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ナッジ研究者がお答えします#34:あぶく銭の場合、損失回避は生じない?

【問】「懸賞で100万円当たった後、100万円を落とした場合、落としたときのショックが大きい」という心理(損失回避性)について、「同一人物が時系列的に獲得と喪失を経験する状況」は別の話であり、あぶく銭であれば、別になくなってもそこまでダメージは受けないだろうと考えます。いかがでしょうか?

こちらは現役の医学部生からいただいた、とても鋭い質問です。

100万円が当選した時点で、「参照点(=基準)」が「100万円保有した自分」になり、「100万円で車を買おう」「海外に行こう」といった具合に、気持ちが大きくなります。もはや当選前の自分とは別人です。
そこから、100万円を失います。具体的にイメージしてください。
夢を全部諦めないといけません。虚しさもこみ上げてくるでしょう。
前の状態に戻っただけで、むしろ一瞬でも夢を見れたことを感謝するべきかもしれませんが、多くの人はそうではありません。
どれほどの影響があったのかを測定した結果、ショックの方が2倍以上大きいことが判明しました。

「あぶく銭」の話は、心の会計(mental accounting)に関わる議論です。確かにさほどショックを受けない人もいるかもしれませんが、統計的に見ると、大勢の人にとってはショックなようです。医学部受験で考えます。記念受験したら合格して、嬉しさのあまりショック死する人はほとんどいませんが、その後合格を取り消された時に絶望で亡くなる人は、いそうです。こう考えると、わかりやすいかもしれませんね。

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