女性たちの「自分が抱く性欲」への自覚の浅さがもどかしくて、愛おしい -やれたかも委員会 第8回 太陽の塔編-
「いい、やれたかもでした」
思わず佐藤二郎さん演じる能島譲と声を合わせてつぶやいてしまったテレビドラマ「やれたかも委員会」第8回「太陽の塔編」。
今も心のどこかに置いてある「あの時、やれたのでは?」というもやっとした気持ちと当時の様子を告白し、3人組の「やれたかも委員会」に報告するドラマ。
本作はnote出身のヒット作としてあまりに有名なので、noteユーザーならば詳細を言わずもがなご存知かと思います。
さて、おだやかに、そしてかわいい女の子たちにきゃーきゃー言いながら見守っていたドラマ版ですが、今回第8回は、書かずにはいられませんでした。
ドラマ初登場である女性の語り手。
いつもなら、ひとりで高まる男性相談者をぶった切る月綾子(白石麻衣)が前のめりな姿勢で迎えるオープニングから始まり、岩瀬さつき(MEGUMI)が語る、25歳のときの「やれたかも」の思い出。
見終わったとき、真っ先に思ったのは「女性側の性欲自覚が少なすぎる」というもどかしさ。
入籍予定であることを告げた後になってからの「真剣な告白+ハグ」がとてつもなく気持ち悪くて腹パンして逃げる、という状況に対する共感は多くの女性側からしたら容易。でも大切なのはもちろん、最初で最後のデート。
豚汁をおかわりした後、バイクの後ろで彼の背中にしがみつく。
最後は正面からお別れハグ。
ここで「勃起しているのかを確かめたくなりました」という岩瀬さつき。
問い返す能島譲を遮るかのように「わかります」と同意する月綾子。
結局確かめることはなくお別れをして「やれたかも」ともやもやを抱え続け、やれたかも委員会で告白をする10年後・35歳の岩瀬さつき。
あぁああああああああああああ狂おしい
あぁああああああああああああもどかしい
あぁああああああああああああ愛おしい
説明されない女性側の性欲。
「やれたかもっていうかまぁ、"やりたかったかも"の話でした」
と35歳の岩瀬さつきは少し緊張した様子で語り終える。
10年後ですらその時はっきりと自分が彼に対して性欲を抱いていたとは発言しない。
デート前にその男の子とのセックスを想像してみたりもしたというのに。
オアシス(山田孝之)からのファイナルクエスチョン
「勃起を確かめて、岩瀬さつきさん、あなたはどうしたかったのですか」
に対しても
「多分、命を感じたかったんだと思います」
という至極真面目な返答。
まるで性は生であり、卑猥なものではないとでも言うかのように。
月綾子(白石麻衣)からのファイナルクエスチョン
「太陽の塔のキーホルダーはどこにありますか?」
という質問に対し、すぐにデニムの尻ポケットからきれいなままの太陽の塔キーホルダーを取り出せる岩瀬さつき。
そう、それを取り出す手はデートで彼のデニムのポケットに忍び込ませた手と同じ手だ。
両の手を差し込んだあの日と同じように、両ポケットに1つずつ忍ばせた思い出のキーホルダー。
「片方を彼氏(婚約者)に渡してほしい」だなんて彼は言っていたけれど、そんなことできるわけがないのだ。
勃起を確かめられなくても、そのキーホルダーのうち1つを彼にその場で戻して、ふたりの思い出として取っておけたら、ふたりは「再び出会う」の世界に生きていたかもしれない。
それとも、その場では言葉通りに受け取ったけれど、自宅に帰る道すがら「渡したくない」自分に気づいたのか。
あの時、ああしていたら、もしかして?
メッセージをこめつつ、もう片方のキーホルダーの所在を問わない、やれたかも委員会。
この余白がたまらない。
どんなに過去を掘り返しても、「やれたかも」であることに違いはないのだから。