ナッジ研究者がお答えします#31:飲食店でのマスク着用を促すには?
ナッジを使って、SNSで飲食店でのマスク着用を注意喚起したい。どうしたらよい?(自治体担当者)
大半の住民は飲食店でのマスク着用の必要性を知っています。それでも、順守されていないのは、①ついうっかり②誰にも迷惑をかけていない③他にもマスクをしていない人がいる、といった理由が考えられます。①~③それぞれに相応しいナッジを検討していきます。
①に対してはSNSのメッセージだけはあまり効果的ではないでしょう。なぜなら、今、マスク着用の大切さに気づいても、飲食店に入る時に忘れる可能性が高いからです。そこでSNSで「最初に黙食に協力する、と宣言した人は1品サービス」というキャンペーンを告知するのはいかがでしょうか?宣言したことは、守りたくなるものです(コミットメントと一貫性)。対価を受け取れば、なおさらです。ちなみにSNSに限定しないのなら、「テーブルに小さな鏡を置く」というのが良いと思われます。詳しくはこちらの動画をご覧ください。
②は同席した相手とともに、お互いにマスクを外した状況が想定されます。「家族同士だから、神経質になる必要はない」と本人たちは思うかもしれません。これに対しては、「お客様がマスクなしで会話している姿を見ている店員さんは、顔は笑顔でも、心はすごく悲しんでいます。お店で感染が発生すると、お店は2週間以上休み、料理人さんは味覚がしばらく戻らないことになるかもしれません」といった切り口はいかがでしょう?これは「顔のある犠牲者効果」と呼ばれる心理効果です。人は、自分がマスクしないことは正当化できても、そのせいでお店に損害を与えることは正当化できないものです。SNSに限定しないのなら、「食事中、あなたと同席している人はマスクを外して話しかけていないでしょうか?もしそうなら、「食べ終わってマスクをつけてから、ゆっくり話そう」と言ってください。その一言が周りの人を私も、そうしています。」がよいと考えます。
③は強力な正当化理由になり得ます。これはSNSでの効果は難しいです。そこでお店の黒板に「今日、マスク着用と黙食をしてくださったお客様 正正正正正正(※人数を「正」で示す)」と時間ごとの集計を可視化すればいかがでしょうか?これに関しては、トイレでの手洗いでの先行研究もあります。
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