「暗黒面の寓話・#25:話が違う」
(Sub:オッサンだって光になれる、、、)
《おかしい!》
《聞いていたのと違う!》
俺はアスカ・チン、2代目の光の巨人ウリトラマン・デイナだ。
これまでスーパー・ゲッツのメンバーと共に地球の平和を守ってきた。
そして今、俺は火星でのソフィア合成獣との戦いで大苦戦している。
エネルギーが底をつき、もう光線を打つこともできない。
このままでは火星基地が全滅してしまう。
絶体絶命のピンチだ。
だけれども、、、
その追い詰められた状況の中で、俺は密かにワクワクしていた。
俺:アスカ・チンは常にポジティブなのだ。
(断じて能天気なわけでなない!)
そ・れ・は!
先輩からある話をきいていたからだ。
平和を守る光の巨人が絶体絶命のピンチに陥った時!
先輩のティンガさんの時は、世界中の子供たちの魂が光となって駆け付けて、ティンガさんと一体となって超絶パワーを発揮して敵を倒したのだと。
なんて素晴らしい萌える展開だろう。
世界中の無垢なる者と一体となり、力を合わせて悪を打つ!
まさに正義のヒーローのクライマックス花道みたいな展開だ。
しかもティンガさんの時は “彼女さん” まで来てくれたらしいのだ。
これまで苦しい戦いもあったけれど、こんなご褒美があるのなら頑張ってきた甲斐があるというものだ。
俺が狭苦しいクリスタル・ケージの中で悶々と考えていた時、
彼方から、一筋の光が向かってくるのが見えた。
「来た、 きた、 キター!」
俺は歓喜の声を上げた。
だが、なにか様子がおかしい。
俺に向かってくる光は一つきりなのだ。
「アレ? おかしいなぁ」
きっと、気の早いセッカチさんが早く着いちゃたのかな!?
あるいは、近くにいた “リョウ” か “マイ” かもしれない!?
(それなら、みんなが来るまで二人でイチャイチャするのも悪くないかも)
そして段々と光が近づいてくる。
ぼやけていたその輪郭がはっきりとしてくる。
「えぇ!?!」
光の中にいたのは、一人のオッサンだった。
小太りな中年のオッサンが ”素っ裸” で走ってくる!
「な、な、なんで!?」、 俺は思わず叫んでしまった。
その間にも裸のオッサンは息を切らしながらやってくる。
「よぉ!アスカ」、 「応援に来てやったぞ!」
走りながらオッサンが声をかけてくる。
「ご、権田参謀!?」
走ってきたのはTPC警務局の権田参謀だった。
権田参謀はTPCのなかでもとりわけのタカ派で、いつも俺達スーパー・ゲッツの作戦に “生ぬるい” と文句を言っていた人だ。
彼にも “地球を守る“ という強い思いがあることは分かったけれど、その強引なやり方が俺は好きではなかった。
その権田参謀が、今、光になって俺のところに駆けてくる。
「え? エぇ!?」、 「なんで権田参謀が??」
俺が動揺している間にも権田参謀は俺が閉じ込められているクリスタル・ケージに入ってこようとする。
「チョ、ちょっと権田参謀!」、 「入ってこないで下さいよ」
「何をゆっとるんだ!キサマ」
「これから二人で協力してソフィア合成獣と戦うんだ!」
そうするうちに権田参謀は強引にクリスタル・ケージ入ってきてしまった。
それでなくても狭かったケージの中はもうギュウギュウだ。
「も~!なんなんですか!」、「なんで裸なんですか?」
「ゴチャゴチャ言うな!、平和を守るためだ我慢せい!」
権田参謀は俺の抗議を一蹴する。 この人は以前からこうだ。
「と、とにかく、、」
「まずは怪獣をやっつけましょう」
「ヨぉ~し!、どんとコ~イ!」
***********
なんだかんだ言いながら、俺と権田参謀は二人で怪獣を倒した。
それはやる気マンマンだった権田参謀のお陰と言った方が正確だたかもしれない。
そして、戦いがおわり、、、
「まぁ、ちょっと窮屈だったけど、」
「助けてもらったことは確かだし、ありがとうございました権田参謀」
俺は素直に権田参謀にお礼を言った。
やり方は違っていても平和を守りたい気持ちはこの人も同じなのだ。
敵は倒した、さあ、みんなの処に戻ろう。
「お疲れさまでした!」、「もういいですよ権田参謀、戻ってください」
「何を言っとるんだアスカ!」
「ワシの躰はもうなくなっとる」、「戻るところなぞありはせん」
「このままオマエと “一体化” して一緒に平和を守るために戦うぞ」
「そうだな! ゴンダとアスカで、、」、
「ゴンスカだ!!!」
「よろしく頼むぞ」、「ガハハハハッ!」
権田参謀の笑い声を聞きながら俺は気が遠くなった。
何故こんなことになったのか?
「光の子供たちは?」、 「彼女は?」、
話が違うじゃないですかティンガ先輩!?