストインタイム、JITを解説しました。一部わかりにくい文章だったかもしれませんが、三原則とその前提の平準化について大まかな部分は理解いただけたかと思います。
次は、もう一つの柱、“ニンベンの付いた自働化に”ついて解説していきたいと思います。
次の記事は下記です。
本投稿は大野耐一著「トヨタ生産方式」とカイゼンベースHPの内容に沿って、解釈を入れて解説をしています。
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