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「地域活性化起業人」発案、地元ワイン×おかずを追求した「都農マリアージュ」を体感
近年、国内のみならず世界中から注目を集めている日本のワイン。四季折々、地域ごとの気候を生かしたブドウ栽培によって個性豊かなワインが数多く生み出されてきました。宮崎県児湯郡都農町もまた、世界的に高評価を受けるワイン造りが行われています。
このたび、同町へ派遣したぐるなびの「地域活性化起業人」の企画により、都農町のワインと地元食材を題材にしたレシピ本『都農マリアージュ みんなが喜ぶワインのおかず』が発売されました。昨年末、都内で開かれた出版記念パーティでは関係者やワイン愛好家、グルメインフルエンサーらが出席。東京・渋谷のレストラン「MOSS CROSS TOKYO」により再現された、書籍に登場するレシピメニューを味わってきました!
ぐるなびは、食を通じた地域振興を目的に、総務省の「地域活性化起業人制度」を活用し、各地域の魅力や価値の向上につながる業務に取り組んでいます。都農町には、2022年6月より社員を派遣。質が高く、生産量にも恵まれた農産品と地元ワインに着目し、都農町で道の駅を運営する株式会社都農まちおこし屋、株式会社都農ワインと協業して「地元のワインと地元の旬食材のマリアージュ」をテーマに掲げた料理本を企画しました。
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本作の著者は、ワインのおつまみ研究家である大橋みちこさん。ソムリエ資格を持つほどのワイン知識を生かした52品のレシピを考案されました。パーティでは「1つの町、1つのワイナリーとタッグを組んで、チームとなって一緒に作り上げた他にはない本になりました」と挨拶。再現レシピとペアリングするワインについての解説も行ってくださいました。
収録されたレシピのテーマは、“家庭でも作れるワインによく合うおかず”。パーティで提供されたレシピに使われた野菜は、都農にある道の駅からの直送品。都農町産ブドウで醸造される都農ワイン各種とのペアリングにて提供されました。
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松花堂弁当スタイルで提供された前菜は、全9種。縦の列ごとにそれぞれペアリングされるワインが異なります。左列には、ウェルカムドリンクとしても提供された爽やかなフルーティーさが特徴的な『キャンベルアーリースパークリング』。大橋さんいわく、しゅわしゅわと弾ける泡には、サクサクとした揚げ物やカリッとした食感がベストマッチとのこと。カリっと軽やかな「里芋の唐揚げ 焼肉のタレ風味」や「人参とナッツのウスターかき揚げ」、クリーミーさがアクセントの「かぼちゃとたくあんあんとクリームチーズのサラダ」は、食べ応えも抜群です。
中央列は上から「鶏むね肉とアボカドと長芋のチリソース炒め」、「ローストビーフとイチゴのサラダ」、「カレー風味のブリ大根」。どれもピリッとした辛さやスパイスが特徴的なメニューです。ペアリングの『牧内キャンベルアーリーエステイト』は、やや辛口のロゼワイン。イチゴのようなフレッシュな酸味が、スパイシーさを包み込んでくれます。
右列は優しい味わいの白ワインとのペアリングをイメージし、甘みを特徴とした3品に。「椎茸の味噌クリームディップ ゆで卵にのせて」は卵やキノコのまろやかさ、「切り干し大根と豚肉のシュウマイ」は噛むほどに出てくるダイコンの味、「みかんとモッツァレラのカプレーゼ」は柑橘の風味をワインとともに。ペアリングの『牧内アンウッディド シャルドネ』が持つ繊細さと見事に調和していました。
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魚料理として登場したのは、「牡蠣と葱の柚子クリームグラタン」。『尾ノ下エステートシャルドネ#5』の果実の凝縮感をヒントにセレクトした旨味の強い牡蠣をメインにしつつ、炒めたネギも主役に据えることでワインとの甘みを融合させた味わいに。「普段はハードルが高いホワイトソースを、あえて作らないグラタンを目指したい」という大橋さんのこだわりも光ります。
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肉料理にはやはり赤ワイン。濃厚な果実味が際立つ『プライベートリザーブ ビジュノワール』とともにいただいたのは、「ラムチョップソテー ブルーベリーと醤油とマスタード」。夏に収穫される都農町産ブルーベリーから着想を得たソースは、しょうゆと赤ワインにマスタードを加えるだけの手軽さがポイント。ラム肉のジューシーさに、豊富なタンニンがもたらす重厚感はペアリングの醍醐味をしっかり感じさえてくれました。
パーティでは、著者の大橋さんと都農ワイン代表取締役社長赤尾誠二氏による対談も実施。本作が誕生する舞台となった都農町の食材、ワインへの熱い想いなどが語られました。
――都農ワインや都農の食材には、どんな魅力がありますか?
赤尾:
我々は、ワインは地酒であるべきだという信念のもと取り組んでいます。地酒といえば、作られた土地の食材に合うのが魅力。都農ワインも(宮崎の名物である)煮しめやチキン南蛮にもよく合いますよ。地元の食材と相性が良いことが都農ワインの魅力であると常々感じてはいたのですが、具現化してくれたのが今回のレシピ本です。
大橋:
都農の食材は品目豊か。特に野菜やフルーツは、都農にないものが少ないくらいいろんなものがある。だからこそ、52品で全部違う食材が主役になるレシピ本が作れたんです。都農ワインさんはおいしいのはもちろん、種類が多いのが魅力。甘いのも辛いのも、重いのも軽いのも……なので、合わせる料理もものすごくバラエティ豊かになりました。ほかの町ではなかなかできないのではないのでしょうか。
――書籍を機に、何か期待することは。
赤尾:
ワイナリーに併設してパン屋をオープンしたのですが、そこのメニューとして大橋さんのレシピを使ったメニューを提供していきたいなと考えています。ワインとパンと、都農食材で作るものをこれから展開していきたい。もちろん、おうちでワインを飲んでいただきたいという思いもあるので、ワイナリーに来てくださったお客さんにもそういった情報発信をしていきたいですね。
大橋:
都農町のことを知っていただきたい。この本を読んで「食材を取り寄せてみようかな」「都農町に行ってみたい」と思っていただけたら嬉しいですね。近年、ペアリングという言葉が市民権を得てきて、ご家庭でも気にしたり、レストランでも気軽に楽しめるコンテンツになってきている。その土地で作られたお酒とその土地で作られる食材を合わせるという原点を、この本で体感してもらえたら。この本では日本の調味料、漬物を多用しています。日本ならではのペアリングは他の国では真似できないものですし、そういったところにも面白さを感じていただきたいです。
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――今後の展望は?
赤尾:
都農ワインは誕生からもうすぐ30周年を迎え、ファンの方々もいらっしゃる。この先ももっとワインの魅力、マリアージュの魅力を伝えていきます。
大橋:
ワインは特別なもの、合わせる食事は頑張って作らなきゃと思いがちですが、普段の食事に合わせることが気軽にできるような印象を作っていけたらいいなと思います。他ではまねできない楽しみ方を当たり前にできることを、都農の方にもより一層楽しんでいただけたら。都農からほかの地域の方に広がって「行きたいな」と思っていただけるはず。一つでもレシピを真似していただけたら嬉しいです。
ワインとのペアリングに特化した、自宅でも作れる多彩なレシピが掲載されている『都農マリアージュ みんなが喜ぶワインのおかず』。気軽に真似できるよう工夫が凝らされているだけでなく、ワインと食材の計算された相性の良さは感嘆せざるを得ません。都農ワインや都農食材もお取り寄せしたくなること間違いなしです!