分け利きの苦悩
分け利き、という言葉を聞いたことがあるだろうか。
これはいわゆる「利き手」の種類の一つで、「使い勝手のいい手が用途によって異なる」状態を指す。両方の手を用いるという点では両利きと似ているが、両利きが万事どちらの手でも対応できるのに対して、分け利きは特定の動作にいずれかの手が使いやすく、他の動作に対してはそうでない、という風な感じであり、全く異なるものである。
……という風なことがWikipediaに書いてある。そして、これくらいのことしか書いていない。分け利きに関してはなぜか異様に情報が少ないのである(「利き手」で調べてみると結構色々な情報が出てくる。オススメ)。
で、私はこの分け利きである。そして、ちょうど上に挙げたWikipediaの例に書いてあるように、「箸を左手で、筆記を右手で」行うタイプの分け利きだ。
より正確に言えば、箸のみ左手、他の物事を大体右手で行うのが勝手がいい。バットを握れば右打ちだし、ボールを投げるのも右手だし、マウスも右手で操作する(今思いついたが、左利きの人がいる以上は左利き用のマウスというのが存在するのだろうか。図書館や学校に置いてあるパソコンに左利き用マウスは置いていないだろうし、そのあたり他の色々な事と同様に左利きの人は苦労していそうである)。
私は幼少期を祖母に育てられた。その祖母の曰く、「学校に行ったときに苦労しそうだから」という理由で、元々箸も筆記も左手でやっていた幼い私を、筆記を右手で行うよう矯正した、らしい。私の分け利きは後天的なものなわけだ。元々左利きだったのだろうか。
しかしそうなると不思議なことになる。先も書いたように、現在の私は「箸のみ左手、他の物事を大体右手で行う」。これでは元は右利きであったほうが理にかなっていそうである。正直この辺はよく分からないことになっている。腕を組んだ時にどっちの腕が上にくるだとか、指を組んだ時にどっちの親指が手前にくるだとかはまた別の話だろうが、後天的分け利きである私が元々どっち利きとして生まれたのかは全く不明である(ちなみに私は腕を組むと左腕が上に、指を組むと左の親指が手前にくる)。
まぁ自分がどちら利きであろうが別にどうでもいいのだが、それ故に苦労するということはたまに発生しうる。
私は普段座椅子に座って右側にマウスを使ったり薬や財布や眼鏡を置いたりする用のサイドテーブルがある環境で過ごしている。マウスは右手で使うから、この環境は必然的に作られたものだ。
しかし、例えば「今日のお昼はスーパーで買ってきた稲荷寿司と豚のヒレカツよ~!」という時、片方は膝の上なり腹の上に置くなりすればいいが、もう一方をサイドテーブルに置くと非常に困る。何故なら私は箸を左で使うからである。ご飯を食べながらパソコンを弄る、なんてことをやった日にはもう大変で、上に物が増えたせいでマウスは使いづらいし箸を持った左手がパソコンをまたがって右側のサイドテーブルに行ったりするしで大変忙しい。いっそ左側にもサイドテーブルを置きたい気分になる。こちらには水の入ったペットボトルやら間食やらを置けばいいから、使い分けは出来るだろう。ただ、そうするといよいよ私の部屋の足の踏み場がなくなってくる。座椅子の左側は私の部屋の数少ない通行可能ルートなのだ。
と、具体例を交えて分け効きの悩みについて書いてみた。
普段は特別困るようなことは起こらないのだが、今日はお昼がスーパーで買ってきた稲荷寿司と豚のヒレカツであり、左手が行ったり来たりするのに忙しかったのでこの記事を書くに至った次第である。当然分け効きは私のような「箸だけ左で他は右」以外のパターンも存在しうるだろうから、それぞれパターンの苦労話なんかも聞いてみたいものだ。