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ときめき、足りてますか?~おすすめしたい本『大人もときめく国語教科書ガイド』~

みなさんは学生時代、国語は好きだっただろうか。


私は授業であるような「作者はどのように考えてこの作品を書いたでしょうか」や「この人物はどういう気持ちで行動を起こしたのでしょうか」などの正解を答えるような国語はとても苦手だった。でも、国語便覧を開いて作者の顔写真を見て、名作と呼ばれる作品の解説を眺めているのは好きだった。あらすじや解説を読んで名作に思いを馳せる。そして、授業でクラスメイト達と意見交換をしながら普段自分では読まないような名作をじっくりと読む。

 答えを探す、授業としての『国語』は苦手だったけれど、色々な小説や普段は読まないような評論などを読む機会としての『国語』は好きだった。


 そんな、学生時代の国語への感情を思い出させてくれた一冊がある。『大人もときめく国語教科書のガイド』(東洋館出版社)という本だ。


まず、この本の表紙にやられた。淡いピンク色に白い花がちりばめられ小鳥が二羽ちょこんと寄り添っていてとにかくかわいいのだ。まさにタイトルの『ときめく』を装丁から表現している。


テーマは「国語教科書の古びることのない名作たちをもう一度味わってみたい。大人になった今の目でもう一度読んでみよう」(本書より引用)というもの。長らく国語教育に携わってきた著者が、名作の解説紹介と読み方の一例をの紹介をしながら、作品のうんちくについても書かれている。さらに、作品紹介の最後に、紹介をした作品を元に、著者自身がつくったオリジナルの短歌も掲載されている。


 作品紹介の1作目は、少女漫画『キャンディ♡キャンディ』の原作者である名木田恵子さんの作品『赤い実はじけた』。詳細な内容は覚えていなかったが、普段苦手だった男の子の笑顔を見て主人公の「赤い実」がはじけるという部分だけは覚えていたから、この作品が冒頭で紹介されていることに個人的にとてもときめいた。


 有島武郎の『一房の葡萄』の作品紹介の解説の中に「この物語は、若く美しい、真っ白な手を持つ先生でないと成り立ちません。私のような毛深いおじさん先生では成立しないのです」など、作者のユーモアを交えて書かれており、思わずクスっとしてしまった。

 作者自身の学生時代の名作との関わりも書かれており、まるでカルチャーセンターで名作紹介を受講している気持ちになってくる。


 一作品に数ページの紹介で、わかりやすく解説がされているので気になった作品から気軽に読むことができる。最近ときめきが足りてないな、と思ったら、とにかくページをめくって欲しい。名作とともに学生時代の「あの頃」を思い出してぜひときめいて欲しい。

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