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【退職教員の独り言】これまでの教員生活をちょっと振り返ってみました

私は二十代で公立中学校の教員となり、そこから還暦まで、教員を続けてまいりました。

朝早くから学校に行き、子どもを迎え入れる準備をし、子どもたちが登校したら、学級活動やら授業やらに追われ、少しの空き時間にも様々な用事があり、休み時間には子ども同士のトラブルがあってその対応をしたり、帰りの会が終われば、放課後は委員会や部活動、子どもたちがようやく帰ってから、その日の授業プリントやら何やらが積まれた机上の整理、そうして帰りは、本来の勤務終了時間から大きく過ぎていきました。
ようやく休みの日だと思えば、部活動の指導やら平日にできなかった仕事の片付けに追われる。そういう、多くの先生方が日々取り組んでいる日常と、同じような日々を、三十年以上、過ごしてきました。

たくさんの失敗もあったし、嫌なこともあったし、朝行きたくないと感じたこともあったし、休日明けには気分が暗くなったこともありました。夏休み等長期休みが終わる頃は、気分がゆううつになってしまうこともありました。五十代後半になってからは、早く退職したいと、ひたすら時がすぎるのを待っているような日もありました。

私は取り立ててなにか取り柄があったわけではなく、学級経営が自慢できるものであったこともないし、面白い授業ができたわけではないし、部活動の指導に優れていたわけでもありません。子どもの側から見たら、おもしろくない、頼りない、特に印象にも残らないような先生だったかもしれません。

そんなどうしようもない私ですが、還暦まで、辞めることなく、務め上げることができました。

支えてもらった家族や同僚がいたおかげなのですが、それだけではない理由もあるように思います。

私は、正直、子どもが好きだからという理由で教員になったわけではありません。
教育というものに、とても興味があったから、教員になったのです。
未来ある子どもたちの成長に関わりたい、子どもたちが成長する、大人になる過程で、少しでも何か彼らの役に立ちたい、そんな思いから、教員をめざしたのです。

結果として、私の力など微力すぎて、たいして子どもたちの役には立たなかったと思います。

だけど、私は、子どもたちが成長する姿を、多く目にすることができました。
例えば、中学校に入学したばかりのときは、あまりにも子どもだったのに、卒業する頃には、大人の口を利くようになる人たちに出会いました。できなかったこと、わからなかったことが、やがて、自信を持ってできるようになる、そういう姿を、たくさん、たくさん、目にしてきました。

眼の前で、多くの子どもが、「大人」になっていく。そういう、子どもたちの成長を間近に感じられることに、私は大きな喜びを感じていました。成長途中の子どもたちと関わることに、教員としてのやりがいを感じました。
私は、とてもたくさんのものを、子どもたちから受け取ってきたのです。

長時間労働で休日も働かなくてはならないし、いろいろと嫌なことも多かった仕事ではありましたが、還暦まで辞めずに続けられたのは、そのようなやりがいを感じることができたからだと、今思っています。

日々、次の授業をどう工夫しようか、あの子に対してどう接しようかなど、考えて、取り組んでまいりました。
眼の前の課題に関係しそうな本も読みあさり、時には自腹を切ってセミナーなどにも参加してみました。
少し大袈裟な言い方ですが、命をかけて、朝から晩まで仕事に取り組んできたのです。

余計な話を一つ加えると、五十代後半になり、身体も頭も若い頃より動かなくなり、若い頃のように子どもたちと関われなくなったところに、モチベーションが低下し、還暦を区切りに辞めることにしたのです。
還暦過ぎても引き続きいろいろな形で教員を続ける諸先輩方が多い中、辞めていったことは、申し訳なく思っています。

さて、現在、学校に対して、さまざまな問題が述べられています。
文部科学省の調査は、いじめや暴力の認知件数、不登校児童生徒数が増加傾向にあることを示し、文書中には過去最多といった表現も出てきます。
また、児童生徒数が減少しているにも関わらず、特別支援教育を受けている児童生徒数が増加していることも示され、10年間で小・中学校の特別支援学級や通級指導教室の在籍者数が2倍に増加しているという報告もあります。
さらに、教員の勤務実態が明らかとなり、学校がブラックな職場だと言われ、部活動の地域移行や教職調整額の改定も話題になっています。教員志望者の減少で各自治体の採用倍率が低下していることも報じられています。

今、多くの子どもたちや先生方が、悲鳴を上げている現状を見て取ることができます。

そこで、教員を実際に続けてきた者として、自分なりに教育について考えることを、この場で、これから、語っていきたいと考えています。
もし、よろしければ、お読みいただけますと、幸に存じます。

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