身近なバイアス⓪:コロナ騒ぎが始まった途端にSNSも荒れる心理
登場人物 ドクター紅(くれない):ナッジの魅力に気付いた公衆衛生医師。竹林博士:ナッジの面白さを伝えるのが大好きな研究者。
竹林:普段はしっかりしているのに、コロナ騒動になってから急に残念な行動をする人が増えた気がしませんか?
紅:そう言えば、いつも穏やかな教授が、SNSで知らない人とコロナについて言い争いをしました…。
竹林:それは脳のシステムが原因かもしれません。
紅:どういうことでしょう?
竹林:脳には直情担当(速い思考システム)と熟慮担当(ゆっくりの思考システム)の2つの回路があります。余談ですが、D.カーネマン(ノーベル経済学賞受賞)の名著「ファスト&スロー」も、この2つの思考システムがテーマです。
紅:あのタイトルには、脳のシステムを表していたんですね!
竹林:普段は熟慮担当のおかげで理性が機能しているので、感情をうまくコントロールできるます。でも、疲れると熟慮担当が弱り、バイアス丸出しの行動になりやすいです。
紅:人間、いつでも理性的でいられるわけではないんですね。でも、改めて、「バイアス」ってどんな意味でしょう?
竹林:直情担当の持つ思考パターンのことです。それを理解するために、次の問を考えましょう。
【問】電池を買いに行った。入り口付近に置いてある電池は100円、レジ横のは120円、奥にあるのは150円の値札が貼られていた。どの電池を買う?
紅:時間があれば、3つをじっくり比べてコスパの高いものを選びます。
竹林:急いでいるときや疲れているときはどうしますか?
紅:何となく120円の電池を選びますね。
竹林:このように熟慮担当は合理的に比較しようとしますが、せっかちな直情担当は直感で真ん中にしておこうとすることが多いです。このように、合理的思考から一定方向にずれてしまう思考のクセ(認知の歪み)が「バイアス」です。
紅:こういう風に言ってもらえると、よくわかります。
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もっと詳しく学びたい方は、「ファスト&スロー」(カーネマン)、「ヘンテコノミクス」(菅俊一ほか)がお勧めです。
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