何だかわからないけどダメなこと③:「ノドを上げてはいけない」
ノドは上がってはいけないの?
「喉(ノド)を上げるな」というアドバイスは、声楽の業界ではよく耳にします。
しかし、この言葉が本当は何を意味しているのかを深く分析しなければなりません。指導者の感覚が学習者の感覚と同じとは限らず、また「聴こえる感覚」と「何かをしている感覚」が必ずしも一致するわけではないからです。
学習者にとって重要なのは、出した音が自分の求める音ではないと感じた時、その瞬間の感覚を自分自身で捉え、記憶や記録を重ねていくことです。
それによって、自分の身体の反応と音の関係を理解していくことができます。
ここで改めて考えたいのが「喉とは何か」という問いです。見た目上の喉?それとも自分の感覚としての喉?あるいは、解剖学的な喉(咽頭)?
今回は、これを「喉頭」として話を進めていきます。
喉頭は、音程を変える際に上下に動くことが自然な動作です。もし喉頭が動かないように制御されてしまうと、他の機能が音程を作るために代償的に働くことになります。これによって、声の仕組みが不均衡になる可能性が生じます。
代償は連鎖的に影響を与え、最終的には音色を作るための機能が音程作りに巻き込まれてしまいます。その結果、音色を作り出す能力が損なわれ、単調で一面的な音色しか出せなくなってしまう危険性があります。
本来、歌うために持っているすべての機能が健全に働いているときこそ、歌い手は自由に望む音を出すことができます。だからこそ、喉頭の自然な動きや感覚を無理に制限するのではなく、体全体の調和を保ちながら、最適な発声ができる状態を目指すことが重要です。