塾講師は嘘をつけないという苦悩

塾講師をしていると、嘘をつかなければならない時がある。

街中で先生を見かけただとか、買い物をしていただとか、居住地を特定されてしまうような事実は否定せねばならない。

一方、鈴木先生はまともな嘘をつくことが苦手。

「鈴木先生!今日駅前にいたでしょ!」

さて、私は塾の指導方針が嫌いである。
居住地が知れ渡ったとして何になるというのだ。
家の前まで尾行されることもなければ、石を投げ込まれることもないだろう。
生徒一人一人に信頼があるのだ。

「ばれちゃった?」

とりあえず、認めてみる。

「鈴木先生、あーゆー服着るんすね!」
「鈴木先生、何担いでたんですか?」
「鈴木先生、どこいったんすか?」

「まー、それはいいじゃないの」

いなして、みちゃう。

鈴木先生は日々変な嘘をついています。

鈴木先生は今日、
家から一歩も出ていません。

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