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ものづくり現場でアドラー10:「そんなに否定される必要ある?〜共感と同意〜」

今回は久々に若手の紫耀(ショウ)が登場しています。これまで紫耀(ショウ)の上司であった倫也課長が転勤し後任の土良(ドラ)がやってきます。アドラー心理学に精通した上司のサポートをもらい、様々な問題を解決していく若手製造マンのものがたりを描いていきます。アドラー心理学は、「勇気」と「共同体感覚」の二軸で成り立っていることを第一回目に解説しましたが、紫耀は「正の注目」、「リフレーミング」、「存在価値と機能価値」を学ぶことを通して「勇気」を理解・獲得したようです。そして、前回相手に勇気を与えることで自分も勇気づけられる、その循環が共同体感覚だと学びました。しかし、相手を勇気付けること(喜ばせること)は簡単にはいかないようです。今回もあるプロジェクトで同期から意見を全否定されてしまうようです。

本マガジンは、“もしも上司がアドラーだったら“を参考に(沿って)記載していきます。ぜひ原本購入し読んでみてください。より理解が深まると思います。audible もあります。

・・・・・・

◆タスクフォース・プロジェクト

🕵️‍♂️:ちょっといいかい?紫耀君。

🧒:はい?土良さんどうかしましたか?

🕵️‍♂️:今度、工場全体で行われるタスクフォース・プロジェクトのメンバーに君が選ばれたよ。

🧒:タスクフォース・プロジェクト?なんですかそれは?

🕵️‍♂️:部署横断であるプロジェクトを遂行するチームだ。君はうちの部署代表として選ばれたんだ。すばらしいことだよ。

🧒:え?そうなのですか?それはうれしい!それと同時に背筋が伸びます。がんばらなきゃ。

🕵️‍♂️:そのプロジェクトには、君の同期の正輝君、そして、先日転勤してきた賢人君も参加することになっているよ。賢人君は去年の技術報告会で最優秀賞をもらっていたね。

🧒:正輝か、、嵐の予感がします・・。賢人にも負けられないです。ところでどんなお題目なのでしょうか?

🕵️‍♂️;工場では、慢性的に残業問題が発生している。それは製造だけでなく、総務・人事・環安・設備すべての部署でだ。プロジェクトのテーマは、各部署のパフォーマンスを落とさず残業を減らす。つまり、業務効率改善というわけだ。プロジェクトリーダーは人事の松岡課長だ。

🧒:そうですね。昔はサービス残業でうまく残業を少なく見せていましたが、いまはそんなことできないですから正直に皆が申請すれば膨大な残業になりますもんね。

◆共感と同意

・・・数週間後・・・

プロジェクトはキックオフを終了し、数回の会議を重ね、話題は徐々に核心に入っていった。

まつおか:紫耀君、製造としての君の意見はどうだい?現場は受注量により残業の増減があるからわかるんだ。でも、君たち製造事務所の人間は固定的に残業があるね。それもみんな36協定ぎりぎりだ。実際に違反してしまってもおかしくない状態だ。実は私はここを一番懸念している。何かいい案ないかい?


🧒:はい。正直これまでのような根性論、つまり、早く帰れ、家でやれという暗黙のルールではなにも変わらないと思います。残業を減らせというだけでは、何の指示にもならないです。根本的に業務仕分けを行わないといけないと思います何の業務・レポートが必要で何が不要かを明確にすべきかと思います。それがこのプロジェクトのカギなのではないでしょうか?
(他人からどう思われようがそれは相手の課題だ。俺は俺の信じたことを言うんだ。我ながら成長したな・・。勇気を持てていなかったら、、課題の分離の考え方がなかったら、思っていてもこんな発言はできなかった。


👨🏻‍🦰:なるほど。確かに紫耀君の言うとおりだ。それが本質だ。しかし、それは過去の習慣を変える、仕事の仕方を変えるということだ。言わずもがな大変だ。その大変なことにチャレンジしよう。そういっているんだな?

🧒;はい。そうです。

👨;(正輝)いやいやー。ありえないでしょう。現実をわかっていない人が言う発言ですね。正直そんなのただの正論だ。これ以上業務を減らす?今でさえ設備も品質もトラブルが発生しているし、改善課題も多い。俺たちがもっと働かないでどうやって現場をよくしていくんだよ。君の部署の現場は完璧なのかい?業務を減らし、残業を減らす?業務を減らしたら余計に品質管理、設備管理、そして改善も進まないんじゃないのか?

🧒:(なんだと?じゃあどうすりゃいいっていうんだ?完璧なのかい?って、全面否定だな。ふつうそんな言い方しないだろう。よし、言い返してやるか。)

👨‍🦲:(賢人)なるほどねぇ。正輝はそう考えているのか。なるほどねー。

👨;そうなんだよ。賢人もわかるだろう。紫耀の言っていることは現場がわかっていないやつがいう言葉だ。

🧒:(なにをー!!)

👨‍🦲:なるほどねぇ。正輝は「減らす業務なんてない」と思っているんだね。これ以上、業務を減らしたら品質も設備管理も質が下がり、トラブルにつながると考えているわけだ。

👨;そう、その通り!よくわかっているじゃん。

🧒:(おいおい、賢人も正輝と同じ考えなのかよ。これじゃ元のままじゃないか。大丈夫かよ。おいおい。)

👨‍🦲:正輝、君の言うことは分かったよ。今度は僕の話も聞いてくれないか?

👨:ああ、もちろん。

👨‍🦲:じゃあ、言わせてもらうね。僕の考えはちょっと違うんだ。確かに正輝のいうことはよくわかる。でも僕の意見は紫耀と全く同意見だ。まだまだ減らせる業務はあると思うんだ。それを一緒にリストアップしてみたらどうだろう。これでも僕たちは10年製造を経験している。3人でリストアップすればほとんどのことが網羅できるだろう。そして、それでも減らせないと思うのであれば、それは減らせないものだ。その時はそう判断していけばいいと思う。どうだろう?

👨;うんうん。

🧒:(おいおい、賢人って、本当にすごいな。正輝の見方かと思っていたら、俺と同じ意見だったのか・・。それに、正輝と対立しているはずなのに意見を聞いた上で否定せず物腰やわらかく自分の意見を話している。こんな話し方があったのか・・。そうか、賢人は相手の話に「共感」はしているけども「同意」をしているわけではないんだ。正輝は自分の意見をきちんと聞いてもらったものだから、うんうんとうなずいていたんだ。そして、だいぶ穏やかな表情だった。俺への態度とは大違いだ。まてよ、俺も昔現場の人に、「現場の人の話は聞きなさい。でもそれを受け入れるかは別の話だ」って言われたことがあったな。これも共感はするが同意するのは別だってことか。なるほどだ。)

・・・そしてこの日の会議は、終了した。ちょうど終業時間になった。駐車場に行こうとすると。土良さんの声が聞こえた・・・

◆課題の分離の応用。~共感からの提案~

🕵️‍♂️;後ろから今日の会議聞いていたよ。わかったかね。賢人君の話し方。かれは同意せずとも・・・

🧒:共感をしていたですよね。いやー、賢人の話し方はすごかったです。意見が違うのに共感をする。だから正輝も悪い気がしない。あっという間に2人の間には信頼関係が生まれていた。それで、自分の意見を言っていいかなといって自分の意見をいう。異なる意見なのに対立でなく、対話が生まれていた。いやーぜひこのやり方を真似したいですね。

🕵️‍♂️:「さすが、そこまで吸収していたのか。驚くべき学習だ。それも謙虚な姿勢も持っている。すばらしいね。まさに君の言う通り、「共感」こそが「共同体感覚」の証なんだ。

🧒:そして、それは相手に対する「勇気づけ」にもなるのですね。だから、あの正輝があんな穏やかな顔で素直に聞き入れたんだ。

🕵️‍♂️:ボンゴ!!そうなんだよ。人と人の間にはいつも「返報性」が働くといわれている。相手からポジティブな行動をされたらそれを返す、逆にネガティブにされたら同じように返す。まさに相手の行動は自分の鏡だと思ったほうがいいってことだね。だからこそ、自分と違う意見であってもそれを尊重して「共感」する。それを続けていくことで信頼関係が生まれ対話になっていくんだ。

🧒:なるほど。返報性か。

🕵️‍♂️:彼は異なる意見を攻撃と思っていなかった。違う意見に対して恐れないんだ。そして、異なる意見を言うことも恐れていなかった。

🧒:これって、、、もしかして、課題の分離と同じですよね?

🕵️‍♂️;そう。課題の分離の応用編なんだよ。君が自ら気づいたように、この応用というのは、①共感 ②提案という流れを作ることなんだ。すごいな。自分で気づいたか。僕が気に教えることはもうないかもしれない。君はその感性でそのまま進んでいけばいい。自分を信じるんだぞ。他人に惑わされることはない。お、今日はもうこんな時間だな。では、また明日な。

🧒;はい。今日もありがとうございました。お疲れさまでした。

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 今回は、共感と同意の違い。課題の分離を応用した共感からの提案について解説しました。これもかなり実践的ですね実はこの考え方が出来ると、反対意見でも意見さえ言ってもらえれば、議論を進めることができると考えています。共感する、深堀させてもらう。その上で自分も提案して、すり合わせていく。これを粘り強く進めていくと信頼関係ができていくという経験を数回しました。そうなると改善業務やプロジェクトのアイデアが実行しやすくなると感じています。さて、今回も第9章の最後のコラムを紹介します。

どちらの返報性を選ぶかは自分次第
返報性の法則とは、相手にしてもらったことを返したくなる心理を指します。相手からプレゼントを受け取ったら自分も返したくなる。これがポジティブに働くと「ご恩返し」という行動につながります。しかし、これがネガティブに働くと「復讐」につながります。
相手から攻撃されたら攻撃仕返そうと思う報復の連鎖です。
しかし、アドラー心理学では、相手の行動を「親切」と捉えるか「攻撃」と捉えるかは本人次第、と考え、これを「認知論」と呼びます。そして、その判断の根本には「自己概念」「世界像」があると考えます。自己概念とは自分はどのような人間であるか、という信念です。世界像とは他人はどのような人間であるか、という信念です。もしも、自分は醜く劣っているという自己概念を持ち、他人は冷たく自分をバカにするという世界像を持っている人は、他人の些細な言動をすべて「攻撃」と見なすでしょう。しかし、自分は愛されており、周囲の人は味方で自分を助けてくれるという信念を持っている人は、他人の言動をすべて「自分への親切」と見なすでしょう。

次回は、目先の損得ではなく、より大きな概念で損得を判断していく思考を解説します。本マガジン後半の共同体感覚もいよいよ終盤に差し掛かってきています。ぜひ、スキ、フォローお願いします。

また、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

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