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「暗黒面の寓話・#23:総会」
(Sub:オンナの社会は基本的に縦社会、、、)
「ヨシッ!」
わたしは頬をペチペチと叩いて気合を入れた。
今日は “総会“ の本番だ。
そして、今回の幹事は私たち “スパーク・チーム” の担当なのだ。
“幹事担当” が決まってからこの1年、今日の為に必死で準備してきたのだ。
事情を知った “ダーク・ギズモ” の皆さんもいろいろと協力してくれた。
なんとしてもこの “総会“ を成功させなければならない。
スイーツとドリンクの手配、テーブルの配置調整、余興(演舞)のリハーサル、記念品とお土産の準備、やることは山のようにある。
だが、怯んでいるわけにはいかない。
私:ミルキー(ピンク)、シトラス(オレンジ)、ミント(グリーン)、チェリー(紫)、
4人で力を合わせてこの試練を乗り越えてゆくのだ。
それぞれ手分けして準備を進めてゆく。
私:ミルキー(ピンク)はスイーツやドリンクなどの食事関係の担当だ。
限られた予算の中で、“流行り” のおいしい物を揃えなければならない。
ただ、難しいのが、わたし達:プリキュラは既に20世代を超えているため、世代間のギャップが大きくなってきている。
ある世代の好みに合わせると、別の世代から不満が出たりするのだ。
また、先輩がたの中には “スイーツ” や “フルーツ” をテーマにしたチームの方がいたりして、彼女たちのチェックがとても厳しいのだ。
テーブルの配置調整はシトラス(オレンジ)の担当だ。
基本的にわたし達:プリキュラは完全な縦社会なので、各先輩がたの座るテーブルの配置にも細心の注意が必要なのだ。
センターは当然、“初代のお二人“ であるのは当然として、その左右に2代目、3代目のチームが陣取る。
そこまでは問題ないのだが、なにせ20を超えるテーブルを並べるわけだから、2列目、3列目、4列目と分けなければならない。
その時に必ず揉めるのだ。
《なんで“うちら“が、3列目なん(怒)!?》
《なんで****が3列目で、ウチが4列目だよ!》
毎年のように調整に難航するが、癒しキャラのシトラス(オレンジ)ならなんとか穏便に調整してくれるだろう(まかせた!)。
余興(演舞)を担当するミント(グリーン)の仕事も大変だ。
昔は全チームの必殺技を順番に披露していたらしいのだが、チーム数が増えてしまった現在はそうすることはできない。
そこで、幾つかのチームから代表者を絞って実演(演舞)をしてもらうのだが、その人選が一苦労なのだ。
まんべんなく各世代から選ばなければならないし、さらにIDカラーにも配慮しなければならないのだ。
赤系、青系、黄色系、緑系、紫系、偏りないようにバランスをとらないといけない。
また、この余興(演舞)は、来年デビューする新人を紹介する機会も兼ねている。
新人が先輩方の前で、それぞれが考えてきた必殺技を披露するのだ。
いわゆる “稽古総見” というやつだ。
これが実に神経を擦り減らす。
20組以上のチームが存在し、100人近いプリキュラがいる以上、どうしても微妙に似たキャラ、似た必殺技、というものがでてきてしまう。
そうした際に先輩方からかなり厳しく(ねちっこく)ダメ出しをされるのだ。
わたし達も経験があるのだが、この時はほんとうに心が折れそうになる。
毎年、新人の娘は全員大泣きしながら帰ってゆく。
だが、ここでヘコタレルようでは、この先、正義の為に戦いぬいてゆくことなどできはしない。
先輩方もそれが解っているからこそ容赦なくコキおろしてくるのだ。
このやっかいなイベントはクール・キャラのミント(グリーン)が適任だ。彼女はきっと淡々と司会進行を務めるはずだ。
記念品とお土産の準備はチェリー(紫)が担当する。
しっかり者のお姉さんキャラの “紫” に任せておけばぬかりはないだろう。
最近はメンバー数が増えてきたので予算にも余裕が出てきている。
それに一部のOGからはかなり高額な寄付もいただいている。
1ケタ世代のOGの中には、起業したり、本を出したりしてかなり成功されている方もいるのだ。
初代の “ほぬか様” などは銀座で10店以上もお店を出しておられる。
とにかく、4人で協力してこの試練の1次会を乗り越えるのだ。
1次会さえ終われば、後は楽しい2次回、3次会が待っている。
2次会では各IDカラーのプリキュラさんごとに分かれて集う。
1次会ではちょっと厳しめな態度をとっていた先輩も同じIDカラーの集まりでは優しい顔を見せてくれる。
チームを離れて、同じIDカラーのプリキュラとして共通の話題で盛り上がるのだ。
わたしが参加する“赤/ピンク系“のグループでは、”青/紫系“へのボヤキなんかが出たりもする。
《青系って、クール決めてても、もう少し積極的に動いてほしいよね~》、とか、
《紫系って、もと敵側じゃん、慣れるまで背後に立たれるとドキドキするよね?》、とか
普段はけして言えないけれど、同じ境遇で同じ思いをした者同士、意気投合するのだ。
3次会は、更に盛り上がる。
各世代のかつて ”敵側” だったみなさんが合流してくるのだ。
そして、敵側だった皆さんの中には、かなりの確率で “イケメン“ がいる。
かつて “ワルだった年上のイケメン”、少しだけワクワクしてしまう。
先輩方の話では、この “総会の幹事役“ は、”敵方との最終決着”、と双璧をなすプリキュラの “試練の場“ なのだという。
正直、プリキュラになったばかりのころは、敵さえ倒せばそれでいいのだと思っていた。
けれど世の中は、それほど単純ではないのだ。
“目の前の敵をブン殴って言うことを聞かせる”、だけでは平和は来ない。
いろんな人と向き合い、相手を尊重しながら関わっていくことが大事なのだ。
わたし達は、“スパーク・プリキュラ“、感謝の心で明日を繋ぐ!
今日の “総会” も感謝のこころで乗り切って明日へつないでみせる。